鳥と魚
どぼん、と音を立てて水へ入る。
もがいても上手く浮き上がらない。今まではどうやって浮かんでいたんだっけ。
ああ、そうだ、今は錘が付いているから沈むのか――
水中だとうまく呼吸も出来ない。酸素が行き渡らず、眩暈もする。
ふと、落ちていく先――海底へと目をやると、光を飲み込んだ真っ暗な深淵が広がっていた。
「嫌だ」
「嫌だ、落ちたくない」浮かばなきゃ、と手足をばたつかせる。
口からは空気の泡が逃げていき、ただ体力を失うだけだった。
眼下の深淵から、無数の手が伸びてくる。生気の無い、陶器のような色だ。
それらは手探りだが、確実に僕へ向かってくる。じきに僕を捕えた。
それらはギョッとするほど冷たかった。
しかし、もうそれらに驚くほどの体力が残っていなかった。
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