埼玉県羽生市の建福寺。東武伊勢崎線の羽生駅からほど近い場所に、それはある。
田山花袋の『田舎教師』に登場する主人公・林清三のモデルとなった人物、小林秀三の墓である。
私にとっては、『田舎教師』という作品は、20代の終わりころ、明治後期の青年たちが、雑誌を発行しては寄贈したり文通をして「投書家交際」を行なって、地方文壇の付き合いが活発に行われていたこと―「誌友交際」のネットワーク―に気づく重大な示唆を与えてくれた作品でもある。
舞台となった行田の図書館には、実は小林秀三の関係資料や、石山機山のモデルとなった石島薇山関連の資料もある。それを使って、論文を書いた。
もう7,8年前になるだろうか。
ある夏、群馬の実家に帰省しようとした折、ふと思い立って東武線の途中で下車して、墓参りに訪れた。歴史研究というのは亡くなって反論したくても出来ない人を取り上げてあれこれ書くことになるので、せめて論文で書いた人のお墓は、できるだけお参りしたいと思うからだった。
小林秀三のお墓の脇には、作中に登場する文を刻んだ碑も建てられている。
墓参りを終えたあと、それから羽生から秩父鉄道に乗り換えて、行田市まで行き、行田の街の中を歩いた。「田舎教師」にちなんだお菓子などもあることを知った。
そういえば最近出たらしいこの本、まだ読めていない。早く読まなければ。