小説・ある日のー、コンセント(その②)

 朝から変なやつに絡まれた。

「おはよ」

 声が小さい。聞こえない。

「聞こえてるでしょ。おはよ」

 聞こえてない。だって外雨降ってるし、ここバスの中だもん。そりゃ他の生徒はいないけど、車内アナウンスを挨拶と聞き間違えただけかも知れないもん。

「はあ、そう言うことしてるから、サンタさん来ないのに。あと懸賞も外れるし、スポーツ下手だし、背とかも低いし、ご飯おごって上げましょうか?」

 私が聞こえてないことを良いことに、むちゃくちゃを言っている。なんなんだこの人は。

「早速ですけど、割りとそれっぽいこと言って良いですか?話しかけている私より、聞こえてない感じ出してるあなたの方が変です」

 そんなことはない。この人の、何年生か知らないが、この人の鞄には「壁の高さ」と書いている。最近そう言うよくわからないサークルみたいなのがあるとは聞いていたけれど、関わっちゃいけないとも聞いている。

「あ、もしかして、この鞄の文字のことですか?いやー、そんなそんな。これも有名になりましたよね。あなたの鞄にも書いて欲しいですか?」

 書いたら不登校なるからな。

「この団体、何してるか知ってますか?星座を作ってるんです。」

  意味がわからん。この人大丈夫だろうか。

「星座って、やっぱすごいですよね。見たことありますか?」

 質問してきても、返さない。それはそう。

「あなたにも見せたいなー。私が作った星座。なのになのに、それを壊そうとする人がいるんですよね。世の中には」

壊そうとする人?

「せっかくあなたみたいな無関係な人にも見せたくて星座繋いでるのに、なんて人たちなんだろう。まったくまったく」

誰だか知らないけど、その人達を応援しよう。

「あ!外見て外見て!壊そうとする奴らだ!最低だなあ」

 外?あの傘の2人組?いや、傘と、バット?  

「…いま、外見ましたよね?後ろの座席からでも、なんとなくはわかりますよ?」

 見てない。偶然外が見えただけだ。傘の人たち頑張れ。

「けど、そうですね。このバス、タイミング的に、次の横断歩道で一旦止まるんですよねー。そしたらですね、星座が見れますよ」

 相変わらず何言ってるんだろうか。まだ薄暗いとは言え、割りとまあまあ朝なのに。星座なんか見えるわけない。

 バスが走る。横断歩道だ。赤信号のタイミングと重なって、少しずつ減速して、止まった。雨の音が止んだ。止んだ?

「……」

 流石に声が出そうになる。どうなってるんだろうか。雨の音が減った。とても。

「あー、えー?なんでびっくりしてくれないんですか?せっかく星座見れたのに。それとも、結構ほんとは驚いてますか?」

 驚いてない。少しだけ怖いだけだ。というか、運転手さんはどうしてるんだろうか。

「車のライトと信号機使って、一時停止座を作ったんですけど、ほら、雨とか、止まってるでしょ?というか私達以外止まってるんですけどね?」

 ……。

「ねえねえ、初対面さん?この星座はとても小さいので、小さい範囲の色々しか出来ませんが、これ、場合によっては結構な範囲に出来るって分かりますか?」

 というか、本来星座はもっと広い範囲に存在する筈だ。

「作るのにも条件とか無くはないんですけどね。どうですか?一緒に作りませんか?」

よくわからないサークルに入れと?

「あ、そろそろバス動きますよ。まあ次のバス停で降りますけどね。さっきの2人が追ってくるはずなので」

  雨がまた降り始めた。時間が動いたと言うことだ。

「あ、団体名は仮名なので、変えてもいいですけどね?隣座りますね。数秒くらいですけど」

 え、あ、隣座ってきた。まあでも、今朝は眠いので、半分寝てるようなもんなので、隣に初対面のよくわかんない人がいるって夢見てるんだろうな。

「いやー、変な人だなあ。けど、」

  そこで、バスが止まった。その人は降りていった。

 別の人たちが乗ってきた。というか、さっきの2人だ。

「あれー、絶対こっちに星座の反応があったんだけどなあ…やっぱこのバスの筈だよねえ。むー」

「あ、あのですね、走るのに、慣れてない、人類も、いると、言うか…」

 どちらも黒髪の普通の学生さん。その筈なのに、星座の話をしている。

 そのうちの1人、傘を持ってる方がこちらに近づいて来る。

「あの、すいません。ここらへんでその、星座…えーとその、なんかこう、何か作ったりしてますか?あ!その、もしくは作ってる人を見たとか…」

 知っている。別に言葉を濁さなくても、星座を作ってる人を知っている。とりあえず答えよう。

「…えと、私は何も作ってないけど、1個か2個前くらい?のバス停に、怪しい人が、いなくもなかったような…どうだろう。わかんないなあ」

 なんで言わないんだろう。私は。

 バスがまた走り出した。

「あー、やっぱり。誰かいたんだよ。星座作ってる人が」

「ええ、そうみたい、ですね。もう、走れま、せんが…というか、あなたは、なんでまだ私に関わるん、ですか」

 バットの人は、かなりつかれている。そのバットで星座を壊すのだろうか。私はあなた達を応援している。

 というかあの人、「けど、」の後、なんて言おうとしたのだろうか。特に無いのだろうか。

 変な朝だったな。学校が近づく。まあ、私には、関係ないよな。私は、何も聞いてないし、見てないし。

  空を見る。当然星座はない。まあ朝だし、雲で空見えないし。

 なんとなく、さっきの人の歩いて行った方を見る。その後、特になんの関係もない物を見た。自動販売機とか。

 早くバス降りたいな。学校まだかな。窓に「けど、あなたはいい人ですね」と書いているのなんか、全然見てないから、早くバス停に着いて欲しい。私はいい人じゃない。あの人が変なだけだ。




 

 



 


 







  


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