鏡匣

気付きを得た。
誰かが自分を傷付けたとしても、魂まで奪えるわけでは無い。
他人にどう思われていようが、死ぬわけでは無い。

自分の中にしかないもの――そういった"内面"たちはシェルターのような場所に置いておけば、誰かに干渉されることはない。


そうと決まれば、早速身支度をする。
壊されたくないもの、大事な物をどんどんシェルターへ入れていく。
シェルターの中にも更に強固なシェルターを作った。シェルターが少し攻撃されるたびに、どんどん内側のシェルターへと物を移動させていった。


気付けば、感情もシェルターの奥の方に置いてきてしまったようだ。
笑顔の作り方も忘れた。悲しい時の涙の出し方も忘れた。
心が動かされそうになれば何かがブレーキをかける。自分の中に波風が立つことをひどく恐れるようになり、それらも全てシェルターへ閉じ込めて鍵を掛けた。

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