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【本】『黒馬物語』(シュウエル,土井 すぎの (翻訳)/岩波少年文庫)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

子どもの頃読んだ『黒馬物語』を再読していて、ちょっとびっくりした台詞があります。黒馬のお母さんの言葉です。

「ここにいる子馬さんたちは、とてもいい子馬さんだけれど、みんな荷馬車ひきです。だから、もちろん、お行儀というものを教わっていません。あなたは、生まれもいいし、育ちもいいんです。あなたのお父さんは、(中略)
わたしだって、けったり、かんだりするところを見せたことはないでしょう。おとなしい、よい馬になっておくれ。けっしてわるいことを見習わないでね。一生けんめい働くのですよ」

言いたいことは、「他人がどうあろうと自分を律しなさいね」だと理解しますが、今の時代の感覚で読むと、どうしても気持ちがざわざわします。

さて、NTLive(ナショナル・シアター・ライブ)という、英国の舞台を映画配信するシリーズで『戦火の馬』を観て、わたしが涙腺崩壊した話は、先日こちらで、お話した通りです。

その休憩時間のインタビューで、『戦火の馬』原作者マイケル・モーパーゴは、こんなことを言っていました。

・『戦火の馬』は「当初はあまり人気の無かった作品」で、出版社が好意的に増刷してくれた「おかげ」でヒットした。

・「馬が見てきたことを語る」と言うアイディアは、 とても良いと思ったのだけれど、前例があった。あの名作『黒馬物語』だ。

このコメントをきっかけとして、『黒馬物語』を再読したわけなのですが、結果的に「子供の頃の読書を、果たしてどれほど覚えているのか?!」の試金石となりました。
まぁ、だいたいは覚えていたものの…。

・主人公は高貴な生まれの黒馬(ブラック・ビューティ)
・大切に育てられ
・母親と引き離されて、新しい主人の屋敷へ
・いろいろ良いこともあったけれど
・苦労に苦労を重ねて
・…!?

結末の記憶が抜け落ちていました。
むしろ、ブラック・ビューティが「苦労に苦労を重ねて」のところが、読んでいる側としても、非常に辛かったという苦い感触の方が、しっかりと記憶に残っています。

実は社会格差を指摘していた本でもあったことにも気がつきました。以前、『小公女』を再読した時も、そんなことを考えましたっけ。

『黒馬物語』訳者あとがきによると、作者シュウエルは女性で1820年イギリス生まれ。子どもの頃の「足の怪我」がきっかけで病気がちで、晩年の八年間はずっとソファに横になったきりで、この作品はほぼその時期に執筆されたものだそうです。馬の気持ちが描かれているのは、足が悪いこともあって、よく馬にのったり馬車を御していたためのようです。

子どもの頃読んだ本を再読すると、たくさんの発見があって面白いです。

■本日の一冊:『黒馬物語』(シュウエル,土井 すぎの (翻訳)/岩波少年文庫)


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