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「本心」という幻想――自身を暴力的に扱わないことで得られる自由について

 数日前に、心の中の「自然現象」というエントリを書きまして、そこでは心内に「自然現象」のように勝手に生じてくる感情や気持ちというものを、「私そのもの」だと思い込んでしまうことで、人生がつらくなってしまうということはままあるものだ、ということを述べました。

 本エントリは、こうした事態の背景にある構造をより深く分析し、その上で、それに対する一定の処方箋も示す有料記事です。具体的には、「自然現象」のようなものである感情や気持ちを「私そのもの」だと思い込んでそれと同一化し、苦しみを増やしてしまうという事態の背景には、タイトルにあるとおりの「本心」という幻想が、大きな要因の一つとして機能していることをまず指摘します。続いて、そのような幻想にとらわれて人生でしんどい思いをしないために、私たちが採用できる実践的な方法をいくつか紹介し、最後にそうした実践を通じて立ち現れてくる人生の風光が、「気持ちを丁寧に感じることで、気持ちにとらわれる必要がなくなる」というものであることについて述べます。

 なお、本記事で述べられる「心の性質」についてですが、私は心理学者ではありませんので、ここでのそれは、あくまで私自身のバックグラウンドである仏教研究や瞑想実践の立場から分析され語られるものであることは申し添えておきます。ご購読の際は、その点に関しては事前の了解をいただけますようにお願い申し上げます。

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