「卒論合同」を読んでいる話、あるいは「喧嘩上等」宣言(スタァライトアドカレに寄せて)
(この記事は、ぼくのわたしのスタァライト 第二幕 Advent Calendar 2023に参加しています)
2022年10月10日に刊行された『舞台創造科3年B組卒業論文集』。『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』への想いがふんだんに詰め込まれた合同誌であり、管見の限り最も規模の大きい『スタァライト』の考察記事(集)である。
そんな「卒論合同」を、私は読んでいる。膨大な量の「卒論」を読んで、感想をnoteに残している。それは、非常に楽しい営みであると同時に、非常にエネルギーの要する営みである。各人の『劇場版』に対する考えを受け止め、咀嚼し、自分の持っているそれと並べて考え直す。ある時には抱いたことのなかった視点に感銘を受け、ある時には疑問を抱いて思索を深める。そうした「読む」作業は、私の中の『劇場版』の世界を、あるいは『少女☆歌劇レヴュースタァライト』の世界をより豊かにしてくれる。
ここまで読んできた「卒論」について「中間報告」的な感想を述べるとすれば、「全部面白い」というのが最も適切だろう。どれも本作との「対話」を各々の仕方で行なっており、自らも『劇場版』との「対話」を行う者として非常に興味深く読んだ。
しかし、そんな中でも特に興奮したのは、やはり各章最後の記事である。素朴な疑問やわかりやすいポイントから出発して、微細な部分への観察や精緻な考察による根拠を積み上げながら、本作の提示するテーゼを、あるいは通底するモチーフを解きほぐしていく。これこそがまさに「考察」であると思わされるような記事ばかりで、同様の営みを試みる立場として大いに刺激された。
そこで疑問として立ち現れてくるのが、「私は何をしているのだろうか」という点である。これは「こうした行為に意味があるのだろうか」といった懐疑ではなくて、「他者の書いた考察を読んで刺激を受けるという行為は、どういう類の行為なのだろうか」という疑問である。現時点では、「他者と『劇場版』を読んでいる」というのが答えになりうるだろうと考えている。より詳しくいえば、「他者が『劇場版』をどう考えているかを、自らのそれと擦り合わせて生じた軋轢について考えたり、新たにもたらされた視点を受け入れたり拒否したりすることで、新たな読解を作っている」ということだ。この答え自体を劇場版に突き返して考えてみると、この営みも「再生産」といえるのかもしれない。
そうして考えてみると、私の『劇場版』に対する解釈や考察は「日々進化中」であるといえるし(実際、先日の『遙かなるエルドラド』朗読劇で刷新された部分もある)、あらゆる人のそれがそうなのだろうと思う。より踏み込んでいえば、あらゆる『劇場版』読解は、別の『劇場版』読解の影響を受けてより良いものになる可能性を秘めているということになるだろう。
「卒論合同」の紹介文にも、あるいは各「卒論」の中にも散見される「それぞれ違った解釈」というのは、言うまでもなく正しい。ある二人の『劇場版』解釈が全く同じであるということは考えられない。そして、そうした「私の解釈」は大切にされるべきである。大切な作品の大切に感じている理由を、外から上書きしたり奪ったりする権利は誰にもない。
しかし私は、「それぞれ違った解釈」というこの文言を、「口出し無用」とは考えたくない。上述したように、他者の『劇場版』読解に影響されて自らの『劇場版』読解が良い方向に変化する可能性を開いておきたいからだ。自分の解釈に誤った推論があれば訂正したいし、より整合性の取れる解釈があれば自らのものを放棄してそれを取り入れることだって厭わない。
もちろん譲れない部分はあるが、それでも「文句」を言われることは歓迎したい。それが変化の萌芽でありうるからだ。よりよい考察を生みだすためだったら、「喧嘩」も「論戦」も上等である(「難癖」に巻き込まれるのは勘弁願いたいが)。もしかしたら、擬似的な「喧嘩」や「論戦」として、「卒論合同」を読んでいるのかもしれない。
抽象的なことを述べてきたが、結論としては、「考察が「人それぞれ」で「個人的」な不可侵のものであるように扱われているけれど、もう少し集団的な=みんなで議論して作り上げるものとして考えてみませんか?」ということであり、「そのために相互参照のしやすい形で議論をしてみませんか?」ということである。
そのための実践の一つが「卒論合同」の感想noteであるが、別の実践として、先日あげた以下の記事も良い例だったと思う。
また別の例として、「卒論合同」から派生された形で生まれた「学会」も非常に喜ばしく感じている(参加はしていませんが…)。
このような「みんなで『劇場版』を読む」試みが他にもあれば是非教えてください。そして、私の『劇場版』読解に対するコメントを頂けたら(建設的な批判であると特に)、非常に嬉しいです。
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