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お耳が欠けている「さくら猫」とTNRの話

保護猫カフェや道端で見かける猫で、耳が桜のように欠けている猫を見たことはありませんか?

これは通称「さくら猫」と呼ばれ、不妊去勢手術が済んだ猫として耳の一部がカットされています。

「耳をカットして痛くないの?!」
「なんだかかわいそう……」
「なんで不妊去勢手術をするの?」

そんな疑問を持つ方も多いと思います。

今回はそんな「さくら猫」をテーマに、猫の不妊去勢手術の必要性やTNR活動について紹介していきます。

何で耳をカットしてる猫がいるの?痛くないの?

先ほども書いたように、「さくら猫」とは、不妊去勢手術が済んだ印として耳の一部がカットされている猫の愛称です。保護猫にもさくら猫は多いですが、特に「地域猫」として暮らしている猫の多くはさくら猫であることが多いですね。(「さくら猫」は2012年にどうぶつ基金と雑誌「ねこ」が共同で命名)

不妊去勢手術の麻酔が効いている間にカットするので痛みはありませんが、それでもわざわざ耳をカットするのには理由があります。

それは、猫をもう一度捕獲しないため。

「間違えて捕まえても逃せばいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、猫にとって人間に捕まることはすごく怖いことなので、間違えて捕まえると猫へのストレスや人間への恐怖が生まれてしまいます。そのため、何度も捕まえてしまうことを避けるための“目印”として耳をカットしています。

(余談ですが、性別を判別するためにオスは右耳、メスは左耳にカットを入れます。)

サラッと出てきた「地域猫」ってなに?

地域と共存する猫たち

地域猫とは、特定の飼い主を持たず、近隣住民が共同で管理(※)している猫のことです。地域住民と一緒に暮らしている野良猫、といえばわかりやすいでしょうか。(※明確な定義はありませんが、頭数や個体識別がある程度されている状態を指します。)

一般的な野良猫とは違い、住民が猫を管理しているので、人の暮らしへの悪影響も起きにくいので、大きな保護施設をつくりにくい日本では、保護猫活動の主なやり方のひとつとされています。

TNRとは?

地域猫と合わせてよく聞くのがTNR活動。Trap(捕獲して)Neauter(​​不妊去勢手術を施し)Release(自然へ返す)の頭文字をとってつくられた言葉です。

最近では、TNRM(Management・管理)という概念も出てきました。これまでのTNRだけでは、地域猫とするには不十分で、自然へ返し(Release)た後の猫や近隣住民の暮らしに悪影響が出たためです。

自然へ返した後に、適切に管理(Management)することで、人と猫との共生関係を築いていこうという意図が込められています。

TNRのメリット

「猫を捕まえて手術するのはかわいそう」と思うかもしれませんが、意味なくやっているわけではありません。

現在日本における殺処分の7割ほどは、野良で繁殖した仔猫が占めています。なので、野良猫への不妊去勢手術が殺処分数を減らすことに寄与しています。

また、施設の広さや人手が足りない日本の保護猫活動において、地域の手を活用するTNR活動は理にかなっています。

不妊去勢をすることで猫同士のケンカやそれに伴う怪我や病気の防止にも繋がります。

TNRのデメリットと課題

TNRは仕組みとしてのデメリットはあまりありませんが、捕獲による猫への負担はもちろん、捕獲する側である保護猫団体への負担も大きいです。保護猫団体にとっては、後継者問題と併せて今後の課題と言えるでしょう。

とはいえTNRも完璧な取り組みとは言えません。猫と人、両者への負担が大きいことに加え、不妊去勢手術を行なう獣医師が限られていることもTNRが普及しきらない要因のひとつです。

実際に捕獲する人、手術をする人、術前術後の管理をする人、リリース後に見守る人。さまざまな立場の人の力を借りながら活動していくことが求められています。

TNRは本当に猫の幸せか?neconoteが考える「猫と人が共生できる社会」

TNR活動は殺処分減少に大きく寄与していますし、猫個体の視点で見れば健康の担保にも繋がっていると言えます。

しかし、他の動物の生殖本能に介入することが本質的な解決策なのか?という問いは忘れてはなりません。

殺処分などの社会課題という大きな問題に対しては、最初から“本当の正解”を見つけることが難しいからです。

では、TNRが本当の正解ではないとしたらどうすればいいのか?その答えは誰も持っていませんし、ましてや実践もできていません。

だからTNR(できる範囲でM[管理]も)を続け不幸な運命を辿る猫を減らしつつ、猫と人間が真の意味で共生できる社会ってなんだろう?それはどんな風景だろう?と考え続けていきたいですね。

<執筆=黛>

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