薄型ロープロ16ボタンレバーレスHaute Pad T16のレビュー
更新履歴
2024/3/19 記事を微修正
ページ最下部にレビュー後の記事へのリンクを追加
2023/12/7 記事を全体的に微修正、改造用部品のリンクなどを追加
前回記事で、Haute Pad G16を買った後に、Hauteから新しい商品が発表されているのを見つけました。
それがこちら。
特徴としては、薄型で天板広め、ロープロファイルのスイッチを搭載した16ボタンのレバーレスコントローラーです。
自分が欲しかった要素が全部盛られてることもあって、セールのタイミングを待って約9000円ほどで購入しました。
セール時でしたが配送が遅いということもなく、注文から大体1週間ほどで到着。アリエクのあるあるなんですが、配送時の氏名が逆になっているせいか、自分の荷物追跡サービスに登録されないのがネック。
梱包はG16に比べかなり丁寧な印象を受けました。
アリエクお馴染みの黄色い封筒を破ると本体のダンボールが。つぶれや汚れなどは一切ありませんでした。
それではここから開封して中身を見ていきます。ちなみに機能は前回紹介したG16と同じなので割愛。違いとしてはせいぜい左側の接続用USB-Cポートがないくらいです。
開封
内容物はG16とほとんど変わりません。本体、説明書、接続用USBケーブル、タクトスイッチカバー(赤・黒)、予備スイッチ1個、スイッチ取り外し用の工具、3Mの滑り止めシールです。
それでは項目別にそれぞれ見ていきます。
外見
外装はG16と同じくアクリル積層タイプ。アクリルで基盤をサンドイッチしており、基盤の端がそのまま外側に露出しています。
G16の公称が16mmでT16が12.5mm、実測も大体そんな感じでした。
アクリル自体に傷などはなかったものの、基盤側には結構目立つ傷がありました。動作には特に問題ないですが、よく見るとほこりや短い毛なんかも一緒にサンドされてたりするので、このあたり気にする方はダメかもしれません。
ボタン
ボタン配置はそこそこ広めに取ってあり、G16などに比べて間違ってボタンを押してしまう危険性は少ないように思えました。
ボタンは直径24mm~25mmでさらっとした感触。押し込むと周りと高低差がほぼなくなるくらいめり込みます。ボタンの被せはゆるくもなくきつくもない感じ、ボタンがめり込む関係でボタンが吹き飛んだりということはあまりなさそうです。
しかし、使われているロープロファイルスイッチが実はちょっと厄介で、型番は「Kailh Choc V2」の赤軸となります。この「Kailh Choc V2」は一般的なCherryMX規格とは違い、独自の足のパターンを持っているため、別のスイッチへの換装が非常に難しいです。
3/19追記
Kailh Choc V2の互換スイッチに換装しました。
簡単な記事を書いたので、ページ下部にリンクを貼っておきます。
今のところ互換スイッチは2種類しか見つけられてませんが、今後選択肢が増える可能性はあります。
「Kailh Choc V2」はアクチュエーションポイントが1.3mm、総ストロークが3.2mmという性能。CherryMXのロープロ銀軸がアクチュエーションポイント1.0mm、総ストロークが3.2mmなのでまぁ悪くはないが・・・という感じ。バネが弱めなのか、ボタンの戻りが遅く感じるため、総ストロークの長さと相まってそのまま使うには若干厳しい印象。
ちなみに「Kailh Choc V2」は他に茶軸と青軸がありますが、それぞれタクタイルとクリッキーという違いだけなので、変えたとしてもストロークには変化なし。
左上・右上のタクティカルスイッチ類はG16よりも短めで、そもそもボタンとの距離も遠いため暴発の危険はないです。
使用感
手を置くスペースが広めに取られているのと、高さ自体が低いため、単体で机置きでも膝置きでも問題なく使えると思います。
が、机で使う場合、ボタンを強く押すと基盤がたわむ感触がありちょっと気持ち悪いです。ただ、ゴム足を真ん中付近中心に配置することで気にならなくなります。このへんは基盤に直接ボタンを付けているのでしょうがないのですが、外装の薄さと大きさが悪い方に作用してしまっていると思います。膝上で使う分にはあまり気になりません。
また、前の項でも述べましたが、ボタンの総ストロークが長く、バネも弱いため、そのまま使えるかという問いには疑問符が付きます。以前紹介したG16は総ストロークは長いもののバネが強く、ゲーミングキーボードっぽくてこれはこれでアリかなという感があったのですが。
ボタンの配置は広めなので、普段ミニタイプのレバーレスを使ってる人は違和感を感じるとは思います。すぐ慣れるとは思いますが。
改造
というわけで少なくともボタンをそのまま使うのは嫌なので、改造方法を考えました。
総ストローク調整
一番簡単なところでいうと、ボタンにOリングをつけることで、ストロークを短くすることができます。私はいつものPunkWorkshopボタンにOリングを付けて使っています。
あとは、スイッチの改造ではお馴染みのワッシャーを入れる方法。
スイッチを開けて軸の裏側の突起にワッシャーを2、3個詰めます。あとは元通り組み立てるだけ。これで総ストロークについては多少マシになります。
使ったのは前回のミニレバーレスで使った内径2.5mmのワッシャーです。が、内径2mmタイプでも問題なさそうでした。外径が6mm以内であれば大概はハマりそうです。厚さ0.5mmのワッシャーを3個入れると個体によっては反応しなくなるものあったので、調整がめんどくさければ2個までにしとくといいと思います。
できれば、バネももう少し強いものにしたいのですが、バネの太さが通常のCherryMXのものとは違い、少し細いタイプが使用されています。
