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DinoJr. 3rd Album 『NO MAN IS AN ISLAND』 セルフライナーノーツ

こんにちは、DinoJr.です

この度、自身の3rd Albumとなる『NO MAN IS AN ISLAND』をめでたくリリースする運びとなりました。
曲ごとに一口エピソードとかちょっとした裏話とかそういうオマケがあったほうが聴いていて面白いよなと思うので、よかったらこちらと併せてアルバムをお楽しみください。

【 楽曲解説 】

01. No Man Is An Island

アルバムのイントロを担うこちらの表題曲は今回一番最後に作りました。暗い湖面を夜明けの空に向かってひとり、ゆっくりとオールを漕いでいくようなイメージです。一面に塗りたくったようなどろりとしたアナログシンセの音がお気に入りです。

人生で何度か辛い別れを繰り返すうちに心の防御策として、別れの際に生じるやり場のない寂しさを、新たな旅立ちへの強い希望に無理やり変換してしまうという良いような悪いような思考グセがついてしまいました。笑いながら泣いているかのような、希望と絶望がないまぜになったアンニュイな色合いを表現できた気がします。
都度訪れる寂しさや虚しさに対して、痛みを誤魔化さずに素直に受け入れることも時に大事なことなのかもと最近は少しだけ思います。

02. Y.O.A.K.E

昨年2021年の夏、大切な友人のために書いた曲です。曲調としては往年のプリンス・ファンクをわかりやすくオマージュしたもので、シンセベースとサンプリングしたスラップ音を組み合わせることによって、絶妙に時代感を跨ぐハイブリッドなポップサウンドを作ることに成功しました(そしてこれに味を占め、この手法がアルバムで乱用されることになります)。
それ以外にもコテコテの80年代サウンドにトラップビートやオートチューン、ラップを組み合わせてみたり、自分なりの時代感のクロスオーバーを実現できた個人的にとてもポイントの高い曲となりました。

『夜明け』という言葉は歌のテーマとしてこれまで何万回と使い古されてきたワードですが、普遍的な希望の象徴としてやはりこれ以上に力を持つ言葉はないなと歌っていて感じました。不思議なパワーを持つ曲になったと思います。

03. Eh ft. SOMAOTA

このアルバムのなかでもダントツに難産だったのがこの曲です。カオティックな変則ビートと呪術的なスティールパンの響きが聴く者を地獄の釜の底に引き摺り込むような曲ですが、個人的にはベースラインの完成度の高さを自分で褒めたいです。
この曲は江戸時代末期に起こった「ええじゃないか」と呼ばれる狂乱的民衆運動からインスピレーションを受けモチーフとしています。大衆が理性を失い社会があらぬ方向に暴走するさまは形や規模は違えどコロナ禍真っ只中の現代の空気に通ずる部分があるなと感じ、生きづらさ、閉塞感、そしてある種のトリップ感を表現しようと敢えて荒削りに無秩序に言葉を散りばめました。客演のSOMAOTAによるビートを俯瞰するような浮遊感のあるフロウ、皮肉と洒落の効いた小気味よいワードセンスがこの曲の快楽的そして退廃的なムードをさらに盛り上げてくれています。

ちなみにぼくはこの曲のせいで作曲ノイローゼ地獄に陥り半年間ぐらいプロジェクトファイルが開けないレベルまで病みました。ほんとに完成してよかった…。

04. Flying Sushi

ある時期、作ろうとしているトラックや楽曲はどんどん進化しているのに、持っている歌詞の語彙がどうしてもマッチしないスランプに陥り、「既存の言葉がはまらないなら生み出しちゃえばよい」というある種開き直りのマインドでただただ思いついた言葉を並べていった結果誕生したのがこちらの迷曲です。この曲をきっかけに(主に歌詞の点で)制約を自由に越えていく感覚を掴めたので、奇妙な曲ですがとても大事な一曲となりました。
ロケットや宇宙というSF的な世界観は楳図かずお先生の『14歳』という作品からインスピレーションを得ています。

この曲を楽しんでもらえたらあとの曲は大体いけると思うので、DinoJr.の世界観の踏み絵的存在としてこれからも堂々と鎮座してくれることでしょう。

05. WNDRLND

この曲はもともと某若手アーティストに提供する予定でトラックを作っていたのですがその話が流れ、もったいないので自分で使っちゃうかと思ってアレンジしなおしたものです。
楽曲提供するにあたってちゃんとポップに作ろうと意識していたので、骨組みがしっかりしている分ある意味変なこともしやすくて作っていて楽しい曲でした。

