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怨霊鎮魂使 第10話


第10章 橋本希美は、疾走する
 

 嫌な予感がする。びんびん、する。

 さっきから、いつもと違う何かを感じとってしまう。ナニこれ?
 呼ばれている、そんな感覚を抱く。
 行かなきゃいけない、と使命感みたいなものがムクムク湧いてくる。

 これって、北畠翔太がわたしに訴えかけてきた時の感情に近いのかな。
 先祖うんぬんって、気持ちを吐露してたあいつは、ひょっとして同じ家業の血を継ぐわたしにだからあんなにも必死になってたのかな。

 だったら、わたし……逃げちゃった。

 すっごくサイテーだ。北畠の声を聞こうともしていなかった。
 将来の進路としてカウンセラーもありだなんて考えていた自分が恥ずかしい。あんなにも懸命に想いを伝えようとしていた北畠の話に、まったく耳を傾けなかった。

 わたし、わたし……――行かなきゃ。想いを受け止めにいかなきゃ!

 遠くから、まるで時空の向こうから、声がほのかに、届いてきた。
 これは、北畠翔太の声。あと、知らないオジサンの野太い声。誰? でもどこか聞き覚えがある気もする。

 ――おまえか、それがしを呼んだのは。

 それがしって、あんたは誰だよ。何、時代劇みたいなしゃべり方してんのよ。

 つか、声が脳内に直接響いてくる。

 足を浮かせている、腕を振っている。

 いつしかわたしは、風を切り、疾走していた。
 北畠翔太の家を目指している! 彼の家はわりとここから近い。美晴の情報収集がまさかこんなときに役に立つなんて!

 血が騒いでいる!
 先祖から受け継いだこの職務をまっとうしたい、ってわたしも今そう思ってるよ!

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