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組織のキホン

 いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきまして、ありがとうございます。今回は壽田が担当致します。
 ゴールデン・ウィークに入り、クライアント企業様もお休みですので、私も「熱中する組織」のnoteを読み返してみました。我々のサービス内容や先日出版した書籍『組織に「成長」と「成果」をもたらすマネジャーの教科書』と照らし合わせてみると、「組織」自体について、このnoteではあまり書いていないと思いましたので、今回は、組織の基本について書こうと思います。ほとんどの企業が組織化しているものの、頻繁に組織変更したり、管理職クラスの兼務が多用されたり、配属先をコロコロ変えたりと、あまり組織設計について考えていないのではないかと感じることが多々あります。基本の復習も含めて整理してみますが、長くなりそうですので、お時間のない方は「つまみ食い」でも構いません。しばしお付き合いください。

組織の重要な要素

 経営や組織に関する書籍を読むと、必ず「組織の重要な要素」というのが書いてあります。私も若い時に線を引きながら読んだ記憶がありますが、基本に立ち返って、私なりの解説を加えながら、おさらいしたいと思います。  
 組織を設計する際には次の要素が重要であると言われています。教科書的な内容ですが、日頃実務に追われていると、基本的なことが抜けていたり、よく考えていなかったりしますので、確認という位置づけでお付き合い下さい。ちなみに、以下の分類は、マネジメントと組織行動の世界的な権威であるスティーブン P. ロビンズ教授の書籍に基づいています。

①職務の専門化
 会社組織にはさまざまな仕事があります。営業、製造や総務など職務の内容もさまざまですが、同じ種類の職務でも、単純な仕事もあれば、非常に高度な技術を要する仕事もあります。これらの職務をうまく分けて専門化することで、より成果を上げられるようにしようというものです。
 この専門化はメンバーの能力を活用しやすくなり、歴史的にも実績として生産性を上げてきました。しかし、専門化が行き過ぎると退屈やストレスで成果の低迷や離職につながることもあるので注意が必要です。
 ある設備メンテナンス業の会社は、創業後しばらくは、担当エリアの保守業務のすべてを、一人の担当者が実施しておりましたが、業績の拡大とともに業務をフルで実施する人材の確保が難しくなり、巡回ルート設定、報告書作成、物品管理などのメンテナンス付帯業務を専門のスタッフに任せるようにして、必要な人員の確保と一人当たり巡回件数を伸ばすことに成功しました。職務の要件をどれだけ具体的に洗い出せるかが成功の鍵であったと思います。

②部門化
 共通する業務を一体化してグループにまとめる方法です。営業部や経理部などの「職能」でグループを作ったり、「製品」や「顧客」、「地域」でグループを作ったりします。一定規模の組織になると、必ずと言っていいほど部門化が採用されるようになります。この部門化は画一的なものではなく、職能別に分けた「営業部」のなかに、さらに地域別に「◯◯営業課」があるように、複合的に設計されるのが一般的です。
 ある精密機器販売業の会社では、大口の案件は受注の難易度が高く、異なる業務として、専門の営業チームを独立させています。同一の顧客に大小さまざま案件が存在し、案件の大きさで担当者が異なるため、顧客単位での攻略方法の立案や顧客目線に立った総合的な提案をすることが難しくなっています。この会社の組織的な課題は、顧客との関係構築をベースとした場合、どう部門化するかということにあると言えるかもしれません。

③指示系統
 誰が誰の部下(上司)なのか、誰の指示を受けるのかを明らかにすることです。一定の権限と責任が付与された職位として「部長」や「課長」などが設けられているのが一般的です。権限と責任は互いに見合うものがセットで与えられなければなりません。達成が難しい目標は課されますが、達成するのに十分な人的資源は与えられない、というようなことをよく目の当たりにします。権限と責任のバランスは上層にいるマネジャーが十分に把握しておく必要があります。
 最近は、1on1ミーティングが広く行われるようになり、同じ部署内だけでなく他部署のメンバーとも話す機会が増えています。これは仕事をやり易くする一方で、上司から正式な指示がないのに、他部署のメンバーとの1on1ミーティングをきっかけにして作業を進めてしまうなど、指示系統の混乱にも繋がることが起こっていますので、注意が必要です。

④集権と分権
 どの階層で意思決定をするのかということです。「集権」は、社長など組織の上層部で意思決定するタイプの組織であり、反対に「分権」は、広く現場のマネジャーが意思決定したり、意見を言うことを認められたりするタイプを言います。これらは程度の問題ですので、組織を明確に「集権」か「分権」のどちらかに分けられる訳ではありません。
 ある経営者は、「『権限』の意味がわからん」と言って、ほぼすべての決定を社長自ら行っていました。そのため、メンバーへの指示は、「役割」単位ではなく、「タスク」単位になり、部下は指示されたタスク以上には積極的に行おうとしない行動習慣が身についていました。さらに、タスクの実行確認をする側の社長も、指示したことをすべては覚えていられないため、「あれどうなった」と言われる可能性が低いタスクは実行されない、ということも常態化していました。組織の成長とともに「分権」は必ず通らなきゃならない道ではないでしょうか。

⑤管理の幅
 簡単に言えば、マネジャーが何人の部下を持つのかということです。任せる業務の難易度から、組織の上層部ほど部下の数は少なく、下層に行くほど多くなるのが一般的です。よく「部下は6~7人くらいが良い」ということを耳にしますが、業務の内容や部下の熟練度などによって、マネジャーの関与の仕方が変わるため、一概に理想の人数は定義できません。そもそも、部下を管理するのではなく、その組織で「遂行すべきミッション=仕事」を管理すると考えるのが良いでしょう。
 ある企業では、マネジャーに求める主な管理業務が「最適な目標を課す」ことになっていました。つまり、部下12人に対して、何とか達成できる個人目標を設定することがマネジャーの役割で、達成は個人の努力次第ということです。この場合、おそらく部下が100人いてもマネジャーの役割は全うできるでしょう。管理の幅を考える場合には、「部下の成果と成長に責任を負う」ことを前提にする必要がありそうですね。

⑥型をつくる
 メンバーが守る制度やルールを整備したり、マネジャー自身を含むチームとしての業務の標準化を進めたりすることです。組織としての行動に一貫性を持たせ、目標に向かってコントロールするためには、ある程度、型を作る必要があります。部下の自由裁量を認めながら、どこまで型を作るのかが難しいところです。
 ある工事会社の部長は、生産性が上がらない部下を管理するために、前年のすべての業務を洗い出して、その所要時間を数値化しました。そして、それを標準時間として部下に提示して、「標準時間内にやるように」と指示をしましたが、一向に生産性が改善していないばかりか、離職者が出る状況にまで陥ってしまいました。型がないのも非効率ですが、「型をつくる」のが目的化しないように、当事者とよく話し合って進めるのが肝要です。

最後に

 いかがでしたでしょうか。各要素に最近の事例を含めながら、組織を設計する際の基本についてまとめてみました。実務において「組織」の話題を出すと、どうしても「組織図を変える」ことに話が収斂してしまう傾向がある気がします。組織の形や誰をどこに配属させるかだけでなく、今回紹介した6つの要素を調整して、より成果を上げるのに組織はどうあるべきかを考えるきっかけにしてみて下さい。今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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