「ドライブ」について

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「ドライブ」は2012年制作。
大木さんがRhodes Mark1を持っていて、それをフィーチャーしてシンプルでいい曲をつくってみたいと思ってできたのが「ドライブ」でした。そこから膨らんでミニマムな編成で録音してライブも同じように再現できるバンドを妄想して「田島ハル旅団」を思いついたという。このダジャレのバンド名はたくさんあるだろうな、と思ってはいたのですが、ワールドミュージックというか民族音楽が好きな自分の音楽的放浪を表してていいなと思ったのでした。大木さんの曲もあり、まさにバンド的なつくりです。

前年東日本大震災もあり、荒れ野に立つみたいなイメージとか、やりきっておかないと、みたいな思いもありつつ他の曲もできていきました。

ギターはfender deluxe reverbになるべく直刺しして録音してます。管をヴィンテージものに替えたりスピーカーをJensenに替えたりで張りのあるいい音なんです。歌は
NEUMANNとか買えないからAKG C4000B っていうので録ってます。存在感太く、近く録音できます。そしてMicro Synthesizer。これはほんと面白くて、入力の音量にエンベロープが追随するという、「ミョーン」というかかりが深かったり浅かったりでいい感じの人力テクノな音になるのです。

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さて、内容にもどりまして。
好きな映画監督にレオスカラックスという人がいまして、きっと同世代だと思うのですがかなり寡作な方で。彼の映画に「汚れた血」というのがあって最後ヒロインがブワーっと走って早回しになってというエンディングなのですが、「若さはスピード」みたいなセリフが出てきてそれにかなりやられました。美しい一瞬はものすごいスピード感のなかで起こる、みたいな。詩人の人たちの描写って素晴らしいですよね。人間のルーティーンに心の逡巡があるように、おそらく虫たちのルーティーンにも心の逡巡があるのかもしれない、俯瞰すれば。どんな生き物にも逡巡はあるのだろうと。

冒頭の「田島のテーマ」は最後にできた曲で、大木さんのアコーディオンとの一発録りにあとからパーカッションをダビングしてます。向田邦子さんのドラマに「阿修羅のごとく」っていうのがありまして(ちゃんとはみてないのですが)トルコの音楽が使われてて、そこからインスパイアされてできた曲。おそらく誰もが日常の理不尽と戦わざるを得なくて踠いてて、みたいなイメージ。
秋田でいうと「なってもね」という言葉で押し込めてしまう家族の事件とか、変わらない日常に合わせ、落とし込めていく感情のマグマがあるなあ、と直感してつくったインスト曲。そこから自分を解放する「ドライブ」につながる、というイメージでした。

そしてボーナストラック。
「コーヒ」これは1998年くらいのセッション。この頃よく仕事してた村瀬くんとダッチママスタジオで名村さん、河野さんとクリックなしの一発録りして、あとからホッピー氏にシンセをダビングしてもらったという。ダッチママにはStuderの
2インチ16トラックレコーダーがあって、自分のアレンジしたサウンドには欠かせないスタジオでした。ショーケンが新宿をブワッと走ってるイメージ。

「火星から」
これは1999年くらいのホームレコーディング。この頃自宅でもTASCAMの1インチ16トラックレコーダーを持っててそれでレコーディングしたもの。ショーンレノンとかのポストロックというかニューソフトロックというか、テクノが解体したロック、ポップスの再構築みたいなことモヤっと思いながらつくってました。
その感じは自分でアレンジ仕事をするようになってからいつも思っていることだけれど。

いろいろ書いちゃいましたがいいアルバムなんです。あらためて皆々様に聴いていただけたらと思う次第です。

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