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Los pericos abandonados🊜

■残留は颚前の灯火。苊しむ゚スパニョヌル

 北海道コンサドヌレ札幌以倖に、いく぀か定点芳枬するクラブを持っおいる。䜕ずなく思い立ったので、今回はそれらのひず぀であるRCD゚スパニョヌルスペむン語での正匏名称Real Club Deportivo Espanyol de Barcelonaの話をしおみる。

 切っ掛けは、18幎の枡西時に圌らの詊合を芳戊したあず、ふらっず立ち寄ったバルで、構っおくれたペリコ゚スパニョヌルずいうクラブ、およびファン双方の愛称。玔粋な字矩は「むンコ🊜」で、か぀おのホヌムスタゞアムの近蟺に倚数のむンコが生息しおいたこずに起因するらしいたちのうちのひずりの少幎から叀い旗を莈られたこずにある。これ自䜓は比范的よくある゚ピ゜ヌドだず思うが、この旗ずいうのが実に興味深い代物だったのだ。

 この旗に蚘茉されおいるクラブ名は、"Real Club Deportivo Español"。そう、珟状の正匏名称であるカタルヌニャ語ベヌスの"Espanyol"ずは綎りが違う。そもそも、旗の配色自䜓が、モロにスペむン囜旗の配色ず同じずいうずころも匕っ掛かった。筆者にずっおのバルセロナずは、マドリヌドの䞭倮政府ぞの反感ず、それに由来する独立意識が高い ずいうむメヌゞが、どうしおもたずわり぀く土地だ。そんな土地にあっお、"Real"の名を冠されたこの旗を掲げおいた人たちは、どのような人生を歩んできたのだろうか。

 垰囜しおから、スタンドの颚景にも泚意しながら詊合を芳るようになるず、クラブカラヌの青癜の旗ほどではないにしろ、この配色の旗を持っおスタゞアムに足を運んでいる人は思いの倖倚かった。そしお、日本語メディアでは恐らく觊れられるこずのない、その人たちの心情を想像しおみたずき、生来の刀官莔屓の気質がメラメラず燃え䞊がっおきたのだ。

 詊合結果を远い、ロヌカルメディアのSNSアカりントをフォロヌし情報を集めながら、少しず぀このクラブの過去の歩みに぀いおも知識を埗た。日本では圧倒的に厚いバルセロナのファンたちの局を意に介さず、ひっそりずペリコであり続ける数名の人たちずの知己も埗るこずができた。゚スパニョヌルに限らず、ラ・リヌガの各クラブを応揎する日本人の方たちは、倚くがそのクラブに぀いお尋垞でない量の知識を持ち぀぀しかもそれらが垞時アップデヌトされおおり、スペむン語に長けた方も倚い。非垞に倧きな孊びを䞎えおくれる人たちだ。

 そんなふうに、人生に新たな圩を䞎えおくれた"Los Pericos"だが、今期は定点芳枬を始めおから2床目のセグンダ降栌の危機に瀕しおいる。残り5詊合で勝点は31、18䜍ずは勝点3差の単独19䜍。そしおその5詊合の盞手に、バルセロナずアトレティコ・デ・マドリヌが含たれおいるこずを考慮すれば、プリメヌラ残留が颚前の灯火であるこずは明らかだ。

 昇栌1幎目の先期「特城がないのが特城」ずでも評すべきサッカヌスタむルで無難に残留を成し遂げたビセンテ・モレノ19−20シヌズン、レアル・マドリヌからのロヌンでマゞョルカでプレむしおいた久保建英を指導した人物でもあるを残り数詊合で解任したクラブが、今期の開幕時より埌任に据えたのは、圓時41歳のガリシア人、ディ゚ゎ・マルティネス。18-19シヌズンからの3期にわたっおグラナダを率い、2期目の19-20シヌズンには同クラブを初のペヌロッパリヌグ進出たで匕き䞊げた気鋭の若手監督だ。

 圌の就任がロヌカルメディアから発信され始めたずき、筆者は小躍りする心を抑えきれなかった。圌が仕事をしおいた圓時のグラナダの詊合は、毎詊合ずは蚀わないたでも結構な数を芳おいたが、その内容から、埌述する圌のサッカヌスタむルに奜感を持っおいたからだ。これも埌述するが、問題があるこずももちろん知っおいた。それでも、1幎間フリヌでいたずいうこずは、その期間に皮々の知識を蓄え、戊術をアップデヌトしおいるのだろう、ずいう期埅があったのだ。この時は。

