マガジンのカバー画像

器 いとおかし

23
長く漆器作りをしていますが、器は中の物を大切に守るものです。そして、食文化の豊かな海から、器は誕生してきたのだろうと思います。
運営しているクリエイター

#日本文化

大藏のご先祖は…(上)

             (上は祖父の挽いた薄造りの椀木地) このタイトルは不正確です。より正しくは、「小椋(おぐら)、大藏のご先祖は木地師」です。(とはいえ、この名字の方で現在まで木地師をしているのは、ごく少数かと思います。) 小椋か大藏か? 江戸末期頃まで 、木地師といえばおおよそ姓は小椋か大藏でした。それは、惟喬(これたか)親王がロクロを使った木地作りを、そこの村人や家臣(=小椋、大藏)たちに伝えたという伝承があるからです。この伝承に関しては、次回詳しくお話ししま

大藏のご先祖は…(下)

惟喬親王の伝承も高祖父の資料も、出所は滋賀県東近江市(旧永源寺町)です。ここは木地師と深い繋がりがあります。 惟喬(これたか)親王伝説 旧 永源寺町は琵琶湖の南東に位置し、山深いところです。伝説によると、天皇の長子でありながら皇位を継げなかった惟喬親王は、この地に隠棲されたそうです。そして、里人や家臣(小椋、大蔵)たちに木地作りを教えたとされています。それで、ここが木地師発祥の地の地とされるのです。 そして、惟喬親王伝説にちなんだ神社やお寺など、町内にいくつか残っていま

料理は発見 … ディナー with 漆器

もうすぐクリスマスですが、宗教心というより冬の美しいイベントとして楽しみたい方が多いのではと思います。 ということで、漆器を使ったディナーのご提案です。素敵な写真をお寄せ下さるお客様がいて、漆だからと窮屈に考えなくていいのだと嬉しい発見をさせていただきました。この写真を中心にメニューを考えてみました。素人料理も混ざりますが、まぁご参考までに… オードブル 味噌漬け卵黄をさらし玉ねぎに乗せました。あと塩抜きしたヘシコのチーズ焼きなどです。味噌漬け卵黄は簡単美味なので、お勧

芋づる式 … お 椀

漆器といえば、お椀ですね。私も様々なお椀を作っており、何かお役に立てる話ができればと思います。とはいえ、お椀全般に目配りしている訳ではないので、ぼつぼつ思い浮かんだこと、主に自分の手掛けている範囲のことをつづってみます。 歴 史 上の写真は祖父の作ったお椀の木地です。70~80年くらい前の仕事でしょうか?内部や底には結構厚みがありますが、外形(シルエット)は華奢で、その頃の流行りの形かもしれません。お椀も世につれて変わるのでしょう。 では、お椀はいつごろから使われてき

料理は発見 … 続 .されど箸置き

コメント有難うございました 貴重なご意見を寄せていただき、有難うございました。熱心に集められている箸置きコレクターの方、実践的に箸置きをお使いの方、相手を尊重するお茶の作法から箸置きについて考えられた方から、それぞれのご意見を頂きました。興味深く読み色々考えさせてもらいました。 正解探しにこだわらなければ、具体的な場面から考えるという方法が、より現実的に思えます。寄せられた事例によると、写真を撮る時には箸置きの顔が見えている方が好ましいし、箸を取る時には箸置きの出っ張りが

料理は発見‥調理器具

「食は命なり」は、ギリシャの医聖ヒポクラテスの格言です。「食べ物を汝の医者とも薬ともせよ」と説得力ある言葉が続きます。 とはいえ、「料理は手間がかかるし面倒、安くて美味しい食物はどこでも売っているし…」と、かつて思っていました。 けれど、便利な調理器具に出会い、大きく発想を転換。料理って、ほんとは面白いかも!一例ですが、そんな気付きを与えてくれた調理器具たちです。 ピザオーブン ピザは美味しいけれど、ピザ窯なんて無理、出来合いを買ってくるしかないと長くあきらめており

春めいて

暗いニュースが多くても、季節はめぐり春は来ます。 生きる強さを、くじけぬ賢さを持ちたいとねがう2021年の春です。 #404美術館

器比べ

仕事がら自作の器をまず家で使って、様子をみます。工房で見る時とはかなり印象が違って、「なぁるほど」とか「あぁそうなんだ」とか独り言をつぶやいています。では、一個のリンゴの見え方がどのように変わるのか、器を変えて比べてみます。 ガラス ガラスは何十年も前に買ったものです。透明感のあるガラスに入れると、シャリっと爽やかな食感が連想されます。朝のテーブルが似合いそう。 根来塗(ねごろぬり) これは私の根来塗のお皿です。赤は元気の出る色なので食欲をそそります。しっかりと味