マガジンのカバー画像

横浜百景

16
港横浜の写真とストーリー
運営しているクリエイター

2019年7月の記事一覧

月

ライトアップされた倉庫のうえに、
月が見えていた。

赤レンガ倉庫が建てられたのは、
明治の終わりから大正のはじめだったらしい。

長く廃墟になっていたのだと思っていたら、

保税倉庫としての役目は、
平成元年まで続いていたという。

関東大震災を乗り越え、
戦後は接収された。

はじめてきたのは、野外コンサートだった。

商業施設として再オープンする前のこと。
手付かずで荒れた印象だった。

もっとみる
航海の安全を祈ります

航海の安全を祈ります

横浜が舞台のジブリ映画、
「コクリコ坂から」に登場した、

国際信号旗。

海のうえで、
船舶どうしが通信を行うために使われるものだそうだ。

映画が公開されてから、
港の見える丘公園と大さん橋に、

主人公が掲げていた、この信号旗がたっている。

航海の安全を祈ります。

行き交う船へ向けて、
無事に海を渡れますように、との願いが込められている。

残念ながら、映画の舞台となった時代のように、

もっとみる
マンダリン・ブラフ

マンダリン・ブラフ

本牧ふ頭の付け根。

大きなトラックが行き交う広い道路の傍らに、
こんもりとした小さな山がある。

横浜が開港したころは、
ここまでが海だった。

外国からやってくる船は、
横浜の港へ入る目印として、

この岸壁、
マンダリン・ブラフを見つめたのだ。

マンダリン・ブラフという名前は、
岸壁の色が蜜柑色だったことから名付けられたらしい。

ペリーが持っていた海図にも、
その名が刻まれているそうだ。

もっとみる
十字架が見えたら

十字架が見えたら

心が沈んだときに、
訪れる場所がありますか?

ただ座って、
時間をすごすことで、

自分を浄化してくれる場所がありますか?

横浜を見下ろす山手の丘に、
十字架が見えたら、

そっと扉をあけて、
歴史ある聖堂のなかへ。

そこは別世界。

静かに。
祈りのときを。

神さまは、
話してくれるわけじゃない。

探し求めていることを、
教えてくれるわけじゃない。

でも、ちゃんと答えを出してくれる。

もっとみる
ずっとみている

ずっとみている

野口雨情による童謡、赤い靴。

 赤いくつはいてた女の子
 異人さんに連れられて行っちゃった
 横浜の 波止場から船に乗って
 異人さんに 連れられて行っちゃった

悲しげなこの歌の女の子は、
山下公園から、ずっと横浜の海を見ている。

晴れの日も、雨の日も、
いい日も、悪い日も、

ずっとみている。

沈んだ表情に見えるときもあれば、
少し微笑んでいるように見えることもある。

心を映す鏡のよう

もっとみる
よい旅を

よい旅を

横浜の入り口はどこかと考える。

横浜駅、新横浜駅。
まず最初に思い浮かぶのは、駅かもしれない。

でも、横浜は港町。

港から世界へ開き、文化を受け入れ、
多くの人々が行き来してきた。

だから、大さん橋。
横浜の入り口は、大さん橋だと思う。

大さん橋は、大きな空港のようなものだ。
国内線と国際線が発着するターミナルのような場所なのだ。

飛行機のように急いた旅ではない。

移動すること、その

もっとみる
湧き水

湧き水

元町公園近くの住宅街のなかに、
こんな池のような、プールのような、貯水池がある。

ジェラールの水屋敷と呼ばれているところ。

そもそも、横浜の中心地である、
中区、南区、いまの関内あたりも、古い古い埋立地。

吉田新田と呼ばれる、海を埋め立てた農地だった。

海だったなごりか、
開港当時の井戸水は、塩分が多かったらしく、

船への給水ができなかったとか。

湧き水はある。
打越とか、ワシン坂の下

もっとみる
おとなりさん

おとなりさん

元町と中華街が、
川をはさんでおとなりさんだと気付いたのは、

かなり大人になってからだった。

子どもの頃も、
何度も来ていたし、

高校生の頃は、
何かと立ち寄った場所だし。

それでも、
地続きの感じがしていなかった。

おとなりさんなのに、別世界。

街の雰囲気も、もちろんそれぞれが
個性的だからなのだろうが、

その個性が個性であり続けるために、

この川が、
キチンと線引きをしているか

もっとみる
a place beyond down

a place beyond down

みなとみらいは、アートの街。

あちこちに、
彫刻やアート作品があふれている。

これもそのひとつ。

クイーンズスクエアのスタバの前にある、
a place beyond down。

マリナ・カレラの作品。

飛び立つ翼と布。
ギリシャ神話の女神みたいだ。

みちびき

みちびき

ねぇ、誰か見てるみたいなんだけど。
視線を感じるのよ。

海を見てるとね、
後ろから、見られてるような気がするの。

どこだろう。
だれだろう。

でも、いやな視線じゃないの。

なんだか、
見守ってくれてるみたいな視線なの。

なんなんだろ、この感じ。

横浜にはきっと、海の守り神みたいな誰かが、
いつも海を眺めているのかも。

そんな気がするのよ。

正体は、
女神像 みちびき。

ヨコハマグ

もっとみる