見出し画像

目標を高くするということ

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今週は壽田が投稿致します。
 今回は「目標はできるだけ高く設定しよう」という話です。このように聞くと、「またあの話だな」と思うかもしれませんが、とても大切なことですので、改めて見ていくことに致しましょう。是非、最後までお付き合い下さい。

高い目標を敬遠するのは日本の文化⁈

 「高い目標」と聞いて、あなたはどう感じるでしょうか。私がお会いしたマネジャーの多くは目標を引き上げることについて、「拒絶」にも似たような反応を示します。マネジメント改革では、「高い目標」は不可欠ですので、あの手この手で高い目標を設定していただこうと働きかけますが、なかなか決断に至りません。しかし、このマネジャーの性向を責めることはできません。日本の文化には、高い目標を敬遠する傾向があり、マネジャーになったからと言っていきなり変えることは困難だからです。
 これについては、文化の多様性、組織文化の世界的大家であるオランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士の調査を引用しましょう。博士はIBMの世界40カ国11万人の従業員に行動様式と価値観に関するアンケート調査を行い、人の価値観が文化によってどのように変わるかを6つの次元(切り口)で示しました。その調査によれば、日本は不確実性の回避度が高い国の一つに挙げられています。つまり、日本人は「これまでと違うとか、よく知らないことは危険である」と捉え、「やってみよう」というよりも、ストレスを感じてしまう傾向があるということです。

それでも高い目標を設定しましょう

 不確実性の回避度が高い日本の文化に抗っても、高い目標を設定することを強く推奨します。大きな成果は自然発生的には起こりません。自ら創り出さなければ実現しない。これについては、著名な経営者たちが口を揃えて言っていますので、彼らの言葉を借りましょう。まず、ユニクロの柳井会長が「最高の教科書」と評する『プロフェッショナルマネジャー 58四半世紀連続増益』の著者、ハロルドジェニーン氏は、「マネジメントの良否は、それが自ら設定した目標を達成できるかどうかで判定され、その目標が高ければ高いほど、良いマネジメントだと言える」とは言っています。また、Googleが導入したOKRという手法でも、アンディ・グローブ氏は、「全員がすぐには手の届かないような目標に向かって努力するとき、アウトプットは伸びる傾向がある。自分自身と部下に最大限のパフォーマンスを求めるのであれば、そのような目標設定はきわめて重要である。」(ジョン・ドーア著『伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法OKR』)と示しています。
 高い目標は、今までのやり方や考え方を抜本的に見直し、組織全体を巻き込んで、知恵やアイデアを出し合い、協力しないとできません。これが人々を鍛え上げ、強い連帯感が生み、これまでにない高い目標の達成を可能にする原動力だと思います。

実例から見る高い目標の効果

 著名な経営者たちの言葉は非常に説得力がありますね。ただ、その一方で、どこか現実味がないというか、特別な経営者だからできたのではないかと思ってしまうかもしれません。そこで、名もなきマネジャーたちの事例をご紹介します。かつて、約200件の企業変革プロジェクトのなかから、無作為に24件抽出して、目標の設定と実績との関係を調べたことがありますので、ご紹介します。その結果をグラフにまとめたのが下の画像になります。

目標図1


 横軸に「目標値の引き上げレベル」を、縦軸に「実績の伸び」をとってプロットすると、見事に右肩上がりの分布になっており、正の相関関係があることが見て取れると思います。これは、目標を現状から引き上げれば、引き上げるほど、実績が伸びたことを示しています。ちなみに、中央の赤い対角線より上にある点は、目標達成を意味しますが、目標達成は、全24件のうち10件にとどまっているものの、成果は大きく跳ね上がることがわかると思います。

成果につながる共通点

 ここで注意しなければならないのは、「高い目標」を設定すれば、必ず成果につながる訳ではないということです。単純に「高い目標」を設定すれば、成果が大きく出るのであれば、業績悪化に陥る企業はないでしょう。ここでは、経験則から得た「高い目標が効果を発動した時の共通点」を整理してみます。マネジメント改革のプロジェクトで成果を上げた高い目標の共通点とは次の4つです。

