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宇宙

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【図解コラム】私たちはデジタル情報をどのように電波や光で送っているか

民間企業による人工衛星を使ったビジネスによって、今後10、20年で市場が爆発的に広がると期待されている宇宙産業。さらに人工衛星の通信における媒体が「電波」から「光」へと変わると、地球上ではさらなる高速・大容量・低遅延の通信が実現すると言われています。 以前、IISE noteのコラム記事では「情報通信において電波と光にはそれぞれどんなメリットがあるのか」を紹介しました(記事リンク)。そもそも、私たちは普段スマホやPCで文字や音声、画像に映像と、さまざまなデータを送り合って

スペースXの背景にある米の支援構造 日本社会は宇宙ビジネスをどう支えるか?【『宇宙ベンチャーの時代』著者インタビュー】

世界で宇宙開発競争が激化するなか、2023年に日本政府はJAXAに10年で1兆円規模の「宇宙戦略基金」を設置することを発表した。民間企業や大学に宇宙開発のための資金を支援するもので、国内の宇宙ビジネスの活性化に期待がかかる一方、国内事業者からは「“補助金”で宇宙ビジネス市場が育つのだろうか」と懐疑的な声もあがっている。 宇宙産業においてベンチャー企業がビジネスの軌道に乗るまでには大きなリスクがあり、イーロン・マスク氏率いるスペースXが成長を遂げたのは、NASAによる新しい

OneWeb、Project Kuiper、中国政府……スターリンク以外の衛星コンステレーションの動向

急拡大する宇宙ビジネスの中で特に注目されている「衛星コンステレーション」。一定の軌道上に多数の人工衛星を打ち上げて、一体的に機能させるシステムを指しますが、中でも近年は米Space Xの「Starlink(スターリンク)」を筆頭に、高度200km~2000kmの軌道上に何百、何千、何万機と衛星を打ち上げて連携させる"低軌道・大規模”の衛星コンステレーションを各企業や政府が計画しており、関心が寄せられています。 Starlinkはすでに高度550kmの低軌道に5250機以上

なぜルクセンブルクは世界有数の宇宙ビジネス国家になりえたか

世界最大級の衛星通信企業であるSESが本社を構え、欧州最大規模の宇宙ビジネスカンファレンス「NewSpace Europe」を毎年開催するなど、世界の宇宙ビジネスにおいて大きな存在感を発揮しているルクセンブルク。 世界から宇宙分野の民間企業が70社以上集まっており、NASAから月への貨物輸送を委託されている日本の宇宙ベンチャー・ispaceも、2017年よりヨーロッパの事業開発拠点として同国にオフィスを構えています。 国土面積は神奈川県ほどという小国にもかかわらず、ルクセ

「必要なのは、衛星データが前提の社会デザイン」新しいルール構築に向けた、城戸彩乃さんの仲間づくり

宇宙ビジネスに取り組む企業の増加や衛星データ利活用の推進によって、宇宙産業は今後 より大きな発展が予想されています。そんな中で、将来的に宇宙ビジネスをより大きく育てていくため、携わる企業や人にとってはどういった取り組みが必要になるのでしょうか。 自身を「技術の翻訳者兼プレイヤー」とし、企業と連携した宇宙テクノロジーの社会実装に取り組んでいるのが、株式会社sorano me代表の城戸彩乃さん。同社は主に宇宙産業に関する業務支援やコンサルティングを行い、宇宙技術の利活用を考える

自動運転や防災・減災まで 地図アプリだけじゃない測位衛星の活用事例

自動車のカーナビゲーションシステムやスマートフォンの位置情報サービスに活用されている、衛星測位システム。アメリカによる28機の人口衛星からなる全地球測位システム「GPS」がおなじみですが、日本でも準天頂衛星システム「みちびき(Quasi-Zenith Satellite System、QZSS)」が、測位衛星4機体制で2018年から運用されています。 衛星測位システムは、複数の測位衛星から発信した電波を(スマートフォン等の)受信機が受け取り、測位衛星それぞれとの距離を測り受

環境問題解決に向けた先端技術、宇宙、資金~ASIA GREEN TECH SUMMITインタビュー~

IISEの野口聡一理事が、2024年3月8日にシンガポールで開催されたASIA GREEN TECH SUMMIT(日本経済新聞社・Financial Times共催)のキーノートインタビューに登壇しました。今回はこのキーノートインタビューの内容を報告します。 同イベントでは、アジア地域を中心とした各国のビジネスパーソンが参加し、アジアにおけるGXの方向性についての活発な議論が行われました。 キーノートインタビューのモデレーターは、日本経済新聞社の安藤淳編集委員が務められ