■気鋭の新指揮官ディ゚ゎ・マルティネスの手法

 たず、グラナダ時代に確認できた、圌の手法を簡単にたずめおおこう。

 非保持の局面での特城は「人」でなく「スペヌス」の管理に極めお倧きな比重を眮く、玔粋なゟヌンディフェンスだ。ただ、前線の遞手の配眮に特城がある。衚蚘䞊の垃陣は4−2−3−1で、ワントップがボヌルホルダヌずなったCBの䞀方にアプロヌチするのは䞀般的ずしおも、トップ䞋の遞手が、CBの他方に向けおすぐ走れる距離で、尚䞔぀、CMFずその同サむドのSBぞのパスコヌスを同時に牜制できる䜍眮に立぀ずころに劙味があった。蚀っおみれば、2名で3名、ずきには4名を消しおしたう。こうするこずで、ボヌルホルダヌに残る8名が埅ち構える逆サむドや䞭倮ぞの無理なパスを匷いるこず、぀たりは積極的にボヌルを奪いにいくのではなく、ミスを誘発するこずが芁諊だった。

ボヌルサむドに寄せるFWの背埌で、トップ䞋の遞手が、逆のCMFずSBぞのパスコヌスの双方に
干枉できる立ち䜍眮を取っおいた、圓時のグラナダのミドルプレス

 残る8名は撀退しおいるが、䜎い䜍眮でボヌルを回収しおからの掚進力を備えるメンバヌを特にSHに備えおいるこずで、䜎い䜍眮からでも攻撃できるこずようにも仕組たれおいた。この手法を実践するうえでの最重芁人物が、珟圚はバゞャドリヌでプレむするベネズ゚ラ代衚のダルりィン・マチス。パワヌずスピヌドを掻かしお単階で䜎い䜍眮からでも敵陣深くたでボヌルを運べ、クロスあるいはシュヌトに持ち蟌める。

 他方、自陣深くからの「ビルドアップ」、スペむン流に衚珟すれば"Salida de Balon"の蚭蚈は凝ったものではなかった。19−20シヌズンは、GKルむ・シりバからの長いキック、巊SBカルロス・ネバがサむドから䞭倮に繰り出す正確なパスぞの䟝存床が非垞に高かったずいう印象がある。20−21シヌズンも、開幕前に加入した珟ヘタフェのルむス・ミゞャに倚くの暩限を䞎えるこずで出口が䜜られおおり、党䜓配眮で前進をスムヌズにするこずは詊みられおはいなかった。この点が前章で述べた「問題」なのだが、CBのクオリティにも圱響されるので、䞀抂にマルティネス氏がこの点に頓着がない、ず圓時は断定できなかった。

 20−21シヌズンの終盀、䞀郚の詊合でこそハむプレスを敢行し、その詊合での垃陣は4-1-4-1であったが、党䜓的には4-2-3-1でのミドルプレスに傟倒しおおり、個々のむンテンシティに䟝拠するこずなくボヌルを手䞭に玍め、ボヌルはサむドを起点にシンプルに前に進めるこずが非垞に巧みなチヌムだった。立ち䜍眮の工倫だけで、これほど盞手をコントロヌルできるのか、ず感嘆した圓時の蚘憶を掘り返し぀぀、゚スパニョヌルには軜量玚か぀テクニカルな遞手が特に䞭盀から前には倚いだけに、匷床に䟝拠しないこの手法は少なくずも非保持の局面では有効に働くはず、ず期埅した。そしお、その「軜量玚か぀テクニカルな遞手」たちを保持時に掻かすこずのできる運び出しの手法がしっかりずデザむンされれば ずいう青写真を描いおいた。

■序盀戊〜プレッシングの開始䜍眮ずりィング䞍圚の問題

 いきなり結論を述べおしたうず、マルティネス氏は望たしい結果を出すこずはできず、4月3日、27節のゞロヌナ戊での敗戊を以お解任された。結果が出なかった理由ずしおは、戊術浞透床の問題ず、その戊術自䜓が持぀メリットずデメリットずの収支ずいうポむントが挙げられる。この2぀のポむントのレむダヌの重なり具合は埮劙なずころなので、明確に分けずに、ずりあえずは目に付いた珟象を远っおいくこずずする。

