鏡匣

ある日、シェルターが攻撃に遭った。
何重にも施したシェルターは強固だったが、その強固さ故にどこかで油断もあったのかもしれない。

そのシェルターには自分の大事な物を仕舞っていた。
さらに大事な物はシェルターの中のシェルターへ。しかし気付いていなかった。シェルターよりも体の方がうんと脆弱だった。

確かに、他人の攻撃によって魂は奪われることは無かった。


「ガラスみたいだな」
――ふと、呟く声が聞こえた。

一度割れたら中々戻せない。見かけ上、くっつける事は出来る。ただし、完全に元に戻す事は出来ない。
ガラスみたいだし内面を映し出す鏡のようでもある、とも言っていたように思う。

「そうか、買い替えに行くのか」
背中越しにそう言われ、ふと立ち止まる。まともに顔を見る事は出来なかった。
僕は小さく頷いて、身を任せた。

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