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スリルミー(松岡山崎ペア)感想文


誰かに見られてもいいけど誰かに見られるためではない観劇日記その1
ネタバレします

スリルミー愛知公演を見てきた。
本当は東京公演4/25のチケットを持っていたけれどなんとか宣言のせいで4/24が突然に訪れた東京千秋楽となってしまった。そこで大急ぎで愛知公演のチケットを買った。

観劇したのは松岡山崎ペアの公演。

わたしはいつも舞台にしろ映画にしろ前情報はできるだけ仕入れないで見る。何度も再演されているスリルミーだがこの作品に触れるのは今回が初めてだった。
登場人物は「私」と「彼」のふたりだけ、それとピアノが1台。この情報だけでウインクあいちに向かった。


グッズを大量に買い込み、開演10分ほど前に場内に入ったがもう客席の空気が作られていた。こんなことは初めてだった。演出効果のため開演5分前のアナウンスは致しません、なんて事前アナウンスがあり、もうそこから始まってるのかすげえなと思ったがもう会場全体で緊張感が作られていたのだ。

そこからぶっ続けに100分間。圧巻の100分間。
こんなに気持ち休まらないミュージカル見たことない。人間の集中力の限界に挑んだような気がする。観劇中、息をしていたかすら覚えてない。


さて、ここからが本題の感想である。
あくまで広大くん推しとしての感想にすぎない。


・恋人の視点、BLの視点

実はあのキスシーンあたりまで「私」と「彼」が恋愛関係にあることに気づかずに見ていた。ただただ大の仲良しこよしだと思っていた。情報はほぼ知らないといったことが少し嘘になるが全キャストによるトークショーは見ていたのでキスシーンがあることは知っていた。ただふーんそうなんだとしか思ってなかったが、これが言ってたタバコのflavorがするキスか!!なんてちょっと感動もした。それはそれは美しかった。いわゆるBLものにはかなり疎いが、松岡広大の「私」の山崎大輝の「彼」のキスシーンはあまりにも美しかった。

「これで満足か?」

キスをした後に「彼」が言う。
この時点では完全な主従関係のようにしか見えない。「彼」が「私」を手のひらの上で転がしている。「私」は恋人と言うよりも従順な手下といった感じだ。

もうひとつベッドシーンがある。直接的な描かれ方はしていないがふたりが服を脱いでいく。対峙する、なんて表現がよく似合うと思った。ここも美しい。BL作品はなんとなく毛嫌いして避けてきたがスリルミーの「私」と「彼」はとにかく美しい。推しがどうとかいう以前に舞台上のふたりの画が美しすぎてずっと見ていられる。

キスをしたことは「彼」が「私」を動かすための手段というかエサみたいなものに思えたが、恋人関係としての行為そのものに主従関係はないのでは、と感じた。ベッドシーンでの「私」の目はとても従順な手下には見えなかった。超人であることの証明行為(=犯罪)ではもちろん主従関係があるが、恋人としてはある程度対等な関係なのかな、と。こたえはしらんけどな。

恋人としての「私」と「彼」、このペアの強みは身長差だと思いました。他ペアは月末の配信で見るのでまだ見れておらず比べることはできないけど歴代最高身長差ペア。広大くんはお顔が強いのと普段のキャラクターが強いのとでどちらかというと「彼」寄りなのでは?とか思った。たぶんこれは広大くん推しだからこその視点だと思う。でも大輝くんの「彼」と並ぶと圧倒的に「私」になるんだよね。だからこの関係性をつくる大きな要素は身長差があるんじゃないですかね。


