(TW6)おしたくごと
第六猟兵
イェーガーカードからのイメージSS
https://tw6.jp/gallery/?id=110499
「うわあ、すごい。これ全部布のお花なんですか?」
籠いっぱいの布花の一つを手にして、冬原・イロハが感嘆を零す。
声はとても弾んでいてキラキラとしていた。
「そうよ。こういうの、つまみ細工っていうみたい」
浴衣を着る前に自身の髪の毛を結いながらポノ・エトランゼが鏡越しにイロハへと目を向けて言った。
「素晴らしい作りですね。どうなっているのでしょう」
「アックス&ウィザーズとはまた違った趣よね」
そんな会話をしながら、二つの髪ゴムを少しだけ間隔を開けて結び、間の髪を引っ張り出すという作業を繰り返す。
「いつもの髪型にはしないんですね」
「まあ、浴衣コンテストだし! オススメされたコレがめっちゃ可愛いし」
装いはいつもと違う和装となる。折角なのだから色々なオシャレに挑戦してみたいという乙女心なるものが働いているのだろう。
引っ張り出した髪の毛がまぁるい形となった。
「ボールが入っているみたいです」
「玉ねぎヘアっていうらしいわよ」
ぽんぽんと叩きそうな気配をあらわにしたイロハを視線で牽制しながらポノが言う。
結び終わったら浴衣の着付けを人にしてもらい、再び鏡の前へ。
「イロハさん飾りつけのお手伝いよろしくー」
「はーい」
椅子に飛び乗ったイロハはポノの玉ねぎヘアを手に取って、ゴムで結った部分に布花を飾り付けていった。
ポノの金髪と、ほんのりと柄の織り込まれた赤や白の花が、互いに映え合っている。
「可愛らしいですねぇ」
「そ、そう?」
「お花、布が『綺麗!』って感じなんですけど、こんなに可愛らしいものになるなんて」
「あ、そっち。……そうねー」
色んな種類の布花、葉っぱもちゃんとあって、私も作ってみたいなぁとイロハが呟く。
イロハは一年前に仕立てて貰った明るい色の浴衣を着ている。タンポポやヒマワリといった黄色や橙色の生地に紅梅柄。
ポノは桜の柄と、仕立てた年は違うのに、偶然なのかちょっとした季節の移ろいを発見して笑い合ったのがつい先日のことだ。
そうだ、と呟いたポノが白花のつまみ細工をイロハのリボンに留めてやる。
「あれ? いいのですか?」
「一つくらいだいじょーぶ。エメラルド色のリボンが葉っぱみたいになったわね」
そう言われて気になったのだろう。イロハは鏡を覗きこんで、次の瞬間には笑顔になった。
「さあ、今年も浴衣コンテストを楽しみましょう!」
「ポノさん、走っちゃだめですよ。おしとやかにですよ」
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