第2話:もうひとりの藤井 圭介。
実は私はマルチバースのエロンリルってところからやって来たんです」
「マルチバース?・・・エロンリルって?・・・なにそれ?」
「マルチバースって言うのは、この人間界とは別に存在する現実世界のこと
です、平行世界やパラレルワールドとも言います」
「そのマルチバースの中にエボンリルも存在してるんです」
「それに私、バイリンガルですから日本語だってバリバリしゃべれるん
ですよ」
「ほう・・・なるほど・・・」
「その別の世界ってところに天使なんかいたりするんだ?」
「昔の伝承に伝わる天使は、みなさんマルチバース出身です」
「はあ・・・知らなかった・・・てっきり天使って天界からやってくる
もんだって思ってたから・・・それって定番でしょ?」
「それは昔の人がマルチバースなんて知りませんから説明のつかないものは
神様や天界の話にしておけばいいって思ったんじゃないですか?、
諸説だと思いますけど、どちらにしても架空の話ですからね」
「まあエロンリルも天界って言えなくもないですけどぉ」
「お〜真実なんてそんなもんかもね・・・」
「あともういっこ質問・・・なんで宙に浮いてたの?・・・どうやって?」
「背中に天使特有の羽とか生えてないですよね・・・なのになんで?」
「見たところ天使特有の頭の輪っかはあるみたいだけど・・・」
「そのくらいはないと天使だって信じてもらえないでしょ?」
「それに空は子供のころから普通に飛んでます」
「羽がなくても飛べますよ、だいいち羽なんてそんなもの背中に生えてたら邪魔でしょうがないでしょ?・・・毎晩うつ伏せで寝なきゃいけないじゃないですか・・・私たちは羽の代わりにアクセラレーター「加速装置」ってものを使って空を飛ぶん
です・・・合理的でしょ」
そう言うとリボンさんは自分の背中あたりで宙に浮いてる円盤みたいな
ものを見せてくれた。
「あ〜それが羽の代わりなんだ・・・」
「だけどなんで天使がメイド衣装なんて着てんの?」
「裸ではマズいでしょ?・・・」
「天使もメイドも似たようなものですから・・・」
「お気に召しませんか?」
「いやとんでもない・・・いいと思うよ・・・リボンちゃんエロいし・・スカートが短すぎてパンツ見えてるとことか・・・」
「エロいのがよかったですか?」
「やっぱり裸のほうがよかったかしら・・」
「俺はいいけど・・・世間一般にはマズいかもね」
「セーラー服かメイド衣装か迷ったんです」
「お〜それもいいいかも、メイド衣装に飽きたら、ぜひセーラー服も
お願いできる?」
「はい・・・いいですよね」
「で、俺を救済しに来たって言いましたけど何を救済するんですか?」
「俺、誰かに救われなくちゃいけないほど不幸じゃないですけど・・・」
「え〜とデータによりますと、藤井さんは身寄りもなく天涯孤独、彼女
いない歴40年、女性とのお見合い101回経験するも、ことごとく断られ、
このまま行くと、ただ歳を取って干しぶどうのように朽ち果てて一人寂しく
死亡・・・の予定になってます」
「ね、救済が必要でしょ?」
リボンさんは手に持ったタブレットらしきものに表示された内容を読んだ。
「うそ〜そのデータ間違ってますよ」
「俺、両親ふたりともいますし、まあ独身だけどまだ大学生ですよ」
「しかも見合いなんてしたことないです」
「干しぶどうみたいに朽ち果てるって、ちょっとそれひどくないですか?」
「そうね〜・・・あなた見るからに健康そうだし・・・」
「ちょっと待ってくださいね・・・もう一度確認してみますね」
そしたらリボンさんは後ろを向いてスマホらしきもので誰かと話をしていた。
「少し待ってくださいね・・・新しいデータ送ってもらって再確認します
から」
「あの、あなたを救済に来た理由ですけど私、上から指定された人を救済
しないとエロンリルに帰れないんです、それが授業の課題のひとつで、
救済が必須科目になってるんです」
「え?・・・授業って?・・・君も学生かなんか?」
「そうです・・・私、まだ二級天使ですから・・・」
「あ〜で、なんで俺だったわけ?」
「はい、それは毎回いろんな場所に救済に行くんですけど、今回はこの地球が選ばれたんです」
「コンピューターが不幸リストから対象を選出するんです」
「そこから私の救済者をひとり絞るんです」
「ほう、で?なんでそんなことするの?」
「これは私が一級天使のなるための試験だし善行はいいこととされて
ますからね」
「は〜試験ね・・・国家試験みたいなもんか?」
「国家試験?・・・あ、きました」
「あら・・・なるほど〜・・・藤井 圭介さんって・・・ごめんなさい、
別の方だったみたいです」
「そうでしょ、おかしいと思ったんだ・・・でもそんなに簡単に人違い
していいんですか?」
「ですよね〜」
「同姓同名でしたね・・・あ、生年月日、1日違ってますぅ」
「ごめんなさい・・・こういうことって、よくあるんです」
「よくあるって・・・杜撰《ずさん》だな〜」
「あなたじゃなかったみたいです」
「じゃ〜もう一人の藤井さんを救済に行かなきゃ」
人違いだったと分かってホッとしたけど、間違ってなかったほうが
よかったような、
だってこんなバリ可愛い天使さんが頑張って僕を救済してくれるんだろ?
美味しいじゃん・・・もう一人の藤井さんのところへ行っちゃうなんて
つくずくもったいないってか残念だな・・・。
「あら、こっちの藤井さん、もうお亡くなりになってます」
「救済不可能です・・・どうしましょ?」
「私この人救済しないとエロンリルにも帰れないし、一級天使なんて
夢のまた夢です」
「亡くなってるって?」
「藤井さん、どうしたらいいでしょう、私・・・」
「なこと言われても・・・って言うか俺、大学遅れるんですけど・・・」
とぅ〜び〜こんて乳。
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