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〔雑記帳〕怖いかも知れない話3

「怖いかも知れない話2」と少しつながるので、昨日に引き続いて書くことにした。

前回、よく鳴る階段について書いたが、今回は数年前、その階段の先の寝室の話。寝室と言ってもただの和室で、布団をひいて寝ているから「寝室」と呼んでいるだけだ。入り口は障子で、あとは少し大きめの窓が向かい合ってあるだけの、ごく普通の6畳の和室である。当然、鍵もなく、階段とは障子一枚で仕切られているだけ。階段はこの部屋に来るためのもので、他の部屋はつながっていない。後から増築したため、住むにはそこそこ不便な間取りなのだ。

普段は何も考えずにそこで眠れるのだが、何故か急に不安に襲われることがある。恐らく、凶悪犯のニュースやドラマを見て、「あ、うちはマズいかも」と無意識に反応しているのだろう。盗まれるものなどありそうにも無く、実際に無いのだが、だから安全だとは限らない。そうなると、何かしないと眠れない。窓には二重ロックをつけたが、障子はどうしよう。いや、階段は急だし、歩けば必ず鳴るのだけれど、そんなのを気にせず一気に上がってこられたら…。考えすぎだと分かっていても、何かしたい。で、思い付いたのが、一番安価で簡単な気安めのカギを付けることだった。

そのカギは2つの部品で出来ていて、一方はドーナツ状、一方はクエスチョンマークのような形が付いている。それぞれ木にねじ込めるようにネジ部分があり、要はドーナツの穴にクエスチョンマークの先を引っ掛けるだけのカギだ。「あおり止め」と言うらしい。ホームセンターで買ってきて、その気安め錠を取り付ける。よし、これで眠れる。

単純なもので、この程度の対策でしばらくは眠れた。だがある日、いつものようにカギをかけて電気を消し、うつらうつらしかけた時。
「カシャ、カカ…カシャ」
カギの方から音がする。え?と思ってそちらを見ても、真っ暗で何も見えない。電気を点ければ良いとは分かっていても、どうにも怖くて動けない。そうするうちにも音は続く。
「カシャ…シャ…カカ…カシャ…」
何かが、カギを開けようとしている。階段は鳴っていないのに、どうして?私はプチパニックで動けないまま。そのうちに、
「カチャン」
と音がして、静かになった。メチャクチャ怖い。けれどその後は何も起こらない。しばらく動かずにいたが、そのままでは拉致があかないので、とうとう覚悟を決めて電気を点けた。

何も、誰もいない。ただ、カギだけは開いている。念のため障子も開けたけど、そこにも誰もいなかった。階下に「誰か、上がってきた?」と声をかけたが、「いや、誰も行ってないよ!」の返事。それはそうだろう、階段は静かなのだから。

実害はないとは言え、流石にこれは怖い。見えない何かがカチャカチャとカギを開けるなんて、普通ではないから。じゃあ、どうしよう…。しばらく悩んで考えて、突然ハッと気付いた。そうだ、カギをかけなければいいんだ!

カギをかけるから、何かが開けるのだ。最初から開いていれば、かけに来ることは無い。そうだ、そんな単純なことなのだ。余計なことをしなければ良いだけだったのだ。それ以来カギはただの飾りになっているが、数年経って、今のところ何も問題はない。めでたしめでたし、である。

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