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怨霊鎮魂使 第7話


第7章 北畠翔太は、想いをはせる

 
「まだまだおまえは未熟だから、くれぐれも一人で弁慶の霊を召喚するなよ」

 じーちゃんは俺にそう言い置いて、えらいド派手な衣装を着こんで外出した。
 今日は仲良しのじーさん・ばーさんグループで、カラオケ用の大広間を貸し切るようだ。大声で歌うことはストレス解消になって健康にもええからの、じーちゃんがカラオケに行くときの決めゼリフだ。だけど、今日はそのセリフのかわりに、さっきの言葉を残していった。

 頼むから、大声で力み過ぎて血管プチってやんないでくれよ。
 土曜の電車に三十分も揺られて歌いに行くんだから、ある意味、生きがいなんだろうな。
 俺の生きがいであるサッカーは、今日はない。ちくしょー、中間テストが何だっちゅうんだ!
 机に向かい、参考書を開くも、なかなか集中できない。
 クソっ、シュートする時の方がよっぽど集中できるよ、と悪態をつきながら俺はがばりと机上に伏す。結局こんなふうにグタグタしながら夕方を迎えていた。

 ふと、橋本希美の顔が頭の中に浮かぶ。
 ちょっと気が強い女子だ。
 ちょっとどころじゃない、相当気が強い。周囲の波にのまれない確固たる自己みたいなものを持っている奴だと思う。いつもクールに構えている。油断なんてみせない女子。

 だけど……。
 空想していた――。ネコみたいな瞳で。

 今までも、どことなく目に留めていた女子だった。だけど、今回のことで、なんか超気になるようになった。

 交渉士なのだろうか――?

 それもあるけど、そのことを尋ねたときのあいつの慌てぶりが、いつも彼女がかもしだす雰囲気からかけ離れていて、凄くギャップがあった。

 もしもあいつが怨霊鎮魂使の血を継ぐ者で、交渉士だったら、一緒にやっていける気がする。別に確固たる理由があるわけじゃないけど、何だろう、あいつとだったら何となくスッと腑に落ちるんだよ。

 え? 何、この感じ。

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