鏡匣

シェルターの中の自分は誰にも見られないから、取り繕う必要も無い。
…これこそが本当の自分なのでは?何の柵も無く、何の忖度も無く、何の干渉も無い、真の自分。

やがて、内側は誰一人見る事は無くなった。故に安心して自分を出せる場所となった――内側には自分だけの楽園を作った。

しかし、他人と触れ合う時にはその内側の自分を見せる事は無く、外側の自分が常に対応を行う。一日の大半を外側の自分として過ごす事になった。

そして、うんと疲れた日には内側の楽園でひっそりと自分を癒すのだ。


ある日、本当の自分とは何なのかを考えた。

内側の自分こそが本体である。だが、多くの時間を外側の自分として過ごしている。その上、多くの他人の認識は外側の自分である。

そしたらば、実質的に自分を構築しているのは外側の自分なのでは?
内側の自分は安全な場所から自分を眺めているだけなのでは?
――内側の自分は自分なのか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?