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バラを育てようと思ったら:販売店が書かない、購入前のポイント

毎年ものすごい数の新品種が発表され、園芸店やホームセンターでも飛ぶように売れていくバラ苗。

あれが全部そだったら、日本は一面バラだらけです。ほとんどの苗は枯れているのだと思われます。

大量生産の恩恵で、すばらしい苗をお手頃価格で購入できているのですから四の五の言う気はないのですが、バラに興味があったら是非性質を知ってから、適切な環境で育ててあげてほしいなーと思います。
こんな何千文字もの記事を読むような人はすでに調査済だとは思いますが(笑)


【バラの性質】

こんな環境が用意できるなら、バラは育ちます

1.大量の日照が必要(超重要)

直射日光が必要です。室内では育ちません。
花をさかせたいなら、春から秋にかけて15000ルクス以上の日光を6時間くらい当てる(ある程度育った後なら4時間くらいでも咲く品種はある)
照度は最近ではスマホの無料アプリで測定できるので、ぜひ栽培予定場所の照度を時間毎に測定してみてください。

2.大量の土が必要(超重要)

広く根を張る木であるため、地植えがベスト。鉢栽培の場合、30cmくらいの深い鉢がよいです。弱くて小さいバラでも8号(直径24cm)、通常の木立や小型のつるばらなら12号(直径36cm)くらいで育てると沢山の花が付きます。

3.水切れNG(超重要)

元気に育つと枝葉を茂らせるため、水を大量に蒸散します。花や蕾がある時期はさらに水分が必要です。5-9月は毎朝、暑い時期は枝先がしおれていたら都度水やりが必要です。水には強いので、自動潅水もokです。
鉢バラを育てていて長期外出するときは、子供プールに水をはって突っ込んでおくのも手です。

【バラの種類】

どんなスタイルのバラが好みですか、どのくらいのサイズなら置けますか

1.つるバラ

春に花を咲かせ(それ以降はわずかに咲くこともある)、その後は枝葉を数メートル伸ばす大型のバラです。
基本的には、その年に伸びた枝葉に翌年花芽が出ます。そのためひたすら枝を伸ばし、冬に壁面やアーチへ誘引します。
つまり、大きく育てる広いスペースが必要です。

2.木立バラ

春から秋まで、開花を繰り返す、~2mの小型のバラです。
そのため、鉢で育てやすいです。
開花後に花枝を切ると、葉の付け根から花枝を伸ばすため、開花後2か月弱で次の花が咲きます。寒くても花が咲く品種であれば4月下旬から11月下旬まで花がつきます(関東南部)

3.シュラブ

つると木立の中間の性質です。
どちらの性質も持ちますが、どちらかの性質が強いものもあります。
春に一斉に咲いた後、次の短い花枝を伸ばしてくるため、繰り返して咲きます。木立のように深く切るとなかなか花枝がのびてきません。
・伸びた枝を剪定すれば1.5m前後で壁状に咲きます。
・剪定しなければ2-3m前後伸び、誘引すればつるバラのように咲きます。

【品種特性】

バラの品種は数万種類といわれます。
花の色や大きさ、香り、木の大きさ、成長しやすさ、病気への耐性、温度への耐性、必要な日照などが品種によってまるで異なります。
一方、虫のつきやすさはそれほど変わりません。
消毒をしたくなければ、耐病性が強い品種を選び、虫は人間が処理するか防虫ネットをはりましょう

1.調べ方

2023年現在で最も詳しいのは、バラの家の絞り込み検索でしょう。
1つの項目を複数設定できない(樹勢が普通と強いを同時に選択できない)のは難点ですが、とにかく情報が入っている品種が多いです。

20世紀までのバラであれば、姫野ばら園がそろっています(選択条件は少ないですが)

2.選び方

消毒したくないなーという方は耐病性の項目で「とても強い」「強い」を選択しましょう。また、樹勢も「普通」「強い」「とても強い」を選択しましょう。

樹勢は、枝葉の生えやすさです。これが普通以上であれば、病気や虫で葉を落としても復活します。
弱いと葉が落ちた後、なかなか葉が生えず、新しい枝も生えにくいです。
とても弱いと、葉が落ちたところからほぼ葉は生えませんので病害虫が致命的です。
初めて育てるときは普通以上が育てやすいです。雑に育てても花はきれいに咲き、株も育ちます。
どうしても弱い/とても弱いバラを育てたい場合は、毎週消毒し、毎日虫がいないかのチェックをして枝葉を守り抜きましょう。雑に育てると丸坊主になり、生育がとまります。

その他、好みの色や形、香りを選ぶとよいです。
傾向として下記のようなものがあります
・小輪のバラは丈夫なものが多い
・ピンクのバラは丈夫なものが多い
・大輪、特に濃い赤のバラは開花の必要日照量が多い
・茶、緑、紫は弱いバラが多い

【肥料】

株が大きくなるまでは、こまめな施肥が必要です。
バラ園やベテランが「ほとんど肥料はやっていない」という発言、あれは大きく育って光合成量が半端なくなってからの話。もしくは、冬剪定時に与えている地植えの元肥を無視している。
花は少なくてよい、葉っぱがあればよい、ということであれば省略可能ですが、大きく育てて沢山花が見たいなら必要です。