一応CherryMXのバネもハメることはできるのですが、バネ長が長すぎて押すことができなくなるためバネをカットするか、Kailh Choc用の交換バネを入手しないとダメなようです。
アクチュエーションポイント調整
CherryMX互換の場合は他のスイッチの軸と交換したりしてうまく反応してくれることを祈ることが多いのですが、ロープロファイルスイッチは軸の形状がメーカーによって全く違うので軸交換は難しいと思います。
というわけで取れる方法として2通り考えました。もっといい方法を知っている人がいれば教えてください。
①スイッチの金属部分を曲げる
これはときどさんの格ゲー研究室の中でメカニックのPontaさんが紹介していた方法です。
金属部分を少しだけ曲げて、スイッチが反応するタイミングを早くするという方法。この動画はCherryMXの話なので、いじるポイントとしては変わると思いますが、理論上は可能なはずです。
が、言うまでもなく調整が難しい上にまともにスイッチが使えなくなるリスクもあり、この方法は断念しました。
②詰め物をして、軸自体のニュートラルポジションを下げる
じゃあどうするの、ということで考えたのが次の方法。
「Kailh Choc V2」の軸を取ってみると、スイッチ内部に高さを盛れそうな部分があります。ここにクリアファイルなどを細長く裁断して両面テープで固定して、軸自体のニュートラルポジションを下げてしまおうという試みです。
ただ、幅が1mmもないため、裁断にはかなり気を使います。
先に言っておくと、この作業非常にめんどくさいです。
また、一定のクオリティを担保するのが非常に難しく、一切おすすめしません。
それでもやるという方は覚悟を持ってトライしてみてください。
というわけで作業スタート
用意するものは以下の通り
・PPやプラなどの加工可能なシート(0.3~0.8mm厚)
・カッター
・薄い両面テープ
・マスキングテープ
・工作用のボード
・ピンセット
今回私が素材として用意したのは100均で売っていたクリアカードケース。
素材はある程度の硬さがあればなんでもいいとは思いますが、厚さ1mmを超えるとスイッチが押しっぱなしになってしまったので、多分0.8mm以下くらいが限界かと思います。ダイソーに売ってる0.75mmのPPシートなんかいいんじゃないですかね。試してないですが。
まず、カードケースに両面テープを貼り付けて、5mm幅の帯状に裁断します。その上からマスキングテープを貼って作業台に固定します。
マスキングテープで固定する理由は、0.5mm幅とかで切断すると、切断したそばからどこかに飛んでいくため。あと、単純に切る時に滑って危ない。
余談ですが、このカードケース、まあまあ固くてデザインナイフだと微妙に歯が立ちません。一緒に100均で買ったナイフがボロボロになりました。しょうがないので家にあったデカ目のカッターでどうにかこうにか切っていきます。
これを繰り返して、長さ5mm、幅0.5mmの棒を量産していきます。
あとはひたすらこれをスイッチの内側に貼り付けていくだけ。
大体2時間くらいかかりました。
できがったものがこちら
軸の高さが低くなっているのがわかると思います。
総ストローク調整の項で説明したワッシャー2個も詰めています。
すべての改造を反映したのがこちら
改造を施すことにより、ボタンが最後まで沈まなくなり、少し浮いた状態で止まります。
総評
いいところ
・値段が(16ボタンにしては)安い
・16ボタン
・天板が広い
・高さが低い
・汎用性が高いGP2040-CEを搭載
・ロープロファイルスイッチを搭載
・膝置きに向く
・MagicBoots等を使用することでPS5でも使える
微妙なところ
・別のメーカーのスイッチへの交換が実質的に不可能
・デフォルトのボタン性能がよくない
・改造のハードルが高い
・机置き時に基盤がたわむ感覚がある(改善可能)
総評としては、人は選ぶが刺さる人には刺さる製品ではあると思います。
特に、12.5mmの薄さで手を置けるスペースがある16ボタンというのは、低価格帯レバーレスにおいて、といまのところ唯一無二の存在であるため、選ぶ価値はあるのかなと思います。
が、一方でG16と違い、そのまま使うには少し難があるというポイントがいくつかありましたので、万人向けではないことは確かです。また、他メーカーの製品に比べて圧倒的に安いといいつつもG16がセール時に5000円台で買えることを考えると、9000円を出すというのは少しハードルが高く感じます。
ただ、逆に言うと、そのポイントを克服できる術を持っている、または気にならない方であればおすすめできます。
以上、Haute Pad T16の簡易レビューでした。
で、これを書いている最中にまたまたHauteから新製品が出てるのを見つけてしまいました。買うたびに新しい製品発表するのやめろ。
製品としてはTシリーズとGシリーズの中間のような大きさで、外装がアルミニウムです。手元側に傾斜があり、高級感があります。
ただ、スイッチは「Kailh Choc V2」が継続されているので、そこがネックになりそうです。
現時点ではアリエク上に商品ページがないため価格はわかりませんが、こちらも刺さる人には刺さる商品になっていそうです。
→12/7追記 商品ページが出来ました。
やはり他のシリーズと比べて高めになっています。狙い目としてはクリスマスセールで下がると言われているので、そこでどれだけ下がるかでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
レビューその後
上記レビューの後、更に使い続けて、改造と最適化を進めました。
かなり使えるレバーレスになったと思うので、気になる方はどうぞ。