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これを深刻だと感じないことが深刻だ

 お休みをいただいていたのでリアルタイムの言及はできなかったのだが、先月に大きな話題となったことの一つに、野田佳彦・元総理大臣による、安倍晋三・元総理大臣に対する追悼演説があった。私の見るかぎり、その演説の内容に対する評価は多くが好意的なものであって、普段であれば旧民主党系の政治家の言説については辛口の意見を述べることが常であるような人たちも、こと本演説に関しては、ほとんど手放しといってもよいほどの称賛をなしていることが(とりわけ一部SNS等では)少なくなかったようである。

 ただ、私自身の本演説に対する所感を述べるなら、たしかによく練られた内容(と語り)であり、聴衆に訴えかける力をもった優れた演説であったとは思うけれども、同時に「ここは全く承服できないな」と感じた部分もないではなかった。そして、そのように私が承服できないと感じた、まさにその部分について、ウェブ上では多くの人が高い評価を与えている様子を目にして、「これはなかなか厳しいなあ」と、またも思ってしまったのである。

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