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バリューとブラフに分けない考え方

はじめに

 ポーカーで一番最初に習うことにバリューとブラフという考え方があると思います。このように説明されることが多いでしょう。

 バリューとは強いハンドでベットして、相手が自分より弱いハンドでコールすることで利益を得ること。
 ブラフとは弱いハンドでベットして、相手が自分より強いハンドをフォールドすることで利益を得ること。

 ポーカーを始めたばかりのときは誰でも、目の前のハンドでベットすればよいのかチェックすればよいのか、考え方が分からずに困ったはずです。そんなときにバリューとブラフという説明はとても分かりやすく役に立ったでしょう。

 実際、初心者がまず最初に習得するべきなのはこの考え方であり、バリューとブラフをしっかり意識することが上達の近道だと思います。

 しかし、ポーカーの勉強が進んで中級者になってくると、この考えでは理解できない場面が多く出てきます。ここでは、分かりやすい場面としてプリフロップとフロップの例を挙げてみます。

例1
 プリフロップでBTNのオープンに対してSBがコールはせずに、常に3betまたはフォールドで戦う戦略を考えます。ここで3betするレンジは強いハンドから順番に選ばれるリニアなレンジになります。このようなレンジに含まれるハンドを、バリューとブラフに分類することは可能でしょうか?
例2
 プリフロップでBTNのオープンに対してSBから3betしてコールされました。フロップはAc 9d 5hです。ここでレンジ全体でCBを打つ戦略を考えます。SBがベットするレンジをバリューとブラフに分類できるでしょうか。例えばKKを持っていてCBを打つのはブラフでしょうか、それともバリューでしょうか?

 セミブラフ、シンバリュー、ブロックベット、プロテクションベットなどさまざまな用語が作られています。しかしバリューとブラフに当てはまらないものにそれぞれ用語が必要になるのは、そもそもバリューとブラフに分類する考え方の限界を示しているでしょう。ポーカーの原則として表現できるような、もっとよい考え方はないでしょうか。

 ポーカーは非常に奥が深いゲームです。目の前のハンドをベットすべきかチェックすべきかという問いに対して、簡単に答えが得られることはありません。ここで正しい方法で深く考えられるのが、ポーカーの強さといえるのではないかと思います。

 今回の記事では私が実戦やハンドレビューでやっているベットの考え方を、たくさんの具体的な例とともに詳しく解説していきたいと思います。

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