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【プロメア】がピンクのトライアングルを印象的に使っているせいで嫌なモヤモヤが募ってしまう件

作品を制作する上では、テーマについて学を深めることも必要。
もしくは詳しい人にチェックを入れてもらうことが必要。

そんなことを思った今日この頃。
なんの話かと言えば『プロメア』の話です。

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2019年のヒットアニメ映画の一つとして、上げずにはおけない作品です。
興行収入は11億円以上に及びまして、上映規模的には文句なしの大ヒットです。10億円ラインは大体プリキュア映画ぐらいのスケールですね。

プロメア
2019年公開/トリガー制作/制作国:日本
監督:今石洋之 脚本:中島かずき

『プロメア』は、ファンが結構な熱意を持っている作品でして、観た人のほとんどが少なからず賛否でいう賛をあげているものだと思っていました。ですが実は、逆に結構な熱意を持って『プロメア』に否定的な意見を持っている人も居る、ということを今更ながら知りました。

迫害や差別的なテーマを持った映画でありながら、その描き方が迂闊すぎないかってことらしいのですよね。
中でも、批判意見で初めて知ったのがピンク・トライアングルの件。

『プロメア』では、勢力ごとに三角・四角・丸といったそれぞれモチーフとなる図形が決められていて、バーニッシュという人体が発火する特性を持つ人々は三角形のモチーフが割り当てられていました。このバーニッシュが発生させる炎が、ピンク色の三角形でデザインされており、その観たこともないビジュアルがスタイリッシュでかっこ良かったのですが、意外と話は単純じゃなかったのですよ。

世の中には、“ピンク・トライアングル”ってのがあるようです。

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ホロコーストで強制収容された者には、三角形の識別胸章の装着が義務づけられていまして、その収容者は特性によって三角形の色が違いました。黒が障害者、緑が犯罪者、赤が共産主義者などといった感じ。そして、その色分けの中にピンク色の三角形もありまして、それが男性同性愛者に付けられる胸章だったのです。

そして、このピンク・トライアングルに区分された人は収容時も特にひどい扱いを受けていたうえ、戦後においても刑法によって同性愛の罪で捕らえられてしまう恐れがあったせいで、戦後補償も受けられなかったようそうです。後に、同性愛が非犯罪化となってから、当事者たちの証言が上がるようになり、当事者たちのモチーフでもあったピンク・トライアングルはLGBTQのプライドと解放のシンボルとなっていったそうです。
(その辺りは以下のページで詳しく解説されてました。)

つまりピンク色の三角形って、結構重要な意味のあるモチーフだったのですよ。

『プロメア』では、いかんせんバーニッシュの扱いがホロコースト的であったり、よりによってガロくんとリオくんにカップリング味があるせいで、ピンク・トライアングルを意図的なモチーフとして取り入れたのか、知らずに取り入れてしまったのかはわからないものの、ピンクの三角形に秘められた意味を知っている人には否が応でもこの“ピンク・トライアングル”を意識している作品のように見えてしまいます。

そして、『プロメア』ではきまりの悪いことにこのピンク・トライアングルで出来た炎は、突如発症する病気みたいな扱いになっていたり、最終的に治ってしまったりするのがまずい。まるで同性愛が病気みたいな扱いに受け取れてしまうのですよ。

そんなわけで、ピンクの三角形を狙って用いたのなら、もっとやり方を考えた方がいい気もするし、知らなかったのであれば、ちょっと抑えるとこが甘いなぁと思う事態になってしまっているのですよね。『プロメア』公開前のイベントで、炎の表現の仕方などに凝ったというエピソードは聞いていたので、あの炎が奇を衒った表現なのは間違いないのですが、聞いていた感じでは、ピンク・トライアングルの意味合いよりも、ビジュアル的な見せ方を重視していたようなので、なんとなく後者なような気がしないでもないのです。

ピンク・トライアングルは日本でこそそんなに浸透したモチーフではないと思うのですが、トリガーさんといえば、一応、国際的にも名のあるアニメーション制作会社。『プロメア』も世界スケールでの配給も始まっているので、今後は続々とこのピンク・トライアングルの扱いが如何なものかという話が、持ち上がるんじゃないでしょうか。アニメーション的にはすごい洗練された印象を受けた作品だっただけに、ひとつ別の意味が乗るだけでなんだか惜しい気持ちを強く感じます。

知ってしまうとモヤモヤが募る、そんな『プロメア』のピンクの炎の話でした。


以下、マガジン購読者向けに、勢力ごとに三角・四角・丸といったモチーフを設けた前例が、近年のディズニー作品でもすでに存在した話。

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