①目標を達成することに意味を持たせている
 目標値(数字)は感情移入するのが非常に難しいです。単に、「売上を100億円にしよう」とか、「生産性を2倍にしよう」などと言って、「よし、やってやるぞ!」となる人は、組織のなかでごく限られた人だと思います。マネジャーは「なぜその目標なのか」を自分の言葉で言うことで、目標を達成することがどのような意味を持つのかを示す必要があります。例えば、物流業を営む企業のある営業所では、所長の想いを言葉にして、「もう赤字はご免だね。会社のなかでお荷物のような存在も嫌。『絶対に自分たちで稼げる営業所にする』」という意味を持たせて、単月黒字化を目標にしました。
 その後、開設依頼初の黒字化を実現したのは言うまでもありません。特別に刺さる言葉で意味を持たせようとする必要はなく、素直に想いを言葉にして目標達成に意味を持たせるのが肝要です。
 
②目標を決める時に恐れを感じる
 高い目標だからといって、やる前から「達成できなくても良い」訳ではありません。よく「チャレンジ目標だから達成できなくても…」という雰囲気を感じることがありますが、この場合、実績がこれまでの現状を大きく上回ることはないでしょう。高い目標を決め、社長や経営陣に承認を取り付ける、部下に高い目標を設定したことを告げる、このとき、ある種の恐れやプレッシャーを感じなければ、本気で取組もうという精神状態になったとは言い難いでしょう。「達成できなかったらどうしよう」とか「どうすれば達成できるかイメージできない」という状態で設定するのは、目標が正常な「高さ」の証拠です。

③頻繁に意義を口にしている
 年度や四半期など、ある期間が始まる前に目標を設定することは当たり前だと思いますが、「高い目標」が大きな成果を上げるためには、期間中にわたって頻繁に目標を口にする必要があります。例えば、朝礼で目標達成度を共有したり、日報で目標に言及したりするほか、特に重要なのが、上記①で示した「目標達成の意味」を日常会話で使うことです。
 先の物流業の事例では、「まずいぞ、このままではまたお荷物になってしまうぞ」とか「自分たちで稼ぐ感覚を味わいたいよな」などという言葉が頻繁にマネジャーから発せられていました。高い目標を達成しようと思ったら、日常的に話すことで「目標を毎日設定し直す」という感覚で取組むのが良いということでしょう。

④自分の意思で行動を変えられると自負する
 「高い目標」に本気で向き合うマネジャーは、未来の目的に向けて、自分の意思でいつでも行動を変えることができるという認識を持っているように思います。これまでの実績や自分の能力、部下との関係性がどうであろうと、それが未来の目標達成にはあまり関係ありません。環境、前提条件、手法などを大きく変えれば、結果も変わるからです。ところが、マネジャーのなかには自分でコントロールできることが少ないと感じている人も一定数存在します。そんな状態だと「高い目標」はいつまで経っても砂上の楼閣です。まずは、自分の意思で未来の目的とそのための行動を変更してみましょう。

さあやってみよう

 あなたは自分の能力の限界を感じたことがありますか? スポーツの場合には、これ以上速く走れない、とか、これ以上重いものは持ち上げられないという限界を感じられることができますが、仕事の場面においてはどうでしょうか? 具体的に能力の限界を感じたことがある人は意外に少ないのではないかと思います。というのは、自分の能力はこれまで行動したことがあることでしか具体的に感じることができないからです。例えば、営業のプロジェクトで、売上目標を前年比130%以上の水準に設定しようとすると、必ず次のような反応が返ってきます。「前年の売上すら超えられないのに、130%なんてできる訳がない」。でも、やったことがないことについては、能力があるかないかはよくわからないのです。本当にできないかもしれないし、やってみたらできるかもしれない。能力を引き上げるには、これまでやったことがない新しい行動を取るしかないのです。さあ、やってみましょう。

最後に

 いかがでしたでしょうか。今回の記事の目標は、お読みいただいた方に実際に「高い目標」を設定していただくことです。これは私にとって非常に高い目標ですが、本気で高い目標を設定し、それに取組む人が一人でも増えれば、未来は良くなると思います。是非、「高い目標」を設定してみて下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?