宇宙技術をいかにして生活に溶け込ませるか 北欧デンマークに学ぶ、オープンな社会実装プロセス

宇宙ビジネスの広がりにともなって、日常生活における「宇宙の利活用」が本格化することが予想されます。それによって生まれたインフラやテクノロジーを日常生活に浸透させていくためには、どういったプロセスが必要になるのでしょうか。 IT技術とテクノロジーの社会実装における成功例として注目されているのが、北欧・デンマークのスマートシティの事例です。ロスキレ大学准教授で北欧研究所の代表・安岡美佳さんは、デンマークによる技術実装の様子を、とても「さりげない」ものと表現します。 デンマーク

人工衛星の「光害」は、社会に何をもたらすか 国立天文台・平松正顕さんインタビュー

米スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を筆頭に、民間企業による人工衛星の打ち上げが加速度的に増している今、天文学者の間で「光害(ひかりがい)」に懸念の声が高まっている。人工衛星に太陽光が反射して天体望遠鏡に写り込むなどして、天文観測に大きな支障をもたらしかねないとするものだ。 「影響は天文学だけではありません。2030年頃には10万機ぐらいの人工衛星が飛ぶ世界になるでしょう。そうなると私たちが見ている星空が、これまでとは質が違うものになってしまう可能性がある」

日本のスマート農業に人工衛星がもたらす未来 第一人者が語る「アジアをリードできる可能性」

近年、民間企業による人工衛星が増加しており、衛星からの位置情報やリモートセンシングデータを活用したさまざまなビジネスの創出が期待されています。その中の一つで注目されているのが「スマート農業」。労働力不足が深刻な日本の農業において、測位情報を使って農業ロボットを自動運転させるなど衛星の活用が進められています。 農業におけるビークルロボティクス研究の第一人者である北海道大学の野口伸教授は、2022年に高知県の柚子農園で準天頂衛星「みちびき」を活用した柚子の運搬作業の実証試験を

人工衛星がスポーツにもたらす変革 選手や馬の動き、位置を測定 ケガの低減にも

北米プロスポーツ史上最高額でドジャースへ移籍し、日々その動向が報じられているメジャーリーガーの大谷翔平選手。今年1月にドジャースの公式SNSで大谷選手のトレーニング姿が公開された際、胸部に見慣れない黒い器具を装着しているのが注目を集めました。 こちらは「デジタルブラジャー」とも呼ばれる器具で、アメリカのGPSを含むGNSS(Global Navigation Satellite System、測位衛星システム)を使って選手の走行距離や最高速度などさまざまな指標をリアルタイム

人工衛星データを活用したビジネスの先進事例 業界別に解説

近年、民間企業による人工衛星の打ち上げが急増していますが、それに伴い人工衛星から得られたデータを活用したさまざまなビジネスも展開されるようになりました。 身近な例では、天気予報アプリや位置情報を使ったサービス、さらには衛星の観測写真をもとにスーパーマーケットの駐車場の空き状況から投資先を判断するなど画期的な事例も増えています。 一般的に「衛星データ」とは観測衛星から得られた地球上のデータを指しますが、本記事では測位衛星や通信衛星も併せて、市場に広がりつつある人工衛星を利用し

【堀江貴文×野口聡一】日本版スターリンクで時価総額1000兆円超も。衛星ビジネスの無限の可能性

「宇宙というと『夢や希望がありますよね』だとか、そんな話を期待されますが、僕のなかでは宇宙はもう完全に事業になっています」 こう断言するのは、実業家で、ロケット開発に取り組むベンチャー、インターステラテクノロジズ株式会社 取締役・ファウンダーを務める堀江貴文さんです。 国際社会経済研究所(IISE)が2月9日に開催した「IISEフォーラム2024 ~知の共創で拓く、サステナブルな未来へ~」では、堀江さんをゲストとしてお迎えし、基調講演とパネルディスカッションで宇宙産業を注

自然災害と人工衛星 防災と減災に向けた、観測・測位・通信衛星の活用事例

日本は、地震や大型台風、集中豪雨や洪水などの被害に見舞われる事が多い、自然災害多発国です。避けることが難しい自然災害ですが、被害の甚大化を防ぎ、最小限に抑えるための予測・予防に、人工衛星および人工衛星によって取得した「衛星データ」の活用が進んでいます。 観測衛星を用いた、災害予測と減災の取り組み 災害に関連した観測衛星の用途は、大きく「災害予測」と「被害拡大の抑制」の2つに分けられます。 衛星データを用いた、災害の予測 衛星データを分析することで、災害リスクの高い箇所を