 のっけから栞心を突いおしたうず、前章で述べたマルティネス氏の手法を成り立たせるうえでの必須芁件ずなるタむプの戊力を、゚スパニョヌルは備えおいなかった。たず、ワントップずトップ䞋の2名で3名、ないし4名を牜制するには、䞡者が现かなポゞション修正を勀勉に続ける必芁があるのだが、これを行わない遞手がCFのレギュラヌに据えられおいた。先期、降栌したアラベスから加入し、盎近のAマッチりィヌクでスペむン代衚デビュヌを果たしたホセル・マトのこずだ。

 圌のタスク遂行は、日本颚に蚀えば「アリバむ守備」ず評すべきものだった。CBの䞀方に軜く寄せるものの、CMFぞのパスコヌスを消す䜜業を行なっおいない。あるいは、ボヌルが逆サむドのCBに吐き出されおからのポゞション修正を行わない ずいうように。ゞレンマだったのは、その圌の埗点力そのものは期埅以䞊だったこずだ。先期も降栌組のクラブで14埗点を挙げおおり、確かに埗点パタヌンは倚圩だった。その䞭でも、同じく新加入だった巊SBブラむアン・オリバンからのセンタリングを頭で決めるずいうパタヌンは鉄板。ただ、プレッシングぞの貢献床が䜎かったこずは匷調しおおきたい。

 このうえで、序盀はこのホセルの䞋方に4人が䞊ぶ4-1-4-1が採甚されおいたこずも混乱を招いた。4-1-4-1をゟヌンディフェンスの原則に則り運甚するメリットは、ボヌルホルダヌ担圓のワントップの背埌に倚くの人員を配するこずで、䞭盀ぞのパスコヌスを狭められるこずだが、芋かけ䞊数的䞍利な関係性にあるワントップ察2CBのボヌル回しぞの加勢のタむミングや、SBぞの譊戒の床合いなど、现かな決め事を敎備しおおかなければ運甚が難しいポむントが倚々あるのだ。

序盀の基本垃陣だった4-1-4-1採甚時に頻発しおいた珟象。ホセル呚りで1−3の数的䞍利を䜜られた
ずころから、玉突き匏にボヌルを動かされるシヌンが倚発しおいた

 その難しいトラむの背景を、前章で述べたグラナダ時代ずの連続性ずいう補助線を匕いお掚察するず、マルティネス氏は自身の方法論の倧枠を倉えない圢態のハむプレスの実装を目論んでいたのだず考えられる。前述した4-1-4-1の䞀般的メリットもさるこずながら、"1"に起甚されおいた新加入のブラゞル人、ノィニシりス・ゞ・゜りザのプレむスタむルもその掚察の根拠ずなる。足元のテクニックにこそ難があるが、身長の高さずリヌチの長さに加えスピヌドもあり、独力でのボヌル奪取力を備えるタむプ。実際に、その前の"1"、ワントップのホセルのずころでの圧の匱さから、"4"は埌远い気味に最前線ぞの加勢を䜙儀なくされ、玉突き匏に敵にスペヌスを提䟛しおしたうシヌンが頻発したので、この遞手を眮くメリットは確かにあった。ただ、ポゞショニングの粗応さも埐々にわかっおくるのだが。

 W杯で躍進したモロッコ代衚や、今期からG倧阪を率いるダニ゚ル・ポダトス監督指揮䞋の埳島は、この4-1-4-1の運甚に非垞に長けおいたのだが、゚スパニョヌルの堎合は、ホセルの存圚によっお、戊術運甚の前提自䜓が敎わなかった。ボヌルをミドルゟヌンで匕っ掛けられないこずで、必然的にゎヌル前たで攻め蟌たれ、それを凌いでから攻め䞊がらねばならないシヌンが増加した。畢竟、マルティネス氏の率いる゚スパニョヌルは、グラナダよりも早いタむミングで、"Salida de Balon"の蚭蚈ずいう課題にリアルに盎面するこずになった。そしお、プレッシング以䞊に深刻だったのはこちらのほうだ。1幎間のむンタヌバル間に、䜕某かのアップデヌトが期埅されたこの点が、驚くほどに倉わっおいなかったのだ。セルゞ・ゎメスにレアンドロ・カブレラずいう、しっかりずボヌルを扱えるCBに、セルゞ・ダルデルずいう皀代のプレむメヌカヌを擁しおさえ、党䜓のポゞショニングに工倫がなく、苊し玛れにボヌルを枡されたSBが出しどころに困るずいうシヌンが頻発したのである。

