カメレオンズリップ感想文

誰かに見られてもいいけど誰かに見られるためではない観劇日記その2
ネタバレします

なんとか宣言により生での観劇が叶わなかった作品のひとつだ。
しかしながら後日アーカイブ配信が決まった。ありがたーく購入させていただいた。

今回の前情報はキャストのみ。
フライヤーのビジュアルを見る限りシリアスなお話ではないのかな、くらいの情報。

もうほんとお恥ずかしいことに1回目見たとき話が全く分からなかったんですよ。特に前半2時間。時折ながら見をしてしまったことも一因だと思いますがどこまで本当で何が嘘で、てかセルマって誰よ!って状況だったわけで。だからあれ、もしかして、思ってたおもしろさと違う…?ってちょっと思ってしまったんですよね。わたしがついていけなかっただけなのに。
見終わってから初めての感覚になった。もやもややハテナでいっぱい。ギリギリ、エレンディラは結局ドナだったことは理解できたのでなんとか持ち堪えた、もう不思議な感覚です。

そこでわたしの必殺奥義、ネタバレ記事を読む、を発動しました。

こちらの記事を隅から隅まで読ませていただきました。
わたしが理解できなかったあれこれをぜんぶ解釈して解説してくださっている。
作品の内容に関してはこちらで非常にわかりやすく説明してくださっているので、今回は本当に自分の感想だけつらつらと並べることにします。
この方は複数回観劇された方だったのでやっぱり初見でぜんぶ汲み取るのは無理難題だよなうんうん、となんとか自分を納得させながらひとつずつハテナを解決していった。ドナがセルマを地下室に閉じ込めてセルマのフリをしていてかつエレンディラとして振舞っているなんて構造が複雑すぎる。

すべてのカラクリや嘘がわかった瞬間あとからふつふつとカメレオンズリップはなんておもしろい作品なんだ…!という感情が沸いてきた。こんなこと初めてだ。脳がカメレオンズリップに占領された。頭から離れない。これがたった1回の生の観劇だとしたらある程度のあらすじやネタバレを仕入れずに見に行ったことをひどく後悔しただろうに。あとからあとから興奮というかなんというかうまく表現できないものがどんどん出てくる。
配信というものはアーカイブなんてものがあるんですよね。便利なものだわ。情報と結末を頭の中で整理してからもう一度見た。うーわ、なるほどそういうことか!そんなことばかりだった。シャンプーは誰よりも先にエレンディラがドナだと気づいてたじゃないか、お茶を入れるのはいつもルーファスだったってそれは毒を盛るためか、とか。まあ卑怯なやり方と言えばそうだが、ネタバレを読んだことで2回目の視聴で答え合わせができた。細かい細工やハテナだったセリフの意味に気づいた時、心の奥底から痺れた。…KERA CROSSハンパねぇ!!


この難解な作品を見たとき、ふとひとつの作品を思い出した。昨年の秋にPARCO劇場で上演されていた舞台「迷子の時間-語る室2020-」。迷子の時間はとにかく時間軸があまりにも複雑だった。異なる時代の人たちが同時点でかち合ったりするため、今は○○年のどこで5年前の××と△△年に生きている□□がいて~みたいな解読をしないといけなかった。一度全部紙に書き起こして追ったのを覚えている。ただでさえ時間軸が移動する作品は苦手なのに(君の名はを見たとき三葉が入れ替わっていたのは3年後の瀧くんだったと気づかず友達にドン引きされた)、よくついていったなと我ながら思った。迷子の時間は時間軸だけが複雑だが、カメレオンズリップは登場人物の言葉が嘘だらけで登場人物の名前も肩書きも嘘だらけなのでもう何も分からない。純粋に信じて見てしまいこんがらがったわたしを見たらルーファスとドナはほくそ笑むだろう。カメレオンズリップの罠に見事に嵌ってしまった。
この2作品の共通点はわたしにストレートプレイのおもしろさを教えてくれたことだ。歌を聴くのがすきなのでどちらかと言えばストレートプレイよりミュージカルを見ることの方が多かった。しかしながらストレートプレイは役者さんのお芝居そのものをじっくり感じ取れたりこのような複雑な構造をとっても成り立つのが魅力なのかなと感じた。あくまでわたしが思ったことです。ど素人がすいません。


あともうひとつ言いたいのは生駒里奈さんのお芝居に圧倒されたことだ。最近は舞台にもよく出演されているが、わたしの中のイメージは"乃木坂の生駒ちゃん"で止まっていた。あの意地悪な笑顔がとっても魅力的だった。天真爛漫そうに見えて闇を抱えるドナがとっても素敵だった。…くそっ!もっとこう褒めたいのに語彙が足りねえ!ラスト、エレンディラがドナになるところもうわっと声上げてしまうくらい圧倒されました。もちろん生駒里奈さんだけでなくみなさま素敵でした…。


観劇ってたのしい。

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