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『失敗の科学』読んだ。

私は、面白い話しかできない人間だ。
で、周囲の私への印象は、

口数の少ない人、
であろう。

私は頭の回転が早い。会話中もあらゆるパターンを想定し、当意即妙な返答を生み出す。
「あー、五分前くらいの話題で、めちゃくちゃ気の利いたコメント思いついた」
てなもんである。
もちろん、タイミングも読めるので、加速装置搭載鯖のような旬を逸した話題は絶対に口には出さない。抜群のワードセンスを持ってはいるものの、表に出てこないのが、玉に致命傷といったところ。

いや、もはや人様に認知されることはないので、大事に抱え込んでいるそれが、玉であるのか塵芥であるのかも判断されることはないのだ。
それが最大の欠点である。

そう、文章についても同じだ。私は、面白い話しか書けない。

それらの問題点は、面白い話しか出来ないやつは面白くなれないのである。

これに関して、『失敗の科学』を読んだ。

綿密なリサーチから書かれた素晴らしい名著。
この本自体は、医療ミスや飛行機事故の事例などを通して、人類がいかに失敗から学んで進歩してきたか、そして学びを逃しているかが書かれている。
真摯に、問題提起と希望を描いていて、久々に本読んで泣いた。マジでおすすめ。

もはや、書かれていることが気高すぎて、面白自己顕示がしたいだけの自堕落な雑稚魚noterには関係がないものだ。

なんて考えでは学べない。

一番胸に刺さるのは、失敗は「してもいいこと」ではなく「必要なこと」であるという下りだ。
結局のところ私の足を引っ張っているのは、恐怖だ。私が文章を投稿したら、あまりのつまらなさに住所を特定されて殴り込みされるのではないかと恐れてしまう。

そんなことでは、面白さを発揮できないし、つまらなさから学びを得ることもできない。

こんな話もある。
マディソン・スクエア・ガーデンに立つスタンダップ・コメディアンは絶対にすべらない。
まあ、プロなんだからそりゃそうだろってなもんだが、それには納得できる理由がある。地元のコメディクラブで散々すべり散らかしたあと、受けたネタだけを厳選して舞台に立つからだ。
失敗からの学びである。(2)

死ぬのは簡単でコメディは難しいとは言うが、勇気の試練は死ぬことではなく生きること、とも言う。(3)(4)

駄文を投稿しても死なないし。

失敗は一時的であって、致命的ではない。(5)

読了数日間はそんな気分にもなれる名著でした。

ここから学んで、これからはちゃんとつまらない文章も書いていきますので、その節はどうぞよろしくお願いします。



脚注:さほど補足するほどの本文でものないのだけれど。

(1)玉に致命傷:思い付いたような記憶あったようなと思って調べてみたら『かってに改蔵』のギャグにあるそうな。
「一流は盗用元を記憶し、二流は元を忘れる」みたいなことを誰かが言ってたと思ったけど忘れた。誰か教えて。

(2)スタンダップコメディアン:なんの本で読んだか忘れた。『失敗の科学』ではないと思う。これも知ってたら教えて欲しい。

(3)

死ぬのは簡単で、コメディは難しい。

―― エドマンド・グウェン

(4)

しばしば勇気の試練は死ぬことではなく、生きることだ。

―― ヴィットーリオ・アルフィエーリ

『オレスト』

(5)失敗は一時的:確認したらなんか違った。

成功は決定的ではなく、失敗は致命的ではない。大切なのは勇気だ。

―― ウィンストン・チャーチル


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