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わかりあえない女と男ー「恋と呼ぶには気持ち悪い」「ひげを剃る。そして、女子高生を拾う」ー

今期のアニメが始まった。

タイトルで気になった作品は一話を観ることにしている。そこで、ふと気がついたことがある。

男と女って、やっぱり分かり合えないんだな、ということだ。

女子高生とサラリーマンのラブコメを描く2作品を観て、私はそれを痛感した。

一つ目は、「恋と呼ぶには気持ち悪い」。イケメンで女性からモテまくるサラリーマンが、ひょんなことから、妹の友だちの女子高生に命を救われる。

そのお礼として、男は、「キスでもしようか?」と女子高生に聞くが、「気持ち悪い」と言われ、逆に恋に落ちる(文章だけでは意味不明だが、本当にそういう話だ)。こうして、男の一方的なプレゼント攻勢など、(普通ならストーカー案件?)のラブコメが始まる。

この物語では、あくまで、男が能動的に動き、女子高生は受け身だ。作品としては、「イケメンに振り回される私」を楽しむ作品と言えるだろう。作者は、もぐすさんという方で、(公表はされてないが)おそらく女性だろう。作品は少女漫画的な世界観である。

もう一つの作品は、「ひげを剃る。そして、女子高生を拾う」だ。こちらは、冴えないサラリーマンがひょんなことから家出女子高生を家に泊めたことから始まるラブコメだ。

男が好きな女性にフラれてヤケ酒をして、酔っ払って帰ってくると、家の近くに女子高生が座っている。女子高生は、「ヤラせてあげるから、泊めて」と言う。男は、放ってはおけず、家に泊める(ヤリはしない)。その後も、女子高生は事あるごとに、「ヤラなくていいの?」と男に聞く。しかし、男は、そんなことはしないと伝え、女子高生に男にそんなことを言うもんじゃないと説教する(しかし、当然のことながら、未成年を両親の承諾なく家に泊めるのは犯罪である)。

この物語では、どこまでも、男は受動的だ。女子高生から、「泊まらせて」「ヤラせて」と言われて、そのことに対して賛成するか、否定するかの判断を下しているだけだからだ。これは、「かわいい女子高生に言いよられる俺」を楽しむ作品と言えるだろう。作者のしめさばさんは(こちらも公表されてないが)男性だろう。少年漫画的ラブコメだ(原作はネット小説だが)。

女子高生とサラリーマンのラブコメ。この全く同じプロットで、女性視点、男性視点によって、ここまで、違う作品ができるのか、と驚いたのと同時に、やはり、男と女は分かり合えないのだな、とも思った。

女性は、イケメンに言い寄られたいし、男性は、かわいい女の子に言い寄られたい。それが、自然な感情だ。しかし、この欲望を叶えた作品を好きな男女が、恋に落ちることはない。

なぜなら、お互いに「受動的」であるからだ。いつまでも、素敵な異性が、自分に対して、好意を伝えにくることを待ってしまう。そして、そんなことはほとんど起こらない(もちろん、美しい女性ならそんなことはある)。

思えば、ラブコメは、少女漫画なら男性が積極的になり、少年漫画なら女性が積極的である。この逆のパターンはあまり観たことがない(※私見です。少女漫画でも、女性が積極的な「ヒロイン失格」は面白かったです。)。

こうして、男が少女漫画を読む時、「こんな奴いねえよ」と思うのと同様に、女性が少年漫画のラブコメを読む時「こんな女いねえよ」となる。

価値観の断絶。

女と男は、いつまでもわかりあえないのだ。