【個人的解釈】だりむくり
こんにちは、ニールと申します。
先日開催された「ユエニ」のリリースイベントに参加して、色々と曲について考える時間があったので、考えを纏めたいと思います。
・だりむくりとはどんな曲なのか
まず、この曲がどんな物語なのか考えます。
何となくのイメージで、私はこの曲が「ミザントロープ」に似ていると思いました。
だりむくり聴いてたらミザントロープ聴きたくなったけど、話の構成的には似てるのかこの2曲? https://t.co/fCG6vs59TV
— ニール(群) (@ni_ru_25) June 10, 2023
ミザントロープについては以前にもnoteを書いていますが、
「一見すると悲しい曲だが、実際は前を向く夜明けの歌」だと私は考察していました。
だりむくりも同じような構成になっているのではないかと思います。
初めてだりむくりを聴いた時には、「暗い曲」だと思いました。
度々出てくる「堕ちる」という単語、諦観を孕んだような歌詞、どこか間延びしたような歌い方などが理由です。
今回じっくりと歌詞を読み込んで、この曲はそこまでマイナスだけの曲ではないなと今は思っています。
・「ボク」と「 」
ここから、気になる歌詞について考えます。
夏川さんの楽曲では、度々「ボク」と「キミ」という言葉が使われます。
(漢字表記だったり、ひらがなだったりします。)
今回の曲では、「ボク」は出てきますが「キミ」は出てきません。
これは意識的に使っていないのかなと感じました。
1番で"あのひ"や"いつか"について語り合ったり、
ベロンベロンでクサイ台詞を吐いていたり、
「ボク」と話している相手が存在していることは想像に難くないですが、なぜ「キミ」という言葉を使わなかったのか。
これは、話している相手が変わってしまうことを表しているのだと思います。
相手を「キミ」としてしまうと、必然的に「キミ」は一人のことを示してしまいます。(少なくとも私はそう捉えます。)
大人になって、昔の仲間と疎遠になってしまった人は少なくないと思います。
逆に、大人になってもずっと一緒にいる友達が居る人も少なくないと思います。
そのどちらの人にも寄り添える歌詞にするように、「キミ」という言葉を使わなかったのではないでしょうか。
「ボク」が話している相手が変わっているようにも、変わっていないようにもどちらともとれるように。
・馴染みの場所で同じようなこと
だりむくりでは、3回「馴染みの場所で同じようなこと」という文章が出てきます。
そして3回とも、表していることがらが変わっていると思います。
まず1番の「馴染みの場所で同じようなこと」、
これは子供のころに、同じ場所で集まって遊んでいたことを示しています。
これは「5時の鐘が別つまでは」という歌詞から、夕方になって解散しなければならない情景が浮かびますね。
そして2番では、いつもの職場で同じ仕事を繰り返していることを示しています。
「17時じゃまだ帰れないや」という歌詞から、仕事が終わらなくて定時では帰れない情景が浮かびます。
子供のころは、5時と言えば夕方の5時を指していたのに対して
大人になってからは、夕方の5時を17時と表記するようになったことも分かります。
ラストの「馴染みの場所で同じようなこと」は、
いつもの居酒屋で酔ってぐだぐだと愚痴を零している情景が浮かびます。
このように、大人になるにつれて「馴染みの場所」や過ごし方が変わっていくことを表しているのが分かります。
同じ言葉で違う情景を浮かばせるという夏川さんの構成の上手さが分かって、少し感動しました。
・曲を通して
だりむくりという曲を通して考えます。
1番では、子供の頃の思い出とそれがもう戻らないことを嘆いて呑み潰れている様子が書かれています。
郷愁、「堕ちて」しまいそうなほど落ち込んでいる「ボク」。
2番では、仕事にも慣れてきてそれでも苦しくて、諦観のなかベロンベロンになって耐えている「ボク」が書かれています。
Cメロ、"砂に書いた物語は?"と誰かの問いかけが響きます。
これは前述の通り、昔馴染みからの問いかけかもしれませんし、かつての思い出が問いかけてきているのかもしれません。
「物語を繋ぐのは誰でもいい」と腐れていた2番から、
「物語を繋ぐのは僕だけじゃなくていい」と悟る「ボク」。
大サビ、そんなクサい台詞を吐きながらようやく前へ進みだした「ボク」。
"あのひ"話した"いつか"の事を思い出して、よろけた足取りで向かい始めます。
ラストはギターだけが響く中、「悔しいけど、飽きないんだなぁ。」と零す「ボク」。
裏の楽器がギターだけになるのはここと1番の最初2行だけです。
過去の思い出を振り返る1番と、今の気持ちを零すラスト。
この2か所は同じような心境になっていることを表しているのかなと思います。
同じ仲間と酔ってグダグダしているからかもしれませんし、酔って過去の思い出を振り返っているからかもしれません。
・だりむくりという曲
ここまで色々考えてきて、だりむくりという曲は2通りの捉え方が出来るように思います。
1つは、『かつての馴染みの場所へは集まれなくなったけど、大人になってからも昔馴染み達と飲んでだりむくれになるボクの話』
もう一つは、『かつての仲間とは離ればなれになってしまったけどそれを受け入れて、せめてもと昔の夢を抱いているボクの話』
先に書いた通り、色々な人に寄り添える曲になるようにと夏川さんが工夫して捉え方に幅を持たせてくれているのかなと思います。
また、「悔しいけど、飽きないんだなぁ。」という最後の歌詞が一番共感できました。
人生生きていたら嫌なことや悲しいこと、嬉しいことや楽しいことなど色んな事があります。
それでもなんだかんだ、飽きないから生きています。
結局「ボク」は「堕ちる」ことを止めたわけではなくて、堕ちる権利を使うのはまだ先でいいと先延ばしにしただけだと私は思います。
けど人生ってそういうものじゃないかなと。
色んな人が色んな人生を送っていて、その中に
『まだ飽きないから、堕ちるのは今じゃなくていいや』
と、そういう風に考えている人が居てもいいんだと思います。
何というか、もっと力を抜いて生きていいんだなと思わせてくれる曲でした。
色々な人に寄り添える歌詞を書ける夏川さんは素敵だと思います。
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