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ビットコインってなんだろう?(Part 1)

こんにちは。ネコバンです。


⚠️補足:これは2022年のアーカイブ記事です

この「ビットコインってなんだろう?」シリーズ(Part1~5)は、2022年に、自分のブログで掲載していた記事の再掲です。サーバーを借りて、WordPressでサイトを構築して、記事を書いて・・・というスタイルで半年くらい続けましたが、典型的な敗北パターン(収益化の壁&工数の壁にぶつかり)により、続けるのが困難になったため、ブログは閉鎖して、記事だけnoteに引っ越してきました。

いま読み返してみると、ちょっと・・・というところもありますが、手を入れ始めると収拾つかなくなりそうなので、アーカイブ的な位置付けで、押し入れの奥に眠っていたちょっと恥ずかしい昔の日記・・・といった風情で、あえてこのまま再掲させて頂きます。

ちなみに、2023年12月9日現在、ビットコインは冬の季節を乗り越えて、1BTC = 44,000ドルまで回復しており、これから半減期に向けて、さらなるジャンプアップを控えている・・・という、素敵な季節がきています。これを機会に、ビットコインの魅力とその将来性を少しでも感じて頂ければ幸いです。このビッグウェーブを一緒に楽しみましょう!


@はじめに

仮想通貨といえばビットコインですが、なぜビットコインが仮想通貨の代名詞になっているのでしょうか? ビートルズに触れずにブリティッシュロックを語ることができないように、アキ・カウリスマキに触れずにフィンランド映画を語ることができないように、わたしたちはビットコインに触れずに仮想通貨を語ることはできません。なぜならビットコインはブロックチェーンそのものであり、ブロックチェーンの歴史はビットコインとともに始まったからです。それはいったいどういうことなのでしょうか。順を追って話していきたいと思います。

▶︎ この記事に書いてあることの要点
・ビットコインが誕生する前の仮想通貨の歴史
・ビットコインが背負っているものの重みと価値

@ビットコイン前史 1989年〜2007年

ビットコインが生まれたのは・・・という話をする前に、ビットコインの前にはそもそも何があったのかが気になったのでちょっと調べてみました。

  • 1989年  "DigiCash" by David Chaum

  • 1997年  "Hashcash" by Adam Back

  • 1998年  "b-money" by Wei Dai

  • 2004年  "RPOW" by Hal Finney

  • 2005年  "Bit gold" by Nick Szabo

調べてみてびっくりです。こんなに早い段階から仮想通貨プロジェクトがあったんですね。1989年なんて、まだインターネットも商用利用されていない時代なのに・・・。せっかくなので、ひとつずつ簡単に紹介していきたいと思います。

❶ 1989 DigiCash

DigiCashの取引は、銀行などの金融機関を通らざるを得ない中央管理タイプでしたが、暗号技術によってその取引自体を匿名化して、プライバシーを確保できる、という点がクールだったようで、当時はそれなりに注目もされてユーザーも増えていきます。ただ、あまりに革新的すぎたせいか、そもそもインターネットの普及もまだ半ばで、電子商取引の発展もまだ先にある中で、増えていくユーザーに対して事業を成長させていくことができず、1998年に破産を宣言。時代を、市場を先取りしすぎたのかもしれません。

ただ、創設者のDavid Chaumは、ビットコインへと至る仮想通貨の道に大きな足跡を残しています。1985年に発表された論文"Security without Identification: Transaction Systems to Make Big Brother Obsolete"です。これを意訳すると、「身分証明の要らないセキュリティシステムによって、ビッグブラザー(監視国家のシンボルワード)を出し抜こうぜ」といった趣旨でしょうか。とにかく、これがいわゆるサイファー・パンクの潮流を生み出すきっかけとなり、このコンセプトに感化された技術者たちが、非中央集権的な仮想通貨の開発に舵を切っていくわけです。

うーん。おもしろいですね!

