見出し画像

読書日記。『序の舞』

宮尾登美子作品にどっぷりはまっていた時期がある。最初に読んだのは『序の舞』。

当時、ある媒体で、日本の伝統文化関連の記事を毎月のように書かせていただいていた。日本画家、工芸家、芸能関係者など、滅多にお目にかかる機会のない分野の方々に、その道のお話を伺う。

無知なわたしが、知識0の状態で取材に臨む訳には行かないので、様々な資料に目を通して下調べをする。記事1本分のインタビューは文字量の多少に関わらず、大概一時間程度。その間、全神経を集中して聞き漏らしを防がなければならない。

記事を書き終えるまでは、どんなに執筆まで間が空こうと当日の記憶は消えないという特技が身に付いたw。けれど、書き終えると記憶が飛んでしまうのでw、後から関連書籍を読んで余韻に浸ってみたりもする。

『序の舞』は、主人公のモデルとされる女性画家の孫にあたるU氏の取材後に読んだ。実在の人物の人生をフィクションに仕立てる。その小説は誰かを傷つけたりもするのかな、それとも感謝されるのかな。

作家と違い、ライターや記者は、取材した事実を書くのが仕事。多少の私見が紛れたとしても、記事を読んで下さるのはほんの一握りの人だしw、すぐに読み捨てられるだけだしw。

でも、小説は世に残る。ましてや著名作家の作品であれば未来永劫残って、多くの人に読まれる。だから、読んでいる間中、心にざわざわとさざ波が立った。フィクションとノンフィクションの境界線ってどこなのか、と。

その後、『きのね』や『伽羅の香/松風の家』など、数冊を続けて読んだ。歌舞伎役者さんやその奥様、香道の継承者などの取材も経験した身としては、やはり心がゆらゆら。

まぁ、結果的には、作家の取材力・構成力って凄いな、小説家の覚悟って凄いな、と、ただただ感嘆したんだけど。

その昔、ブッキングを担当していた某アイドルが大河ドラマに出演し、その原作が山崎豊子著『二つの祖国』だった。それから山崎作品を手に取るようになり、『沈まぬ太陽』を読んだ時もそう思った。

題材となった航空事故直後に、仕事で日航機を利用したので、機内にピリピリした緊張感が漂っていたのを鮮明に覚えている。事故当日、あの便に搭乗予定だったのに乗り遅れ、九死に一生を得た仕事関係者もいた。

心の病気の取材で体験談を聞くと、自分まで病みそうなくらい引きずられてしまう自分には、事故の取材は無理だろうなぁ。山崎豊子さんは新聞記者出身というのに頷ける。

好きな女性作家はたくさんいる。最初に好きになったのは円地文子さん。学生時代だったので文庫本をずらりと買い揃え、片っ端から読んだ。で、またタイトルを思い出せない1冊が…。手、がついたと思うのだけど、検索にヒットしないのであーる。

多作な作家だと全作品読破するのはなかなか難しい。でも、やってみたい気もする。隠居の域に入った今ならできるかも、ねw。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?