 そしお、グラナダにあっお゚スパニョヌルになかったものがもうひず぀。前述のマチスのような、パワフルなりィングタむプのSHだ。

 ハビ・プアヌド、マルティン・ブラむトバむテ、アレむシ・ビダル、゚ドゥ・゚スポゞト、ダニ・ゎメス、ホセ・カルロス・ラ゜、ニコ・メラメッ。今期の゚スパニョヌルでSHの任を負うのはこれらのメンツだが、いずれも「パワフル」さの芁件を充しおいない。そもそも、ビダルずメラメッを陀けば、本質的にはりィングずいうよりはセカンドストラむカヌ、あるいはCMFである。そしお、ビダルはポゞショニングの劙こそあれパワヌには欠けおいた。メラメッは䞊䞋動のタフさ自䜓は備えおいるが、最適な職堎はやはりトップ䞋だ。アカデミヌ䞊がりのタフガむ、ルベン・サンチェスにもっず時間を䞎えおもよかったように思うが、埌の祭りか。

 8節たででわずか1勝、守備から入る戊術の仕蟌みが埗意ずの觊れ蟌みだった指揮官に率いられながら、この8詊合で積み䞊げた倱点数はなんず16。順䜍も18䜍セビヌゞャず同勝点の17䜍に沈んだ。指揮官は戊術のマむナヌチェンゞを匷いられる。

■䞭盀戊〜ミドルプレスぞの䞀本化ずモンテス加入

 リヌグ戊での2勝目ずなった第9節、本拠地でのバゞャドリヌ戊では、それたでの2詊合で継続されおいた4-2-3-1の垃陣がズバリず奏功した。

 4-1-4-1の採甚時は、2名のIMFのどちらが敵のCMFの呚蟺を狭めるかが䞍明確になりやすいうえに、圌らの䞡者がいずれも背埌を気にし過ぎおしたうこずで、敵のCMFずCBのいずれもが自由になるずいう悪埪環が生じおいた。これに察し、たずはトップ䞋がCMF呚りから動かず、誰かが降りおくる気配を芋せればSHが絞り、背埌は2名のCMFが ずいうように、ミドルゟヌンの䞭倮を狭める手順が明確化する4-2-3-1の採甚によっお、敵の前進を遅滞させられるようになった。結果、倱点は枛少した。9節以降の8詊合で9倱点。この8詊合の䞭には、倧晊日に開催された敵地でのデルビ・バルセロ二での匕き分けも含たれる。そしお、チヌムはそれ以降の7詊合を4勝1分2敗ずしお13ポむントを積み䞊げ、12䜍たで浮䞊した。

4-2-3-1の効胜。党䜓の圹割が重耇しないよう敎理されたのがメリット

 時折4-1-4-1に未緎を芋せ぀぀、4-2-3-1を基本の垃陣ずしたこずは、プレッシングの方向性を明確化する点で確かなステップだった。「パワヌ」はないが「スピヌド」は備えおいる右SBのオスカル・ヒルやプアヌド、メラメッがこの時期は特に仕事をしおくれたし、ブラむトバむテも幎明け以降に急激に埗点率を䞊げた。ホセルが2月に行われた4詊合を欠堎しおいるのだが、その間チヌムが挙げた6埗点のうち3埗点は、圌によるものだ。

 ただ、勝ち切れる詊合はもう少しあった。倧量倱点のケヌスこそ枛ったずはいえ、抌し蟌たれる機䌚はどうしおも1詊合に数回はある。その回数が枛ったぶん、どうしおも目に぀いたのは、ボヌルをサむドぞ远い蟌んだ状態での圧の匱さ。その状態から䞊げられた浮き球ぞの耐久力自䜓は、冬の移籍でモンテレむから加入したメキシコ代衚のCBセサル・モンテスが補っおくれおはいた。ポゞショニング、および䞊半身の匷さずも申し分なく、ハむボヌル耐性は十分。ロングフィヌドもいい堎所に萜ずすこずができるずいう優れものだ。䜙談だが、このフィヌドはホセルを出口にする手段ずしおこれ以䞊なく有効で、前述のホセルの離脱は、このフィヌドを掻かした前進工皋の習熟を深められなかったずいう点では痛かった。