❷ 1997 Hashcash

Hashcashは仮想通貨そのものではなく、仮想通貨に実装されるProof Of Workという名の計算アルゴリズムのひとつです。Adam Backが1997年に提唱し、2002年の論文「Hashcash-A Denial of ServiceCounter-Measure」で世に広まりました。

>外野スタンドからの声「Proof Of Workってなんだよ?」

データを暗号化する際にハッシュ関数という計算アルゴリズムを使います。ある値をハッシュ関数で変換すると、何十桁という数字とアルファベットのランダム羅列に置き換えられます。見た目はランダムですが、同じ値を変換すると、常に同じランダム羅列が出力されます。出力された羅列から元の数値を推測することは不可能です。元の値を見つけるとすれば、ハッシュ関数に何度も何度もいろいろな数値を入力して、同じランダム羅列が出力されるまで繰り返し計算するしかありません。

ビットコインが生まれたのが2008年ですが、その10年前に、もうProof Of Workの概念は確立されていたんですね。この暗号技術を使えば、取引データそのものを暗号化して匿名化でき、かつ、第三者にも破られることがない通信の実現が可能です。つまり、非中央集権的な仕組みの実現に大きく近づくことができたわけです。ビットコインのホワイトペーパーでもこのHashcashが引用されて登場するくらい、重要な要素ですね。

❸ 1998 b-money

DigiCashやHashcashは日本語の記事がいくつかありましたが、b-moneyは全然見つけられませんでした。あまり知名度は無いのかもしれませんが・・・

b-moneyはコンピューター・サイエンティストのWei Daiによって提唱されました。ただ、正式に実装されることはなかったようでで、そんなところも知名度が低い要因かもしれません。それでも、そのコンセプトには、共有化された台帳、デジタル署名、公開鍵暗号、Proof Of Work・・・など、10年後のビットコインにも取り入れられる技術がたくさん詰め込まれており、業界に(おそらくサトシ・ナカモトにも?)与えた影響は小さくなかったと言われています。

なにしろ、Wei Daiという名前は聞き覚えがあるような・・・と思っていたら、これ、Ethereumの最小単位ですね(1 wei = 0.000000000000000001 ETH)!ちなみにビットコインの最小単位は提唱者の名前をとってSatoshiですが、こんな大事なところに引用されているならもっと日本でも知名度があっても良さそうですね。がんばってほしいです。

❹ 2004 RPOW

やってきました、Hal FinnyのRPOWです。これは「Reusable Proof-of-work」の略であり、再生可能なプルーフ・オブ・ワーク、ということになります。その目的はWikipediaに・・・

フィニーの目的はRPOWをトークンマネー(名目貨幣)とすることだった。金貨の価値が金貨の製造に必要な純金の価値に下支えされていると考えられているように、RPOWトークンの価値はPOWトークンを「鋳造」するのに必要な現実世界のリソースの価値によって保証される。フィニーのRPOW版ではPOWトークンはHashcashの一部である。

出典:Wikipedia

すべてのコイン発行にProof-of-workが必要なビットコインとは少し違うものの、Proof-of-workがトークン化されるところなんかは、ビットコインの先駆けと言えるのではないでしょうか。実際に、Hal Finnyはサトシ・ナカモトとも交流があり、一緒にビットコインのバグ探しをやったりなど仲が良かったようで、初めてビットコインをマイニングして受け取ったのもHal Finny。

ちなみにこのHal Finnyは、DigiCashのDavid Chaumから多大な影響を受けて、サイファー・パンク活動にも深く関わっており、かの有名な暗号化技術であるPGPシステムの開発者のひとりでもあったようです。いろんな人がいろんなところで繋がっています。

❺ 2005 Bit gold

Bit goldもb-money同様に、実用化はされませんでしたが、仮想通貨の歴史に足跡を残しています。その特徴は、パズルを解くことでコインをもらえる権利が得られたり、多数決による承認プロセスがあったり、例によってビットコインの先駆けではないかと言われています。こうやってみると、ビットコインの先駆けっていっぱいあるみたいです。

ところで、このNick Szaboという人は、Bit goldそれ自体よりも、1994年にEthereumの概念でもあるスマート・コントラクトを提唱したことのほうで知名度がありますね。1994年というのがまた驚きですね。Ethereumと一緒に生まれた言葉だと思ってましたが、うーん、やっぱり仮想通貨の世界はまだまだいろんな根っこが埋まっているようです。

