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無能の鷹は本当に無能なのか?

有能だけど自信がない人。

無能だけど自信がある人。

組織で活躍するのはどちらだろうか。

はんざき朝未の漫画「無能の鷹」を読んでいると、そのことを考えさせられる。

「無能の鷹」の主人公、鷹野ツメ子(この名前だけで面白い)は、一見、優秀なビジネスウーマンだ。

スマートな身のこなし、落ち着いた声、自信に満ち溢れているのに謙虚。まさに理想的な人材だ。

しかし、彼女にも欠点がある。

全くといっていいほど、仕事ができないのだ。

記憶力がなく、算数が苦手、当然、パソコンを操作することもできない(IT会社なのに、、、)。

優しいトレーナーもお手上げで、もはや、書類をホチキスで綴じさせるくらいしか、仕事をさせられない。

一方、仕事の能力は高いが、自信がなく、胃腸が弱い鶸田(ひわだ)。

営業なのに、自信なく喋るせいで相手からなめられ、仕事をとってくることができない。

そこで、起死回生の策として、社内ニートになりつつある鷹野と一緒に鶸田は営業に行くことにする。

仕事のことを何もわからないのに自信のある鷹野は、なぜか勝手に「この人はすごい人だ」と思われる。特に、初見では、ボロがでても、「こんな優秀そうな人がそんなことするわけない」と勝手に頭で変換され、逆に、「さすが優秀な人はやることが違う」と評価が上がる。

しかし、当然、何も知らない鷹野は、営業を一人で行うことはできない。

鶸田が、代わりに説明しようとすると、先方の社員は怪訝な顔をする。しかし、鷹野は言う。

「大丈夫です 彼は私などより はるかに優秀です」

その瞬間、先方の鶸田を見る目が変わる。

それから、鶸田は、鷹野が話す姿をイメージして、話す。すると、相手はいつもより、真剣に話を聞いてくれるようになる。

誰もが、本当は鶸田のように、自信なんてない。

特に新入社員は何もわからない。経験を何度も重ねることで、やっと自信が少しだけついてくる。

それが、成長だ。

鷹野がすごいのは、全く成長する気がないことだろう。今の自分を最大限に肯定する。普通は、周りの目が気になるが、鷹野は全く気にしない。

「私を成長させ、いい仕事をさせるために、頑張って下さい!」という感じなのだ。

鷹野は、きっと、メンタルを病んだりなんてしない。他者に期待することも、怒ることもないからだ。

まさに唯我独尊。

周りを気にして、まじめに頑張っているのに報われない鶸田が典型的な日本人なら、鷹野の自分を全肯定し、会社のためではなく、自分を最優先するのが、新しいシリコンバレー型の働き方なのかもしれない。

その、自分全肯定力こそ、今の日本人に足りないことで、だからこそ、漫画の中でも、彼女は一目置かれる。

さて、お気づきだろうか。

気がつけば、「無能」の鷹野をなぜか褒めさせられている。

そういう漫画なのだ。