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【本】『なくしてしまった魔法の時間』(安房直子コレクション1/安房直子/北見葉胡/偕成社)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

友達と小学校三年生の頃に読んでいた本の話になって、私は岩波少年文庫の『クマのプーさん』(A.A.ミルン/石井 桃子)を挙げました。一人は、『赤い実はじけた』(名木田 恵子)を挙げました。

もう一人は、「安房直子の作品」と答えました。

恥ずかしながら子どもの頃は、作者に頓着せずにタイトルと装丁で選んで読んでいたタイプでしたので、すらすらと作者名を挙げられる友人を称賛しつつ、ぐぐって調べたら懐かしの『ハンカチの上の花畑』の作者でもありました。

『ハンカチの上の花畑』は読んだ方ならご存知と思いますが、素敵だけれども単純に好き! と言ってはしゃげないような物語です。作中人物たちの陥った状況は、まったく他人事ではない切実さが感じられて、とても印象に残っていました。

全七巻の安房直子作品集があるとわかったので、早速1巻を読んでみました。

作品集一巻の収録作品は初期短編11編とエッセイです。

11篇とは、「さんしょっ子」「きつねの窓」「空色のゆりいす」「鳥」「夕日の国」「だれも知らない時間」「雪窓」「てまり」「赤いばらの橋」「小さいやさしい右手」「北風のわすれたハンカチ」。

読んだことのある物語がいくつかありました。
まったく、子どもの頃の私は、ほんとうに作者を気にせず読んでいたとわかって呆れてしまいます。呆れつつ、それでもちゃんと物語を文章のかたまりで憶えているものなんだなぁと感心しました。

ちゃんと憶えている理由が、大人になって読み返すとよく分かります。
安房直子の物語には、必ず小さな痛みが含まれているのです。
登場人物たちが心優しいばっかりに引き受けた誰にも知られない痛みが、私の痛みではないのに、こどもなりに悲しかったからです。

そういう優しさをわたしも受けて立とうと誓った子供の頃と、全部ひきうけていたら、もう無理だと感じた大人になりかけの頃。両方を思い出しました。

さらに2巻の『見知らぬ町ふしぎな村』を読もうと思います。

■本日の一冊:『なくしてしまった魔法の時間』(安房直子コレクション1/安房直子/北見葉胡/偕成社)


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