猫山文子

邪です。

週刊誌はぼくらのことを知らない

「嫁が」という言葉がふいに飛び出て、ああ、そういえばこの人は結婚したのだと思い出した。小さな居酒屋だった。小さな居酒屋の、一番隅っこ。 立ち込める煙が好きだ。何...

無駄のススメ

「あはれ弓矢取る身ほど口惜しかりけることはなし。武芸の家に生まれずは、何しにただ今かかる憂き目をば見るべき。情けなうもうち奉るものかな」と、袖を顔に押し当てて、...

きみが思い出を語るとき

マイルス・デイビスの“A gal in calico”を聴いている。そういえば『風の歌を聴け』にも出てきていたと思ったけれど、そんなことより小指の爪だけ切りすぎてしまったこと...

そんなこともあったね、と笑って

「この中学校には、吹奏楽部がありません。なので、僕が作ろうと思っています」 体育館で窮屈そうに並ぶ新入生たちを目の前に、先生は言った。男子たちは退屈を指遊びで凌...

Where will we go

生まれてからずっと、東京に住んでいる。東京で呼吸をして、東京で笑って、東京で泣いて、東京で眠りにつく日々を繰り返している。 此処が私のホームで、きっとずっと此処...

ここは東京、波打ち際

それは夏の終わり、将来の夢、大きな希望を忘れてしまった頃だった。大都会東京、六本木はミッドタウン。嫌にライトの眩しいパウダールームで、黒く滲んだ目尻を眺めていた...