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ペットロスが癒えないまま地域猫活動に突入して保護した仔猫たちを預かる羽目になり、野良猫問題泥沼化する話

写真は去年の夏のニャンさん。

凛とした元野良の雌猫で、10年ともに暮らしたが、今年3月末に老衰による多臓器不全で死んでしまった。

3kgあったニャンさんの体重が1.4kgまで落ちていく2か月間、いよいよ今日でお別れか、と思い続けた。

亡くなる数日前のニャンさん。食が細り、痩せて首の骨が浮いて見えた。

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実際、何歳だったのかはわからない。野良猫で保護した時にはすでに5歳は過ぎていたようだったので、推定15歳以上なんだろうと思う。

すっかり肉が削げ落ちて細く、軽くなったニャンさんは、3月30日の早朝、抱っこされたままこと切れた。

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去年の夏、もう一匹の保護猫、あんみつさんが悪性腫瘍で急逝(享年11歳)したときは、動物病院での治療費が膨大にかかったため、葬儀をする金銭的余裕が全くなくて、遺体を市のごみ焼却場へ無料で引き渡さざるをえなかった。棺代わりの箱にあんみつさんの亡骸を入れ、花を添えて白布で包んだものの、可燃ごみとして燃やされるのは、飼い主として心中穏やかでなかった。

在りし日のあんみつさん。

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あんみつさんには可哀そうなことをした。ニャンさんの時はちゃんと火葬にしてあげよう、と決めていたので、市の斎場で人間並みの丁寧な火葬をしてもらった。費用はそれなりにかかったが、悲しみの感情を鎮めるためにも弔いの儀式は必要だ。お骨も拾い、骨壺に収めてポケットにしまいこんで、ニャンさんを家に連れ帰った。


その2日後、斎場を再び訪れた。

骨壺に収めきれなかった骨は、焼き場の横にある動物慰霊碑に納められる、と聞いていたので、手を合わせに行った。

そこで出くわしたのがこの仔猫たち。

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斎場は人家から離れた山の山頂付近にあるのに、目を凝らすとあちこちに猫がいた。動物慰霊碑にはたくさんのボウルが置いてあり、キャットフードが入れてあったので、猫たちは明らかに餌付けされていた。これは放っておけない!と思い、急ぎ、ネット検索で市内の猫ボランティア団体に連絡し、対応をお願いした。

後日、斎場で猫ボラさんと捕獲作戦を開始。キジトラ仔猫2匹を無事捕獲して安堵した次の瞬間、「うちで預かるつもりだったんですけど、昨日、別の猫を急に保護することになってしまったので、すみませんが、里親が見つかるまで2匹を預かってもらえませんか?」との要請。

里親募集サイトに載せれば、仔猫だし、可愛いからすぐ貰い手が見つかりますよ、と言われ、いやあ、ええ・・・まぁ、仕方ない、老猫2匹が亡くなって手が空いてはいるから、と、即決し、やむなく預かることになった。

その日、保護したのは、推定生後3か月の仔猫たちで、回虫駆除と猫エイズ検査、不妊手術を終え、あとは貰ってくれる人探しだけの段階にあるが、これがかなり難航している。

猫ボラさんにPR用写真を撮ってもらい、里親サイトに載せてもらったものの、まるで問い合わせが無く月日は過ぎて、すでに推定生後7か月の大猫になりつつある。このまま売れ残りとなるのか、と思った矢先、やっと一件、見学の申し出があった。

まるで懐かない暴れん坊の仔猫たちに、カーテンをぼろぼろにされ、しゃー!しゃー!威嚇されながらもお世話してきたこの半年、置物のように動かず、寝たきりだったニャンさんのことが忘れられず、思い出しては涙が出た。猫はどれも同じじゃない。10年、一緒に暮らした猫に先立たれるのは淋しくて、とてもじゃないが他の猫では埋められない。

猫好きとはいえ、自分の年齢を思うと、これから家族に迎えるのは難がある。今54だが、この先、もう猫の医療費を負担できる経済力が無いのは明らかだ。健康なうちはいいが、寿命の短い猫のこと、10歳過ぎたら確実に病院通いが増えるし、私が先に死ぬ可能性も高い。そう思うと飼育は不可能だ。

