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管理費等保証制度のオンライン化は逆に管理会社や理事長の仕事を増やす結果に

管理費等保証制度と聞いてすぐに理解できる方は、マンション管理業者の人と、たまたま最近これを目にした管理組合の理事長の人ぐらいと思われるほどピンポイントの話かと思います。

しかもこのタイトルで「あるある」と言っていただけるのは、管理会社でさらに直にこの業務に関わった人に限られる狭い話です。すみません。

マンション管理会社はその仕事上、管理組合の通帳と印鑑の両方を預かることが多いです。でもこれは管理組合の物であって管理会社の物ではないので、大事な通帳と印鑑を他人に預けるなんてよくないですよね。

だからマンション管理適正化法っていう法律で、管理組合の口座と印鑑の両方を預かる場合は、その口座に対して管理会社が保証を付けなければ預かってはいけないことになっています。

この保証制度はマンション管理業界団体である「一般社団法人マンション管理業協会」というところが運営しておりますが、これに管理会社が加入して保証料を払うことによりその管理組合の1ヵ月分相当の管理費等の金額の保証契約が締結されるわけです。

簡単に言えば1ヵ月分の管理費等の金額の保険をかけているようなものです。

この制度の運用期間が毎年10月から翌年9月までの1年間になっているので、毎年9月になると、組合向けに「あなたの管理組合が保証制度の対象になっていることを証明します」という証明書が発行されます。

この書類は契約を締結している管理会社に送られてくるので、管理会社は管理組合の理事長にその証明書を渡し、その際に証明書を受け取りました。という受領書を取り付けます。

実は今年からその証明書を理事長に届けて受領書を取り付けるという業務がオンライン化されました。

流れをざっと説明しますと、今まで紙で発行されていた「証明書」とその「受領書」が無くなり、管理組合ごとのIDとパスワード一覧(エクセル)が管理会社に送られます。

管理会社はそれを組合の理事長にお伝えし、理事長はご自分でパソコンやスマホ上で、協会のサイトにアクセスし、IDとパスワードを入力して自分のマンションの証明書をウエブ上で閲覧します。

その後、内容を確認しました。というコメント部分をクリックすれば、昨年までの受領書へ署名捺印されていたことが完了というものです。

まあオンライン化は時代の流れかと思うのですが、いざ作業を始めてみれば、これで楽になって得をしたのは発行元の「マンション管理業協会」だけだよね。と私の社内では不満たらたらです。

一応、管理組合向けの案内文書(ひな形)と理事長向けのサイトでの操作説明書もサイトにアップされているので、それを使えばいいのですが、IDとパスワードは当然マンションごとに違いますから、そのデータをワードの書面に差し込み発行するという作業と全件分の印刷経費も管理会社側の新たな負担となりました。

そしてこの案内をした後の対応がまた管理会社と理事長双方の大きな負担になるのです。

管理会社は毎年、法に基づき委託契約の「重要事項説明」を行っており、その中にこの「管理費等保証制度」についても触れていますが、多くの方はよく理解されていないように見受けられます。

ですので、毎年9月頃にこの保証制度の更新を管理組合へご案内することになるのですが、理事長というのはだいたい毎年交代するマンションがほとんどなので、毎年違う人に制度の話を一から説明することになります。

それでも昨年までは紙の証明書と受領書がありましたから、説明した上で証明書を渡し、「この受領書に署名捺印お願いします」で済んでいました。

しかし、今年は案内書面に「昨年まで発行していた証明書に代わり、オンラインで・・・」などという説明がついていても、目にした理事長は昨年のことなど知らないでしょうから恐らく何のこと?ってなるのではと案じていましたが、その通りになりました。

協会のサイト上にある管理会社専用ページでどのマンションが最後の確認クリックをしてくれたかわかるのですが、案内を送付して半月後に確認したら処理をしてくれたのは全体の5分の1以下でした。

理事長への案内には、「ネット環境が無い方は昨年同様紙の証明書を発行しますので、その際は管理会社までご連絡お願いします。」としておいたのですが、マンションには高齢者の理事長も多くやはり「私はインターネットとか全くわからん」という連絡をしてくる方が続出です。

それでも、こうして連絡してくれれば次のアクションに移せますが、サイトにアクセスしない、連絡もくれないという理事長が大半で、こうした方に対しては、改めて連絡をしなくてはなりません。

管理会社も面倒ですが、理事長も「自分でやってください」という内容なので、後でいいか。とそのままになっているのではないかと思います。

先も述べたように、結局のところオンライン化によって業務が効率化できたのは管理業協会だけであって、管理会社や理事長は余分な業務が増えた形になりました。

この保証制度の組合への案内の仕方については、課題が多く浮かび上がったので、来年からはやり方をよく考える必要がありそうです。

世間のあらゆる物事が急速にオンライン化されていますので、それは致し方ないと思いますが、マンション管理の仕事はマンション管理会社だけでは完結しない物ばかりで、なかなかデジタル化が進まない業界でもあります。

社会全体でもう少しマンション管理の様々な業務への理解が進むことを願うばかりです。





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