実況

【直撃】“実況界の新撰組!”ボイスオンの市川勝也アナが征く!〈後編〉「『ちょっと話かけないで…』と解説席の高田本部長から」

『RIZIN』や『K-1』をはじめ、日本はもちろん、海外のリング上の様子を大胆にかつ繊細に伝えてきた実況集団がいる。矢野武アナを筆頭とするボイスオンである。群雄割拠するマット界において、いつしか屈指の実況集団となったボイスオンは、今や“実況界の新撰組”として、その存在を認知させているが、今回はそのボイスオンから切り込み隊長として市川勝也アナが登場! これまであった幾多の修羅場の数々についてじっくり話を訊いてみた――。(聞き手◉“Show”大谷泰顕/2017年1月18日、都内カフェにて収録)

(⬆︎市川アナのTwitterより。向かって左から高橋大輔アナ、市川アナ、そして局長の矢野武アナ)

〔前編はこちら⬇︎〕
【直撃】“実況界の新撰組!”ボイスオンの市川勝也アナが征く!〈前編〉「黙る実況に身を任せた秋山成勲×三崎和雄戦」


▪︎北岡悟の試合を無酸素状態で視聴!


――近々でいうと、『RIZIN』では年末の北岡悟×ダロン・クルックシャンク戦(2016年12月29日、さいたまスーパーアリーナ)ほかを実況されていましたけど、あの試合はハマってよかったと思いましたね。

市川 もうあれは絶対に自分にやらせてもらいたいって。

――直訴したんですね。

市川 (直訴して)よかったですね。北岡選手も強いのは知っていますけど、ダロンも『UFC』でずっと実況をしていて、よく観ていたんです。

――その流れがあったんですね。

市川 僕はああやって北岡選手が一瞬にかけるようなスタイルになるっていうのを予想していたんですね。

――予想が当たったと。

市川 ええ。実況では「スタンドで殴り合ってます。意外ですね」って言っていますけど、心の中では「これだ! これしかない!」と思っていて。

――なるほど(笑)。

市川 この人、この試合に命をかけて来たんだって思ったから、1秒、いや、0.1秒かもしれないですけど、ダロンを摑まえる瞬間が来た時に、よし! と思ったんですよ。

――実況しながら心の中で叫んでいたと。

市川 そうですね。あそこでもし掴まえられなかったら終わり。その後は全部を使い果たして終わりになっちゃうから、その瞬間が来た時の興奮たるやなかったですね。「これで勝った!」って思いましたよね。

――あれは、よし! って思いましたよね。

市川 あれ、8分台(8分19秒)で終わったんですけど、そのくらいの時間に掴まえに来たかって思いましたしね。あれは、凄味がありましたよねえ。

――顔面が血だらけで大変でしたね。

市川 真っ赤になっちゃいましたからね。これはテレビ的に大丈夫なのかな、とは思いましたけど、割と深めの時間にフルで流れて。

(⬆︎『RIZIN』での北岡悟×ダロン戦は北岡の出血により、遅めの時間に放送された)


――そうでしたね。

市川 録画した映像を観ながら、「流れろ! 全部流れろ! カットするな! するな!」って思いつつ、ほとんど無酸素状態でずっと観ていましたね(笑)。

――結果、ちゃんと全部流れたと。

市川 ええ。その時は「流れたよ!」って、その時も涙が出てきましたね。嬉しくて嬉しくて(思わず涙ぐむ)。

――あれは、勝ったのも含めて、非常に良かったですよね。

市川 負けるのと勝つのでは意味が違ったと思いますし、負けたのをフルで流してもらってそれを観たとしても、「う~ん……」だったでしょうし、「あ、負けちゃったんだ……」ってなっちゃうと、対世間への北岡選手の勝負じゃないですか。

――そうでしたね、ホント。

市川 そこで勝った男になるのか、負けた男になるのかでは、絶対に違いもあったと思うので、改めてバクチだったなあって思いますね。

――確かに。

市川 そういう人生劇場を観られて、楽しかったですね。


▪︎『RIZIN』とIGFの振り幅に対応


――『RIZIN』だと、秒殺で終わった、木村“フィリップ”ミノル×チャールズ“クレイジー・ホース”ベネット戦(2016年9月25日、さいたまスーパーアリーナ)も実況されていましたよね?

市川 あれは、「ああ、来たか俺の時にアクシデントが!」っていう感じでしたね。

――アクシデント万歳!?

市川 ええ。もちろん、自分も木村選手の実況を『K-1』でもやらせてもらって来ましたから仲間意識がありましたし、「ああ、負けちゃった…」とは思いながら、こんなことを言ったら失礼ですけど、木村選手にもまたテーマができたなってすぐに思いましたし。

――なるほど、なるほど。

市川 だから次、頑張れ! 次は何をやるんだ? ついて行くから。見せてくれっていう。そういう気持ちが一瞬にして湧き上がって来ましたね。

――秒殺負けを実況しながら、そんなことが頭に浮かんだんですか!?

市川 ええ。確かに7秒で負けたんですけど、その2、3秒後にはそういうストーリーを描いていましたね。

(⬆︎昨年9月25日にさいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN』での木村×ベネット戦は、僅か7秒で終了! それでも醍醐味のある一戦だった)


――ほお!

市川 負けた。次だ! どうする? 次の相手は? ルールはMMA? それとも? リングは『RIZIN』なのか? 『K-1』なのか? 『Krush』なのか? さあどうする? 君にテーマができたね? って。

――それは凄い思考能力ですね。

市川 そして拍手を送るっていう感じでしたね。

――そういうもんなんですね。

市川 ええ。

(⬆︎昨年末の『RIZIN』には世界の強豪がズラリと集結したが、果たして2017年の『RIZIN』はいったいどうなる!?)


――『RIZIN』は2015年の年末から始まったんですけど、その時は実況されたんでしたっけ?

市川 12月29日だけ実況したんです。

――あ、そうか! 大晦日は『INOKI BOM-BA-YE 2015』(両国国技館)があったんでしたね。

市川 そうです。だから『RIZIN』とIGFの実況席をハシゴしたのは、自分だけだなあって(笑)。

――完全に自己満足の世界ですね(笑)。

市川 選手では青木真也選手がそうだったから、二人で「僕らだけですね」っていう会話をしましたね(笑)。

――青木真也は12月29日の『RIZIN』では桜庭和志戦でしたけど、大晦日のIGFではジャイアント・シルバ戦でしたもんね。

市川 その振り幅に対応できるのは市川だけかあって(笑)。

(⬆︎『INOKI BOM-BA-YE 2015』の実況席より。左より市川アナ、グラビアアイドルの森下悠里氏、『週プロ』佐藤正行編集長、“Show”大谷泰顕)


――自己満足したわけですね(笑)。

市川 はい(笑)。

――いや、凄いんですよ、実はそれって。

市川 自分で言ったらダメですね(笑)。

――ちなみにその日は小川直也×橋本大地戦もあったじゃないですか(※実況は辻よしなりアナが務めた)。

市川 あれは良かったですよ。久々に興奮しましたからね。やっぱり血ってあるんだなあって思いましたから。小川さんの凄さも見せてもらいましたし。

――オーちゃんは3年とか5年に1回、チラリと見せるんですよね(笑)。

市川 そうなんですか(笑)。

以下、その内容の一部を紹介
▪︎「『ちょっと話かけないで…』と解説席の高田本部長から」
▪︎「古舘実況もこんな感じだったのかな…」
▪︎大相撲中継では同世代の親方から「様式美」を学ぶ
▪︎「アクシデント、サプライズ、ハプニングはどんと来い!」


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