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⑦ノイローゼ

発達障害疑いの後輩に苦戦していたころ、自分はノイローゼ気味で、周囲の人に迷惑をかけていた。

子供つながりで知人ができ、何度か飲みに行っていた。彼女はとても人当たりのよいからっとした人で楽しい人だった。彼女も会社員で比較的自分と近めの職種だったので、会社の後輩について何度も聞いてもらっていた。「発達障害かもしれない同僚がいてさ~、今日もこんなことやらかしたんだよ」という、相談というより愚痴だったと思う。

その日も、後輩の起こしたとんでもない問題について話を聞いてもらっていたが、話がひとしきり落ち着いたときに、彼女からも愚痴が出てきた。
彼女の職場に40代の中途社員で使えない女性がコネで入ってきたという愚痴だった。自分より先輩なのに何もできなくて、仕事のやり直しが多く困っているという内容だった。彼女は「40代はだめだね」と繰り返して言った。

その時自分は「年代によらずダメな人はいるよね」と返したが、彼女は「40代はほんとだめだよ」と念を押すように言った。違和感が残ったが、その場ではその意味が分からなかった。

そのあと、彼女は私の年収を聞いてきた。私はちょっと戸惑ったが大体の額を教えた。すると、彼女は「ふーん、そうなんだ」と言って話を終わらせた。なんだか感じが悪い。そう思った。


数週間後、仕事上がり後に彼女が私たちを自宅に招いてくれた。新居でおでんをご馳走してくれるとのこと。
仕事が終わって子供と一緒にお邪魔をすると、部屋が恐ろしく散らかっていた。テレビでよく見る汚部屋からごみ袋を抜いた状態で、足の踏み場がなかった。テーブルに着くように言われた。

彼女「これからつくるね」

私「!?(これから?)」

おでんを夜7時半からつくるのか…。食べるのは何時だろう。子供もいるし明日も仕事だし…。テーブルの上の輪ゴムやヘアピンを片付けながら、私は面食らった。

私「いつもおでんをこの時間から作るの?」

彼女「そうだよ。でも、買ってくることのほうが多いかな」


その時ピンときた。彼女もADHD気味なのかもしれない。だから、私の愚痴を聞いて腹が立ったんだと思った。あの人当たりの良さ、このぐちゃぐちゃの部屋、落ち着きない彼女の子供、芸術関係の優れた仕事ぶりも。

なんども「発達障害かもしれない同僚が仕事ができてなくて困っている」というべきではなかった。発達障害でも発達障害でなくても、仕事ができない人はいる。ただ、分かり合うのが難しいことを理解してもらいたくて、発達障害と気軽に言ってしまっていたことが、彼女を傷つけていたに違いない。

それから彼女とはあまり話していない。謝るのは違うし、やられっぱなしで丁度いいのだと思う。

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