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読書日記。『ひと』読了

読み始めた時の印象そのままに、爽やかな気分で読了。

逆境に “立ち向かう” のではなく、“受け入れる” 主人公。混乱の中でそうすることしかできなかったとも言えるけれど。出会う『ひと』の善意を素直に受け入れる彼。そして、同時に、悪意もそのまま “受け止める“。

悪意に抗わない訳ではないけれど、面と向かって諍うことはしたがらない。弱い人、狡い人、奢った人。一般的に嫌われるこんなタイプの人達の言動ですら、一旦そのまま引き受ける。憤りや怒りに我を忘れることはない。

自らの境遇をあるがままに捉え、取り巻く人間関係を冷静に俯瞰する彼。己の未熟さも弱さも自覚しているし、不幸にあぐらをかいて斜に構えてもいないし、もちろん諦めてもいない。ただただ前を向いている。

こんな出来た20歳になりたかったw。

彼とは一見対照的なだらしない男子も二人登場する。ただ、そのルーズさが彼らの魅力にも思えるように描かれている。登場する『ひと』すべてに優しい眼差しを向けている小説だった。

欠点も個性。他人からどう見られていようが、本人が欠点だと自覚しない限り、それは欠点ではない。似たような価値観の人の中にいれば、欠点とも言えなくなる。要は相手次第だ。

親子、夫婦、恋人、友人のさまざまなカタチが出てくる。雇用主と従業員、同僚という関係や、親戚というしがらみも。普通だけど多様な人間関係が、あくまで軽やかに、さらりと描かれているのがいい。

ラストシーンがとても好き。

主人公のその後を読みたい。続編が出るといいな。





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