中山淳一郎

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村上さんと父の記憶 ― 村上春樹『猫を棄てる』を読んで

幼い頃から、僕は本に囲まれた環境で育ってきた。父の部屋にある、背丈の2倍も3倍もある本棚から読めそうだと思う本(小学校低学年に読める本はほとんど無かったのだけれど)を引っ張り出しては、大人になった気分を味わっていた。 そして中学生になると、そこである一冊に出会った。それは赤と緑の表紙が特徴的な2部構成の本で(なんだかカップ麺みたいだ)、村上さんという人が書いた本だった。読み始めてすぐに、主人公の「僕」が、僕と溶け込むような不思議な感覚に夢中になった。それ以来、村上さんの本を読

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