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おかしなレストラン

 おかしなレストランがあった。その看板には、こう書かれている。
「お残し厳禁、もし食べ物を残した場合、店員がその場で食べます。店員が食べ切るまで逃しません」
 私はその看板が気になって、店の前に置かれているメニューを見た。和洋中あって食べ物は豊富だ。そして写真はどれもこれも美味しそうに見える。メニューを見ていたらかなりお腹が空いてきた。よし、この店に入ろう。
 店内は至って綺麗で、客もまあまあいる。会計は個々の席にて行うようだ。店員さんに案内されて、席に着く。再びメニューを見る。相変わらず美味しそうだ。これにしよう。席のベルを押す。
「はい」
「イカスミパスタとジンジャーエールを一つずつお願いします」
「かしこまりました」
しばらく待っていると、ジンジャーエールが来た。私の好きな辛口だ。よくわかっている。イカスミパスタも来た。これはうまい。イカスミパスタの上にイカの刺身が乗っていて食感も楽しい。あっという間に食べ切ってしまった。しかし、フォークを置くときにうっかりジンジャーエールのコップを倒してしまった。残りのジンジャーエールが床に滴り落ちる。仕方がないのでコップを立て直して、会計を呼んだ。
 店員さんが来た。「それでは食べ残し、飲み残しがないか確認させていただきます。」店員さんはイカスミパスタの皿、ジンジャーエールのコップを入念に見た後に言った。「少々お待ちください」
 少し待っていると、他の店員さんが来て、床を舐め出した。

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