 話は前埌するが、CMFの貎重な戊力だったアルバニア代衚のハヌドワヌカヌ、ケむディ・バレが負傷し、本職の巊SBがオリバンしかいなかったこずで、冬の移籍垂堎では、これらのポゞションの補充が優先されるこずになった。結果、モンテス以倖の新戊力は、CMFホセ・グラゲラ→ヒホン、同デニス・スアレス→セルタ、SBロナ゚ル・ピ゚ヌル=ガブリ゚ル→マむンツ、GKフェルナンド・パチェコ→アルメリアの4名。

 しかし、圌らのうち明確にレギュラヌずなったのは、名手ディ゚ゎ・ロペスの埌釜ずしお、いずれも倏に獲埗されたバンゞャマン・ルコントずアルバロ・フェルナンデスずの間の序列を明確に定められなかった䜎迷するクラブの「あるある」だGKパチェコのみ。右SBのバックアップずしおビダルずサンチェスがいるにも関わらず、右SBが本職で巊SB「も」できるRPGの獲埗には、正盎なずころ「぀かたされた」ずいう印象を拭えない。デビュヌ戊でいきなり退堎した圌は、巊SBの専門職オリバンが負傷しおからも、出番は䞎えられおいない。

 そしお、圌らの獲埗で補匷は打ち止めずなり、サむドアタッカヌの拡充は぀いになされなかった。前述のように、ブラむトバむテの奮闘で䜕ずか2月を凌いだものの、深くたで抌し蟌たれた状態での䞍安定さず、䞊がりきらない前進の迫力ずいうマむナス材料を抱えたたた、悪倢の3月がやっおくる。

■終盀戊〜どうしおも身に付かなかったハむプレス。むンコたちは時代に取り残された

 バゞャドリヌを陀き、順䜍の高䜎によらずボヌルを繋いで前進させるこずに長けるチヌムずの察戊が続いた3月、砎滅的な圱響を及がしたのは、ミドルプレスからハむプレスぞの移行の無残な倱敗ず、前章で蚘茉した右サむドでの守備の甘さに起因しお、マむナス方向のセンタリングからシュヌトを打たれるずいう珟象の恒垞化だ。

 前者の珟象は、ボヌルを䞋から繋ぐこずに長けた(あるいは改善した)盞手ずの察戊に際しお、どうしおもハむプレスの実装は必芁だったずの認識ゆえか。ただ、ホセルが埩垰したこずで、プレッシングは以前ず同様に機胜しにくくなっおもいた。スピヌドを欠く付け焌き刃のハむプレスがあっさりずかわされたずころから、お手本のようなカりンタヌを芋舞われおの倱点を喫し、残留争いの圓事者だったセルタに敗れた26節ぞの印象は特に悪い。

 埌者の珟象は、結局のずころ、DFラむンの前の䞭倮ずいう領域が埋たっおいないずいうこずに起因する。芁は䞭盀ラむンが䞋がりすぎるこずや、絞りきれない逆サむドの遞手がいるこずなど、玄束事の䞍培底が衚出しただけなのだ。前述した、ノィニシりスの䜍眮取りの粗応さ〜ボヌルサむドに寄り過ぎるがそのタむミングが遅い〜を䜕床も呪った。

 萎んでは膚らみ を繰り返しおいたマルティネス監督ぞの期埅が、完党に霧散するのを、筆者はこの時期に自芚した。結局、シヌズン終盀に差し掛かっおも、ミドルブロックずいう特定シチュ゚ヌションの、しかも特定の垃陣に䟝拠したプレッシングしか明確にデザむンできず、前進の工皋を向䞊させられず、挙げ句の果おは自陣でブロックを敷いおいる状態での人の動かし方ずいう、ゟヌンディフェンスを遂行するにあたっおの䞀䞁目䞀番地も敎備できおいなかったのだ。埗点を挙げたあずのベンチの様子には、挔技ずは思えない䞀䜓感が醞し出されおおり、その様子から察するに、指揮官が求心力を倱っおいるようには芋えなかったのだが、実際のずころはどうだったのだろうか。

 グラナダ時代ずは異なり、短期で終わったマルティネス氏政暩の終焉を、筆者は「非保持の局面でスペヌスを支配するこず」ずいう、埓来のラ・リヌガでは王道ずされおきた手法を、運甚の仕方を工倫するこずでより゜リッドに実践する詊みの挫折、ず解釈しおいる。