「イケてるハウスを作ろう!」というコンセプトがなんとなくありましたがぼく自身がハウスを乗りこなすタイプの人間ではないので、自然と”ライブハウス・クラブに来てみたけどなんか場違いで浮いてるやつ”目線のオタクくさい歌詞になってしまいました(『屍・パーティ』というイケてる曲に絶対出てきちゃいけない伝説のリリックが登場します)。

06. Magic Hour

あれは数年前、ちょっと可愛いなと思っていた女の子と二人で夕方の街を歩いているとき、空がちょうど鮮やかなオレンジと紫のグラデーションに染まり、その子がふいに『空がこういう色合いに染まる時間帯のことをマジックアワーって言うんだよ』と教えてくれて、そっかぁ…となったときの思い出をもとに書きました。
歌詞は不思議の国のアリスを一部モチーフにしており、マジックアワーの夕焼け空よろしく"ファンタジーはいつか終わる"というやるせないペシミズムが、精一杯のポップさの端々から覗いています。

ちなみにこの曲は盟友であるBREIMENの高木祥太(Ba./Vo.)がめちゃくちゃイケてるベースを弾いてくれています。結構とんでもないベースラインなのでベースフェチの方は正座して聴いてみてください。

07. Whales ft. ayafuya, Kingo

このアルバムの中で唯一の共作名義となったこの曲は、ぼくとデュエット相手であるayafuya a.k.a オオツカマナミの持っていた曲のアイデアをガチャンとくっつける形で誕生しました。
ぼくが仮で作っていたトラックとくじらが深海で泳いでいるイメージが先にあり、そのコンセプトをayafuyaに伝えてリレー形式で歌詞を書き上げていきました。
ayafuyaの耽美的な歌声が、静けさと畏怖が同居するトラックに溶け合う面白い曲になったなと思います。

そして衝撃の後半パートでは若きバイリンガルラッパーであるKingoを召喚し、音を存分に切り刻んでもらいました。もともと後半はラップかサックスを入れたいとずっと考えていたのですが、Kingoは歌詞やコンセプトを彼なりに咀嚼しそのアンサーをもって知性ある素晴らしいラップを吹き込んでくれたので、そのおかげで文脈的にも完成されたなと思うし、あらゆる意味で彼に声をかけて大正解だったなと感じています。

08. Skin

夏の暑い日に書いた曲です。当時Luke Titusという海外のアーティストの楽曲に面食らい、自分でもなんとかテイストを取り入れてみたいと考えあれこれ試行錯誤するうちにかなり尖った構成の曲になってしまいました。
完成した当初は「こんなもんアルバム曲としてでしか世に出せないだろ」と思っていたのですがエンジニアのReinoldsさんにシングルとしてリリースすることを提案され、半信半疑で出してみたところ予想以上に多くのプレイリストに入れていただき、世の中ってわかんねぇなと思わされた次第です(ちなみにそのあと調子に乗って”Flying Sushi”をシングルリリースしたところ、まさかのプレイリスト入りなしという皮肉のような結果となりました。なんでだよ!)。

コード進行やリズム、あらゆる点でしっかり挑戦できた曲となったので今では大のお気に入りです。ある意味今の作風の基盤になった曲と言えるかもしれません。

09. Bingo

リスペクトするD’angeloやPrinceの作風をオマージュした一曲です(これは持論ですが彼らの影響を公言するアーティストには大体一曲こういう勝負スローバラードがあります)。
最初はラブソングを書きたいと思っていたのですがぼくがあまりにも恋愛から遠ざかりすぎていてなにを書いても薄っぺらくなってしまい、夜中に歌詞を降ろすために町を徘徊する日々が続きました。結局ラブソング的な歌詞は一向に生まれず、だんだん「自分はなんてダメなんだ」というBADモードに入ってしまい、膨れ上がった悲しさや虚しさ、ひとりで歌を歌い続ける孤独をそのまま歌詞にすることにしました。
ただ歌詞を書いているうちにそのメロディの美しさに自分で感動してしまい、最終的にはしっかりと明日への希望が示唆されています。

ちなみに”Bingo”というタイトルの由来は、ぼくが知り合いの結婚式の二次会に出席した際ビンゴ大会が催され、景気良く4リーチまでいくも結局ビンゴには至らず、「なんかおれの人生みたいだな…」と暗い気持ちでトボトボ帰ったときの思い出をもとにしています。

