近代文語文読解練習のはじめに
難しい字をしって解読しがたい古文を読むというのは福沢諭吉的には「学問」ではないのだが、一方で「人間普通日用に近き実学」に「万国古今の有様を詮索する書物」としての歴史はあるのである。
「平家物語」があれほどのアニメに、鎌倉殿の13人があれだけのドラマになったのは、たぶん「平家物語」や『吾妻鏡』がちゃんと現代語訳されてきたからだろう、という話を先日友人とした。
明治の文章というのは、現代語訳がちゃんとされていないものがほとんどであり、あるいは現代語訳があったとしても、明治時代の専門家が現代語訳したものを見つけ出すのはなかなか困難な状況にある。
それは私含めて明治史研究者が、平安時代みたいな古文の知識を必要としないでも文章が読めると思ってきた点に起因するのだと思うが、授業で教えていると、年々読めない人が増加傾向にある。しかし、日本の近現代史で卒論を書いて大学で勉強したといって、たかだか100年前の文章に歯が立たない人を目をつむって卒業させてもよいものだろうか。
それだとまずいのではと思って、ゼミで資料を作って、演習で『米欧回覧実記』を根性で格闘しながら読んでいる。それでも苦手な人の補助教材として、青空文庫などのなかから文語文を選んで私なりに読み方を説明していく近代文語文の読解練習を少し進めてみたい。
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