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青幇・洪門(紅幇)とはなにか

幇という言葉を知る者は少ない。

知っていても誤解や偏見に満ちていることが多い。中国人や世界に広がっている中国人社会(華人社会)では「幇」という漢字の意味を理解している者が多いから、誤解は少ない。

「幇」とは「仲間」という意味である。語源としては「靴をつくろう布」という意味で、それが進んで「助ける」「助け合う仲間」となった。

ほんとうの意味はそうだが、一般に「幇」というと、「秘密を共有する仲間」という感覚がつよい。

中国や華人社会には無数の「幇」が存在する。
難しい規律や規約など持っているわけではない。単純な集まりが幇なのだ。
たとえば山奥の小さな安楽という名の村で、年ごろの女の子たちが数人集まって、男子の噂話をする会があるとしよう。

「A地区の××君は、ちょっとかわいいけれどマザコンらしいわよ」

「B地区の〇〇君はイケメンだけど、あっちのほうは下手なんだって」



こんな感じで男子の情報を交換しているこのサークル名は、村の名をとって「安楽娘々幇」などという。名前はともかく、この集まりで出された会話は秘密である。とくに規則があるとか、条文で定めたとか、そういうことではない。こんな集まりは世界中にあって、会合の内容が秘密であることは洋の東西を問わない。

安楽村には、これとは別に「安楽甜々幇」という幇があるかもしれない。そこでは女子が近隣のスイーツ名店の味の評価をしているだろうし、自分たちで特製のお菓子を作っているだろう。アダルトビデオを鑑賞する若い男の子の幇もあるし、政治思想の会合もある。幇は、無数にある。

「私は、とある幇に加入しています」といっても、不思議でも異常でもない。非社会的、非合法的な会でなくても、そのメンバーは秘密なことが普通だ。こうした集まりが進化して、経済や金融情報を集め、あるいは秘密の事業に投資するといった話になることもある。このような集まりが幇なのだ。日本ではサークル活動とか会合とか、かつては漠然と「寄り合い」などといっていたもので、どこの国、どの民族も同じような組織を持っている。華人社会では、こうした会を「幇」と呼んで、ことさら重視する。王朝が交替し、異民族に支配され続けた長大な歴史を経てきた結果、中国の人々は国家や皇帝よりも仲間を大切にする「幇」という組織を作るようになったとされる。幇は、中国だけでなく、世界の華人社会には無数に存在する。中国や華人とはまったく無縁の社会で、幇の活動が展開されていることも多い。

無数に存在する幇の中に、ひときわ巨大で、格段に秘密の存在がある。それは世界でいちばん古く、世界でいちばん大きく、そして強く厳しい組織だ。それが「青幇」と「洪門」である。洪門は「洪幇」と呼ばれることもあるし「紅幇」と書かれることもある。洪門はまた「チャイニーズ・フリーメイソン」と名乗ることもある。これについては後にするが、今回はここまでにしよう。


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