1.元肥

地植えの場合、植えつけ時にク溶性肥料を元肥として植え付けの土に混ぜます。
ク溶性というのはクエン酸で溶ける肥料のことです。植物の根から出る酸でも解けるため、根が伸びてくれば溶けて養分となり、根がのびなければ土と同様なにもせず残り続ける、という肥料です。
根が伸びていないのに地中に肥料を施すと、その肥料は利用されない上、腐敗する可能性があります。そのため、地中にはク溶性肥料を投入します。
まるで初めてなら間違った肥料を買うこともあるし、どうせ置き肥もあったほうがいいので、初めてバラ栽培するなら元肥は入れずすべて置き肥で対応したほうが手軽です。もちろん、慣れてきたらチャレンジもありです。

2.置肥

成長期の追肥で、株の傍に置く固形肥料です。
初心者なら「バラの肥料」と書かれていて、施肥間隔と鉢の号数毎(もしくは地植え1株)施肥量がパッケージに明示されているものがおすすめです。

というのも、土の量で年間に望ましい養分の量は決まっています。
その計算は非常に面倒なので、計算済の肥料を買った方が簡単です。

置き肥は、表土に置かれているものが、水やりの際に溶け出して土中の養分としてしみだします。一般的には1か月程度効果があることになっていますが、一日に2-3回水やりをする時期はその分流出しやすいので、1か月分まとめて置くのではなく、4分の1量を毎週置くと無駄がないです。

また、バラの肥料は基本的にリン酸が多めの配合となっていますが、これは花を楽しむためのバランスです。私は真夏や晩秋、早春など花が咲かない時期はカリが多めの肥料(ハイポネックス微粉など)に変えています。

3.液肥

水やりの時に、水に混ぜる肥料です。
当然、水とともに流れていくので、効果は1週間ほどといわれています。
初めて育てるなら、買わなくていいと思います。
必要になったらゲットしましょう。

4.活力剤

養分はないけれど、土壌や株へよい影響を与えるものや、不足するものを補います。
樹勢が普通以上のバラであれば、なくても良いです(あればシュート本数が増える)
樹勢が弱いバラの場合、微量元素が不足するなどの症状が出やすいため(根の吸水力が弱くて、葉まで微量元素が届かない)、適切なものを与えると明確に成長が良くなります。
(でもそんなの考えるのは面倒ですよね。なので「どうしても育てたい!」という強い意思がないなら樹勢が弱いバラは避けたほうがいいと思うポイントの一つです)

【薬剤】

耐病性が強いバラであれば不要です。
耐病性が強くないバラには必須です。
また、虫食いが許せないならば必須です。

1.殺菌剤

耐病性が強くないバラを育てるときは必須です。といっても年中散布するわけではなく、病気が出やすいときに集中して撒きます。具体的には、温度が上がり始めて雨の頻度が上がる時期~梅雨と、最高気温が30度を切り始めたころです。
理由は、そのような時期にバラの病気が発生するからです(病気の原因原因は菌だから)乾燥していたり、温度が高すぎ/低すぎると、菌は活動せず、病気も発生しません。そのような時期にまいても葉を傷めるだけです。
また、有効成分への耐性菌が発生しないよう、年間使用回数も制限されているため、必要以上に使うことはNGです。

殺菌剤も殺虫剤も、少量を1000倍に薄めるためなかなか消費しきれず、散布の道具も必要になるため、初めてバラを少量育てる場合は後述のハンドスプレーをお勧めします

2.殺虫剤

虫食いを許さないならば必須です。
その場合は殺菌剤で記載したのと同様後述のハンドスプレーをお勧めします。
逆に、手で取る気があればいらないです。おせわするのが数株で虫をハンド処理することに抵抗なければ、薬なしでも十分対処可能です。
ただ、コガネムシ幼虫の被害(7月以降)が出た場合は、オルトランDXかダイアノジンという粒剤を買ってきて使いましょう。使い切れないけれど。

3.ハンドスプレー

上記の殺菌剤、殺虫剤がブレンドされて、希釈する必要なく使えるスプレー剤です。
耐病性が強くないバラを数本育て始めよう、という場合は3-4種類買えば春から秋まで十分もちます。
有効成分がかぶると種類を増やす意味がないので、こちらのセットに記載されているものを入手するとよいでしょう。

4.特定農薬、他

周囲の動物に影響があるから薬剤は使いたくないけれど、病気に強くもないバラを育ててみたい場合は、効果はよわいですが特定農薬などの代替品を使ってみることもできます。

特定農薬で代表的なものは酢です。食酢を100倍程度に薄めて散布すると、うどん粉病に効果があるとされています。殺菌効果があるということです。

その他、ニームオイルや木酢液、唐辛子、焼酎など虫の忌避効果があるとされるものもあります。

ただ、やはり農薬同様希釈などが面倒なので、おとなしく耐病性の強いバラを育てたほうがいいとはおもいます。


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