10. Last Beach

メインのコード進行とハーモニーがとにかくお気に入りの曲です。
トラックができて歌詞を考えている時にちょうど友人のSSWであるさらさから電話が来て「歌詞を書きたいけどひとりだとサボってしまうので電話を繋いだまま書かせてほしい」とお願いされ、じゃあお互い頑張って歌詞書きますか〜と通話モードのまま作業に取りかかった思い出があります。
さらさに「このトラックから想像するイメージを教えてほしい」とお願いしたところ「場所はどこかアメリカの観光地で〜、ピンク色の空で〜、なんか牛が宙を舞ってる!」という言葉をもらい、面白かったのでそのまま採用してしまいました(さらさに歌詞の権利料を分配するべきかもしれません)。

SF映画的な世界観と、爽やかかつどこかサイケでノスタルジックなサウンドが作れて地味ながらかなり満足度の高い曲となりました。

11. Mmm (interlude)

ぼくは曲のアイデアができると簡単な鼻歌の弾き語りでiPhoneのボイスメモに吹き込むようにしているのですが、今回はぼくのあまりかっこよくないパーソナルな部分も全部出したいと思い、敢えて鼻歌のままアルバムに収録しました。

ラストの”Sayonarakun”につながる音として自宅のドアをノックする音を録って入れました。いいテイクが録れるまで何回かやり直したので、近所の人に怪しく思われてないかちょっと心配です。

12. Sayonarakun

アルバムを通して最後にこの曲に到達したとき、「結局これを聴かせるために用意されたアルバムみたいになったな」と思いました。多分こんな曲はもうこれから書けないし、これを書くにあたって散々しんどい思いをしたのでなるべくもうそんな苦行は繰り返したくないのですが、良くも悪くもいまこの現状の自分がすべて詰め込まれた生涯忘れられない一曲になりました。
仲違いや失恋、死別による誰かとの別れ、卒業や転職に伴う環境との別れ、そのほか精神的な別れ…全ての別れの概念を『さよならくん』として擬人化し、人生のあるタイミングでさよならくんが部屋をノックしにくる、というストーリーで歌詞を書きました。

さよならくんが部屋をノックしにくるとき、ぼくはうんざりし、絶望し、これからやってくる悲しみの波に耐えなければならないという辛さを毎回味わわされるのですが、ある時実は別れとは新しい自分への出会いのチケットでもあるということに気がつき、そこからはさよならくんのノックの音に対しても「ああ、また来たのね」とすんなりポジティブに受け入れられるようになったなと感じます。

さよならくんはたとえ自分が本当に独りになったとしても最期の瞬間まで逢いに来てくれる最高の友人であり、結局さよならくんとは、これから生まれ変わっていこうとしている自分自身の姿そのものなのかもしれないなと思います。


▼ RELEASE INFO ▼

DinoJr. 3rd Album

 『NO MAN IS AN ISLAND』

11/16(水) RELEASE

  1. No Man Is An Island

  2. Y.O.A.K.E

  3. Eh ft. SOMAOTA

  4. Flying Sushi

  5. WNDRLND

  6. Magic Hour

  7. Whales ft. ayafuya, Kingo

  8. Skin

  9. Bingo

  10. Last Beach

  11. Mmm (interlude)

  12. Sayonarakun

各種サブスクリションサービスにて配信中!
https://ultravybe.lnk.to/nomanisanisland


▼ LIVE INFO ▼

DinoJr. 3rd Album『NO MAN IS AN ISLAND』
RELEASE ONEMAN LIVE

日時 : 2022年11月26日(土)
会場 : 渋谷TOKIO TOKYO
開場/開演 : 19:00/19:30
前売/当日 : ¥3,500/¥4,000

■ BAND MEMBER ■

Bass : オオツカマナミ
Guitar : イシイトモキ
Keyboard : 市川空
Drums : So Kanno (BREIMEN)
Chorus : mitchey

Special Guests

高木祥太 (BREIMEN)
吉田沙良 (モノンクル)
碧海祐人
リベラル a.k.a 岩間俊樹 (SANABAGUN.)
SOMAOTA (Black Petrol)
Kingo
ayafuya

▼ チケット購入ページ ▼
https://hype-ticket.stores.jp/items/631aedb1c36dbe23897c5b15

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