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帝国図書館官制公布の日は国会図書館開館記念日ではない

拙著『帝国図書館――近代日本の「知」の物語』をお読みくださった皆様に厚く御礼を申し上げます。
本当にありがとうございます。

去る4月27日は帝国図書館官制が公布された日でした(明治30年)。

SNSでもこのことを紹介する投稿が散見されました。

もちろんそれは良いのですが、なかにはちょっと「ん???」と首を傾げた投稿が複数ありました。それは帝国図書館官制公布に因んで4月27日を「国会図書館開館記念日」としているものです。

以前、このような記事を書きました。

拙著をお読みいただいた方にはご理解いただけると思うのですが、結論はタイトルに書いた通りです。4月27日を帝国図書館官制公布=国会図書館開館記念日は不適当だと思います(なお、1日取り違えて4月26日だと言っている投稿もありました)。

もっとも端的な理由として挙げられるのは、国立国会図書館自身が、開館記念日は6月5日だと公式に言っていることです。これは、近年、毎年ツイートされているようです。

国立国会図書館の沿革を見ても、4月27日だけが特別視される理由は、よくわかりません。

帝国図書館と国立国会図書館との関係からいっても、帝国図書館は国立国会図書館の源流の1つに過ぎず、帝国図書館の記念日をそのまま国立国会図書館の記念日にするのは、ちょっと考えにくい気がします。

確かに、インターネット上にある「今日は何の日か」を紹介するサイトに、4月27日は国会図書館開館記念日だと書いてあるものがあります。しかしこの根拠はありません。裏が取れていない不確かな情報といえるでしょう。

せっかくなので吉川弘文館の『日本史「今日は何の日」事典』も見ましたが、4月27日は帝国図書館官制公布(東京図書館を帝国図書館に改称・拡充)としていますが、開館記念の日とは書いてありません。

官制が公布され組織が出来ることと、開館して実際にサービスが開始されるのが同じ日だとは限りません。

東京図書館が帝国図書館に改組されたときは、名前が変わっただけで、前からの建物をそのまま使っていました。

現在の上野にある国際子ども図書館の建物は、明治30年に組織として帝国図書館が出来てから、改めて本格的な建物を作ろうということで計画され、建てられたものです。そしてその第一期工事が完成し、蔵書などを移して開館式が挙行されたのは明治39年(1906)の3月20日のことでした。

ネット情報を鵜呑みにして記念日を間違ったからと言って、これで社会が混乱に陥るとか、誰かの安全が脅かされるとかいうことはないでしょう。「図書館の記念日がちょっと間違っていたからといって大したことではない」と言われると、そうかもしれない。けれど、間違ってることが明らかなことをインターネットで全世界に発信しても良いかと言われたら、どうでしょうか。

あまりガミガミといって「図書館記念日警察」のように思われてしまうのは不本意なのですが、記念日だから図書館に行こうというのではなくて、別に記念日とかを気にせずに本が愛され、図書館が活発に使われる、そんな世の中が望ましいのだろうと考えます。

※あとこれはあくまで個人的な趣味ですが、文章上において国立国会図書館を国会図書館と略すのがあまり好きではありません(『国書総目録』が紙幅の都合から「国会」と書くのは許容できるけど、略したければNDLにした方が良いと思う派です)。とはいえ私も、会話の場合、意識していてもあまり貫徹できていないことがあり、あとで「しまった」と後悔するのですが。

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