・・・はい、ということで、ざっとビットコインの前身たちを紹介してきました。

この系譜を追いかけていって気づくのは、公開鍵&秘密鍵の暗号セキュリティ、電子署名、プルーフ・オブ・ワーク、タイムスタンプ、共有台帳・・・など、ビットコインの基盤となるアイデアはもうこの時代までに形になっていた、ということです。ビットコインのもう一つの特徴であるPeer to peer技術(海外だとNapster、日本だとWinnyとか流行りましたね)も、2000年前後にすでに世に出回っていました。

そう考えると、ビットコインは突然変異のように生まれた完全にあたらしい発明、というより、旧来の価値あるいくつかのパーツを、仮想通貨の抱える課題に向けて、とてもうまく適合させて作った革新的な統合モデルだったという風に理解したほうが良いのかもしれません。

実際、次のPart2で紹介する予定のビットコインのホワイトペーパーには、Hashcashとb-moneyのことが引用されてますし、ビットコインの立案者であるサトシ・ナカモトは、Hal Finnyをはじめとして、Adam BackやWei Daiなどの「サイファー・パンク」と呼ばれる人たちとの交流がありました(そのホワイト・ペーパーが公開されたのもサイファー・パンク・メンバーのメーリングリストのひとつ)。

ビットコインを紹介する本やネット記事を見ていると、「2008年にサトシ・ナカモトが・・・」という始まりかたをするのがほとんどなので、仮想通貨の歴史はビットコインから始まったかのように錯覚しがちですが、実態としては、1980年代から続くさまざまな人たちのさまざまな暗号技術プロジェクトの盛衰の果てに生まれたひとつのプロジェクトなんですね。それにしても・・・

>外野スタンドからの声
「ちゅーか、あのさ。さっきからさらっと書いとるけど、サイファー・パンクってなんやねん」

この言葉はあまり馴染みなかったので、Wikipediaで調べてみました。

サイファーパンク (cypherpunk)とは、社会や政治を変化させる手段として強力な暗号技術の広範囲な利用を推進する活動家である。元々はサイファーパンクメーリングリストでの対話を通じて、非公式なグループが暗号技術の積極的な利用によるプライバシーとセキュリティの確保を狙ったものである。サイファーパンク達は1980年代の終わりから活発な運動に携わってきた。

出典:Wikipedia

そういえば昔に読んだ暗号技術の歴史に関する本の中で、この人たちの活動が語られていました。サイファー・パンクの一部の人がインターネットでの自由な通信を確立するために作った暗号技術が、とある政府から目をつけられて・・・という、例のフィル・ジマーマンのPGP事件ですね。彼らは暗号技術を「社会や政治を変化させる手段として」利用推進していくわけですが、その基幹ポリシーとなるのが「プライバシーとセキュリティの確保」ということになるわけです。ただ、暗号技術による情報の匿名化によってプライバシーを守れるメリットがあるいっぽう、匿名化をデメリットと感じる人たちも出てきます。例えば一部の国家とか、一部のITテック企業とか・・・つまり個人情報を運営戦略として最大活用したい人たちです。

GAFAを中心としたITテック企業によるサービスが主流をなっていることを考えると、現代のインターネットは完全にCentric(中央集権的)な構造になっています。わたしたちは何かのITサービスを使うたびに提供元へ個人情報を明け渡すことになります。そしてその個人情報がどう使われるか、どんなリスクに晒されることになるのかは完全にブラックボックスです。そんな折に、このサイファー・パンク活動の潮流の中からDecentrized(非中央集権的)な暗号技術をつかったビットコインが現実化して、インターネットのあり方そのものに波紋を投げかけ続けている・・・そんな風な構図が見えてきます。

わたしの理解がまだ浅いため、このビットコイン前史はこのあたりに留めておきますが、ビットコインとは何か?を本当の意味で捉えるためには、まさにこの前史にあたる時期がどんな状況で、どんな人々が、どんなことを考えて、仮想通貨の実現性を追い求めていたのかを理解することが重要なポイントのように感じます。それらのことを正しく理解する努力を続けて、ビットコインを持つことの意味を深く掘り下げていきたいと思います。

>Part2に続く


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