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【読書会報告】『挑発する少女小説』読書会#1「小公女」

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

『挑発する少女小説』(斎藤美奈子/河出新書)のオンライン読書会(第一回:小公女)を8月29日に総勢8名で行いました。今日はそのご報告です。

●『挑発する少女小説』が扱う少女小説とは?

・魔法使いと決別すること――バーネット『小公女』
・男の子になりたいと思うこと――オルコット『若草物語』
・資本主義社会で生きること――シュピーリ『ハイジ』
・女の子らしさを肯定すること――モンゴメリ『赤毛のアン』
・自分の部屋を持つこと――ウェブスター『あしながおじさん』
・健康を取り戻すこと――バーネット『秘密の花園』
・制約を乗りこえること――ワイルダー『大草原の小さな家』シリーズ
・冒険に踏み出すこと――ケストナー『ふたりのロッテ』
・常識を逸脱すること――リンドグレーン『長くつ下のピッピ』

ハウス食品 世界名作劇場アニメーションでなじみのある作品も、ちらほら見受けられます。もちろんわたしは、子どもの頃全部読みました。本の虫でしたからね。

とくに『小公女』は、ドレスや部屋のカーテンの描写がオシャレで、可愛らしい少女たちの描かれた挿絵の本を、何種類も読んだ記憶があります。

そういえば、中学生になって『小公女』と『秘密の花園』の作者が同じ人だと知ってものすごい衝撃を受けました。あれほど面白い物語を二つも書けるなんてスゴイと思って。どちらも植民地帰りの女の子の話だったですね。『秘密の花園』は、疫病で始まる小説でもありました。

さて、『挑発する少女小説』にもとづいて、懐かしい少女小説を読み直すととても面白そうなので、われらが猫の泉読書会では、全九回で1カ月に1章ずつ読み進めることにしました。
今回は、第一回目『小公女』の会のご紹介です。

●『挑発する少女小説』の「小公女」の章の読書会

読書会での議論について、主なトピックだけご紹介します。

◎セーラってどんな子?

本書には、セーラのことを「良い子」とひとくくりにするのではなくて、「上から目線」で「鈍感力」がある…というような、読者をドキリとさせる表現があって、まさに読者を「挑発」していて新鮮だ、という意見と、もっと優しい気持ちで読めばいいのに…という意見がありました。

どちらかといえばわたしは、挑戦的な言葉をあえて使うことで、読者が新しい視点を得られるように著者が鼓舞しているのだな~と頼もしく思いました。

セーラが、ずっと可愛がっていた人形のエミリーを罵倒する場面については、本書で論じられているとおり「少女時代からの卒業」に賛成する意見が多数でした。

また、これまで本音で付き合える友だちが全くいなかったセーラが、ついに、辛いこともぶちまけられようになった! という意見もありました。

どちらも少女の成長といえます。多様な読み方を知れて面白かったです。


◎物語の終わり方

結局のところ『小公女』は「教養が人生を救う」と主張しているようです。

でも、教養を身につけるゆとりのない人は救われないってことでしょうか? ちょっと、もやもやします。少なくとも、外に目を向けることによってセーラは人として成長できました。

しかし、近代的自我を持った女性が正当に評価されることは珍しいです。その努力が、別の大きな力にいいように利用されることもあったわけです。

また、女性だけが上手くいかないのではなく、男性だって社会のしくみにからめとられていて辛いのだ、という意見もありました。


◎シンデレラとの対比

本書で、王子様は「親の威光で食ってるくせに…」の箇所は、痛快でとてもウケていました。

いまどきの王子像は? という話題では「王子」とはもはや「浮世離れ」の意味合いが強くなっているので、むしろ「アラブの石油王」の方が、王子よりも王子っぽいリアリティがある、というコメントもありました。

また、『シンデレラ』のように、魔法使いが少女を救う物語が作られた理由について、昔は死亡率が高くて、生き延びたり子孫を残すのが非常に難しい時代だったから、女性にとって「王子=お金持ち」と結婚できることが、切実な生存戦略だったのでは? という意見もありました。

◎階級差・植民地問題・人権問題

常にお姫様の心で人と接するセーラの階級差への無関心、そして植民地問題への無関心については、セーラの年齢と、その時代と社会を考えれば仕方がないという意見が多かったです。

また、寄宿学校のミンチン先生がセーラをこき使ったのは、先生の性格のせいだけではなく、当時は「子どもは小さな大人である」という価値観があった…、という箇所で、フランスの歴史学者フィリップ・アリエスの著作『〈子供〉の誕生』を挙げてくださる方もいました。

その他、「少女小説らしさとは?」「痛快な斎藤美奈子節」「小説のジャンル問題」について、楽しく議論しました。

来月の読書会では、『若草物語』の章を読む予定です。

■本日の一冊:『挑発する少女小説』(斎藤美奈子/河出新書)

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