ニャンさんが死んだあとは、猫を飼わず、他所の猫をインスタで眺めて暮らそう、と思っていたのに、突然、保護猫生活に突入してしまった。そして、斎場が、野良猫の増える悪循環の典型的パターンに陥っていることが徐々に明るみに出てきた。

遠征餌やりの人たち(通称;猫おばさん、おじさんも数名)が10人以上いるらしく、それ以外に、動物慰霊碑へお供え物として持ってきたペットフードを直に地面へばら撒くなどする、不定期の餌やりさんもいる。恐らく、自分のペットが亡くなって火葬した後、野良猫の存在に気付いて、残ったフードを処分も兼ねて置いていくのだろう。そんなわけで斎場の猫たちは、飼い猫以上にたらふく餌が食べられる状況になっているので、毎年子を産み、ぼんぼん増える。

遠征餌やり人がいる所には、猫を捨てたい人もやってくる。ここなら捨てても餌を貰えるから安心、と思うせいだろう。遠征餌やり人は、頼んでも、猫を引き取りたがらない。あくまで、餌を持ってきて与えるひと時だけ、猫と戯れ、その姿に癒されたいのだ。また来るから元気で居てね、と、猫たちをホームレスのまま、イノシシが出る山奥に捨て置いて帰る。皆、元々ペットを飼っていて、死んで火葬するために斎場へ来たとき、野良猫の存在に気付いて、まあ、可哀そう、と、餌やり通いを始めるのだと思う。

仔猫たちを保護した時、薄汚れた、人懐こい茶トラの大きな雄猫もいて、餌やりおばさんによると、あの茶トラ猫は3年前にここへ捨てられたようで、昔はとてもきれいな猫だったのに、と当時の写真をたくさん見せてくれたが、後日、茶トラは猫同士のけんかで顔に大けがを負い、ボロボロになっていた。それを見て猫おばさんは、可哀そう!を繰り返していたが、3年前に猫の存在を知ったあなたが、保護して飼うなり、飼い主探しをしてくれていたら、こんなことにはなっていませんよね?と、詰めたくなるのをぐっとこらえた。酷いことをしている自覚のない遠征餌やり人にそっぽを向かれてはホームレス猫問題は解消できない。

ペットロスの心境で遠征餌やりにハマるのは、かなり沼化するはずだ。野良猫を引き取れば、またいつか死なれて辛い思いをするわけで、もう飼えない、飼いたくないが、この場所に来れば猫ちゃんに会える!癒される!

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ふれあい動物園じゃないんですよ、と言いたいが、遠征猫おばさんに理屈は通用しない。他人の土地に野良猫を定着させるのはいけないこと、とは、露ほども思っていないだろう。山奥だし、自然の中で、森林浴ついでに猫ちゃんと親しむ、くらいの感覚でいるのかもしれない。

ペットロス状態のまま遠征餌やり人になってしまう人が続出の斎場で、今、猫ボラさんの陣頭指揮で猫問題解消に向けてちょっとだけ手伝っているのだけど、野良猫、遺棄猫の収容先が無いということが大問題である。

保健所は野犬の捕獲、収容は行うが、猫は捕獲も収容もしていない。生まれたての仔猫はよく持ち込まれるそうだが、そちらは、乳飲み子専門の団体が引き出して育て、譲渡に繋げているらしい。

地方都市のこちらでは、猫の室内飼育が浸透しておらず、自由に外へ出す放任飼育が多いうえに、不妊手術は可哀そう、として行わない飼い主も多い。うちの猫は雄だから大丈夫、という声も聞き、仰天した。あなたは大丈夫でも、他所の雌猫を妊娠させるのはどうなんですか?・・・つい、説教モードになってしまうが、知ったこっちゃない人には言うだけ野暮というもの。雌猫を手術せず飼っていて、子を産むたびに山へ捨てる、河原へ捨てる、を繰り返す人もいる。それじゃ野良猫が減るわけがない。

処分のために管理する保健所ではなく、生かして譲渡につなげるための動物シェルターが必要だ。ペットロスをこじらせて餌やりおばさんになるくらいなら、シェルターに集まって皆で猫のお世話したらいいじゃないか。宝くじ当たったら真っ先に作りたい動物シェルター。犬猫は責任もって飼いましょう、という話。

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