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「なりたい姿」の光と影

 わとりんさんとツイキャス対談。VRChatという(たぶんまだ多くの人が)よく知らない世界について、「現場」からの生々しいレポートをしていただき、思ったとおりの刺激的な時間となった。

(※録画視聴パスは2月1日の記事もしくはマガジンより取得できます。)

 タイトルにある「性的な多様性」については録画をご参照いただくこととして、それ以外でとくに印象に残ったのは、やはりVRCにおけるブロックにまつわる話である。

 VRCの世界では、人々が美少女などのアバターをまとってコミュニケーションするわけだが、そこでブロックされてしまうと、その人はブロックした相手の世界から完全に「消失」してしまう。もちろんブロックされた人からも相手のことは見えなくなるから、やたらとブロックされるタイプの人がパブリックのワールドに行くと、普通なら20人くらいのアバターが見えるはずの空間に、5人くらいしかいないように見えたりするらしい。

 なんだかちょっと『ドラえもん』の「どくさいスイッチ」を思い出してしまうような話で、微妙なディストピア感が漂っているような気もしないではない。しかし、わとりんさんによれば、だからこそVRCの世界におけるブロックはツイッターほど気軽なものではなく、人々はコミュニケーションにおいて多少のコンフリクトが生じたとしても、決定的な関係の破綻には至らぬように、互いに配慮する雰囲気があるとのことだ。

 逆に言えば、そういう環境で、それでも被ブロックが多発する人というのは、相当に悲しい状態にあるということで、それはわとりんさんのnoteに端正な文章で活写されているとおりである。

 VRCは若者たちを中心とした先端的な技術の実験場であると同時に、「そこに行けばいつでも友人知人と気軽に話せる」ということで、いわゆるメンヘラの人たちや、職がなかったりなどして社会的・経済的に苦しい状況にある人たちも、長時間リラックスして滞在できる憩いの場になっているらしい。

 既述のように、VRCでは参加者の各々が美少女などの「なりたい自分」のアバターをまとってコミュニケーションするから、現実世界のように容姿や身分で最初から選別されるということは比較的起こりにくい。

 そのことは、おそらく多くの人たちにとって福音に他ならないだろうけれど、他方で「なりたい姿」になってみたら自分の「人間の中身」が否定されてしまうという経験をする人たちもいるわけで、それはなかなか厳しいことだろうなあと、まさに「VRChatの楽しさと孤独」をひしひしと感じてしまう対談の夜となったのであった。

(※このあとに文章はありません。)

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