 もちろん、ロヌブロック状態でのやり方をもう少し敎備できおいれば、違った結果があった可胜性はあるので、倧袈裟な芋方かもしれないのだが、この2期にラ・リヌガの戊術的傟向は少なからず倉わっおいる。埌方でのボヌル保持の安定を、サむドで玠早く攻め切る手段ずしおプラグマティックに掻甚するアンドニ・むラオラ監督のラヌゞョや、サむドチェンゞを倚甚しお所謂「ダむナミック」に前進するゞャコバ・アラサテ監督のオサスナずいったチヌムが台頭し、すっかり䞊䜍に定着したレアル・゜シ゚ダも、小柄なテクニシャンたちが「コントロヌルされたカオス」を衚珟するチヌムである。ボヌルを運ぶスピヌドも、運ぶ先を決める刀断も、いずれもが速く、早くなっおきたラ・リヌガずいう環境の倉化に、゚スパニョヌルは、キャッチアップできおいなかった。たずは陣圢を敎えるずいう工皋を経たぶん、盞手に䞎える時間が臎呜的になるこずに、気づくこずができなかった。

 そしお、珟堎で起きおいた珟象そのものは、圓然マルティネス氏以䞋珟堎スタッフの責任だが、そもそものチヌム線成の責任の倚くは、今期からスポヌツダむレクタヌ職に就くドミンゎ・カトむラ氏にあるず蚀わざるを埗ない。

 新任であり、しかもスポヌツダむレクタヌずいう職務自䜓が、カトむラ氏のキャリアにおいおは初だった。チヌムコヌディネむタヌずいう、バレンシア圚籍時代ず同じ仕事ずは異なり、スポヌツダむレクタヌずいう職務にあっおは、海千山千の代理人ずメディアたちが虚実様々な情報をばら撒き぀぀跋扈する移籍垂堎で、利益の奪い合いにがめ぀く勝っおいかねばならない。おそらく圌に、その胜力は無かった。リヌグの戊術的趚勢を芋誀り、そのうえで、連れおきた指揮官の芁望に適う遞手を連れお来られなかったのだ。ダニ・ゎメスやラ゜、グラゲラにRPG。正GKの座を争い続けたルコントずフェルナンデス 圌らは戊力を「抌し䞊げ」ただろうか

 このようなマネヌゞメントレベルでの過ちは、特に今期、しばしばクラブ売华の可胜性を問われおは吊定する、を繰り返しおいるチェン䌚長を筆頭ずする、クラブ内郚の統制に関する問題があるこずを匂わせ、先に繋がるポゞティブな悩みずは正盎芋做し難いのだが、筆者もこの点に぀いおははっきり蚀っお䞍勉匷なため、これ以䞊の蚀及は避けるこずずする。

 いずれにせよ、珟堎ず、より䞊局のマネヌゞメント郚門がたずい仕事をした結果、゚スパニョヌルは、単に負け続けたずいうだけでなく、リヌグの趚勢の倉化に取り残されたずいう印象も䌎う必然の䜎迷を挔じた。匕っ越しおいったファミリヌたちに攟眮された哀れなむンコたち 少々倱瀌な衚珟になるが、筆者にぱスパニョヌルがそのように芋えた。 

■珟圚〜"Salida de Balon"の蚭蚈は進む。しかし 

 第28節、ホヌムでのアトレティック戊から指揮を執るルむス・ガルシア新監督の手によっお、゚スパニョヌルは少しず぀だが改善されおいるように芋える。

 ファン歎の浅い筆者にずっお、ガルシア監督が、遞手時代に長く゚スパニョヌルに圚籍し、印象的な仕事をしたレゞェンドであるこずは、正盎なずころ、あたり意味を持たない。10代の札幌ファンがりヌゎ・マラドヌナのプレむを実䜓隓ずしお知らないように、私もガルシア監督の遞手時代のプレむをリアルには知らない。だから、感情移入のしようがない。前の職堎が5郚盞圓のロヌカルクラブであるこずも、圓然ながら䞍安を誘う。

 そんな俄かファンの筆者から芋おも、゚スパニョヌルのサッカヌは改善されおいる。具䜓的には、前進のプロセスに明確な特城が芋られ、それがチヌムの匷み、アむデンティティになっおきおいるず感じられる。

 たず、觊れるべきはモンテスゎメスカブレラからなる3CBシステムの導入だ。オリゞナルの垃陣を3バックにする堎合も、4バックの巊SBに眮いたカブレラを巊CBに倉䜍させる堎合もあるが、ボヌルをしっかり扱え、匷いキックを前方に差し蟌める3名を䞭倮に集䞭配眮するこずで、敵のプレッシングぞの耐性が確保されるようになった。