・19歳と54歳

印象に残ったことのひとつは「私」の19歳と54歳の演じ分けである。54歳の場面と19歳の場面は暗転ひとつで切り替えられていた(暗転すらない時も多かった)ので服装やメイクはそのまま、つまり声と表情だけで転換していた。しかしながらたしかに54歳だった。すべてを悟り切ったかのような声と表情、姿勢。50年以上生きてきた人間の苦労や渋みが見事に感じられた。「私」を演じる広大くんの実年齢は23歳だ。ここまで完璧に54歳をつくってきたとは。一方19歳は素の広大くんに近いかと言うとこれも違うように感じた。普段よりも少し幼い話し方をしているように思えた。気のせいかもしれないが。しかしその少し幼いような話し方でちょうど19歳、大学生らしく見えた。「私」のキャラクターとも合致しているなあ、と。この2つの年齢をその場で切り替えられるのはさすが舞台の役者さんだと単純に感心した。このペアは圧倒的に実年齢が回想中の「私」と「彼」の年齢、つまり19歳に近い。だからこそ栗山さんからもこのペアは技巧に走るなと言われたらしい。では他のペアはどうやって19歳を演じたのか。46歳の新納さんは「彼」なので回想中に19歳の姿でしか登場しない。どんなテクニックと舞台マジックで19歳を表現していたのか。配信を楽しみにしよう。

・どんでん返し、究極の愛

終盤のどんでん返し、つまりは「私」がわざと眼鏡を落としたと自白するところだ。なんにも深読みせず、えー眼鏡落としちゃったの??おっちょこちょいだなあもう!くらいの感覚で見ていたので鳥肌がたった。素直に見すぎて「私」を素朴で純粋で従順な少年としか思っていなかったので、「私」がまさか、と理解するのに時間がかかった。ここで「私」と「彼」の主従関係がわたしの中で崩れた。「彼」が「私」を従えているように見えて、「私」が「彼」を利用していたのだ。「私」は「彼」と一緒にいるために「彼」を利用したのだった。ニーチェの言う超人であることを証明するために次々と犯罪を犯す「彼」よりも、「彼」と一緒にいたいがために犯罪に付き合い「彼」と一緒にいるためにわざと2人とも捕まるルートをとる「私」の方がよっぽど怖いじゃないか。サイコパスじゃん。まんまと騙された。でもこれで"究極の愛"とポスターで謳われている理由がわかった。腑に落ちた。ずっと一緒にいられるために、恋人に逃げられないために2人で牢屋に入るという選択をした。どんな形であれ一緒にいられるならそれでいい。たしかに究極の愛だ(言い方を悪くすれば究極のメンヘラだ)。こう考えると結局愛が強すぎるあまり「私」の方が一枚上手だったのか、なんて思った。


・関係のないオタク話

わたしは純粋に舞台が好きだが、この松岡山崎ペアのスリルミーは広大くん推しとしての視点がどうしても出てきてしまう。個人的に大輝くんはスリルミーきっかけで初めましてだった。ただわたしは観劇前に広大くんのラジオ(大輝くんゲスト回)を聴いていたので大輝くんはおしゃべり暴走機関車のイメージしかなくてですねw稽古場でも2人まとめて"漫才"って呼ばれてたらしいですがラジオでの2人の大爆笑トークのイメージがわたしにとっての松岡山崎ペアでして。当たり前ですが大輝くんのギャップにも衝撃を受けましたよ。「彼」を見てるとほんとにこの人こないだラジオで大暴走してた人と同一人物か?って思いました。背伸びした「彼」がよく似合ってましたけどね。
あとひとつ、ベッドシーンで服を脱いでいく時「私」も「彼」もネクタイを外すんですよね。かなり前にスリルミー公式さんがTwitterで広大くんが大輝くんにネクタイの結び方を教えている動画をあげてくださって。「彼」がネクタイを外す時、それは広大くんに教えてもらって結べるようになったネクタイだね???そうだね???(早口)みたいなこと思いながら見てしまいました。ここの場面だけは邪悪な気持ち捨てきれずごめんなさい。


とりあえずこんなものですかね。わたしは深読みしたり直接的に描かれていないものを読み取るのが苦手なので自分なりの感想文しか書けないけど、いろんな方のレポを読むとまた新しい発見がある。舞台のレポというか解説してくださってる方の記事やブログ読むのすきなんですよねえ。特にこのスリルミーは根強い人気があって今まで何ペアも何公演も見てきた方も多いので読んでて楽しい。
松岡山崎ペアを見終わったあと他ペアのチケット取れなかったことしぬほど後悔した。キャスト全員口を揃えてペアによって全く違うと言っていたので全ペア生で見たかった。でもありがたいことに全ペア配信してくれるので月末を楽しみに。

広大くんと大輝くんが30代になったとき、また松岡山崎ペアで再演できますように。

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