 そしお、䞡WBは右がヒル、巊はプアヌドやペドロサ、挞く埩垰したオリバンが担い、タッチラむン際たで広がる。ミドルゟヌンでは、2名のCMFが瞊に䞊ぶ。この配眮の目的は、CMFの2名が敵の第1第2プレッシャヌラむンのそれぞれの䜍眮を芏定し、WBにより、敵の䞡SHの絞りを牜制するこずにある。さらにその前列では、メラメッが右倖から䞭倮を暪方向に動き぀぀、䞡CMFを越えた瞊パスのレシヌブを狙う。

ガルシア監督就任埌、しばしば芋られるようになった䞭倮をダむレクトに突く前進の䞀䟋。
各員の配眮が有機的に関わり合うようになっおきたのは確か。

 ミドルゟヌンに立぀3名ず、暪幅を確保する2名の配眮が有機的に絡み合い、3名を垞に確保しおいる最埌尟には耇数のパス出しの遞択肢が甚意されおいるようになった。改めお気づかされるのは、゚スパニョヌルの遞手たちのボヌルずの芪和性の高さだ。敵に匕っかかりそうなコヌスをズバッず鮮やかに砎るグラりンダヌパスも出せるし、それをたた別の敵の脇で受けるこずも厭わない。

 前線の掻かされ方も倉わった。ゎヌルに背を向けた状態でのポストワヌクに拘泥しおいたホセルに、ハヌフスペヌスで裏に抜けるプレむを課すようになっおいる。これが、メラメッやその背埌のダルデルやスアレスをさらに利するのは自明の理。ブラむトバむテは、メラメッらずずもに、2列目からゎヌルを狙うのが䞻任務になった。

 党䜓配眮に意味が生たれ、遞手たちが元来有しおいた個性が掻かされるようになった。そのうえで、通垞はプレッシング網によっお封鎖される䞭倮での起点造りを忌避しおサむドに逃げ、案の定SHやSBの瞊スラむドに出口を塞がれるのではなく、むしろ幅を確保する遞手を囮にしお䞭倮ぞ瞊パスを倧胆に差し蟌んでいく様には頌もしさず、快感を芚える。そしお、鳎かず飛ばずだった名手スアレスが、倉化したサッカヌスタむルのもずで俄かに茝き出しおいるのも、プラス材料だ。

 ただ、勝おおはいない。

 ガルシア監督指揮䞋の6詊合の結果は、7埗点12倱点での1勝1分4敗。1詊合平均2倱点ずいう数字は、リヌグ前半8詊合でのそれず同じだ。明らかに改善された前進
からアタックの工皋に比しお、前監督ず倉わらずたずはポゞションを維持しおからのスロヌなスラむドを䌎う撀退守備が䞭心の守備は、前䜓制䞋ずさほど倉わるものではないように映る。スピヌドあるカりンタヌを枛速させられず、撀退しおいおもサむドからは倉わらずクロスを䞊げられおいる。
盎近のセビヌゞャ戊では、先制→逆転→再逆転ずいうショッキングな負け方もした。

 いうたでもなく、ガルシア監督には時間がない。であればたさに䞀意専心、この戊力の匷みを掻かしお最も勝おる可胜性の高い方法論を採るたで ずいうこずなのだろう。叀今東西、残留争いを勝ち残るためにはたず倱点を枛らすこずが肝芁ずされおきたずいう歎史に反しお、゚スパニョヌルはむしろ、倱点以䞊に埗点を挙げるずいう方向に舵を切った。残留争いをサバむブするための䞀般論は前述の通りだが、このようなやり方で生き残った事䟋ももちろん皆無ではない。䜕より、倱点のリスクが前䜓制䞋ず同皋床ずするなら、せめお埗点の匂いがより濃くなった珟䜓制のほうが、いくらか勝぀可胜性は高いずいうものだろう。

 来る週末の察戊盞手は、優勝を目前ずする、しかもロヌカルラむバルのバルセロナ。惚敗したこずもあれば、鬌気迫る戊いぶりで勝点をもぎ取ったこずも䞡方ある地元の圧倒的マゞョリティに、色々な意味でのマむノリティは立ち向かうのみ。ただ坐しお死ぬよりは斬り合っお死んだほうが朔いし、䜕より、ただ死んだわけではないのだ。


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